ブルジット・ジョブ
先週の日曜日は衆議院議員選挙でしたね。
皆さんは選挙に行かれましたか?
個人的には想定以上に野党が議席を増やし、今後、どのような変化が起きるのか、楽しみなような不安なような。。
今回の選挙で、初めて投票所の立会人なるものをやりました。
経緯は、町内会の会長から「頼まれてくれない?」と言われ、立会人がどんなことをやるのか、投票所の裏側を知れるかも、という興味が沸いたのは事実なのですが、何より町内会役員の他の人たちは過去に経験済みで、「誰もやりたくない」と言うので消去法的に引き受けざるを得ませんでした。
とはいえ、ただ立ち会うだけで1.5万円ももらえるというのは美味しいかもな、という邪な気持ちもありました。
が、、、この立会人という仕事、まさに「ブルジット・ジョブ」です。
まったく美味しくありません。
他の町内会役員の方々と同様、二度とやりたくありません。
ブルジット・ジョブなポイントは大きく分けて以下の4つです。
①くそ長い
②やりがいゼロ
③成長の機会ゼロ
④税金の無駄遣い
それぞれ解説していきます。
①くそ長い
まず、集合が朝の6時半、そして終了は20時半、、、拘束時間はまさかの14時間です。
その間、投票所の建物の外に出ることが許されないため、弁当や飲み物を持参してくるようにとのお達し。
立会人は全部で3人で、常に2人はいないとならないので、交代交代で休憩を取りながら立ち会います。
具体的には、1時間立ち会って30分休むというサイクル。
これはなかなかしんどいのです。
普通に考えたら1時間半のうち30分が休憩というのは楽そうに思いますが、このサイクルが9回も続くのです。
そして休憩中も立会中も、基本はずっと座りっぱなし。
心底疲れました。
なぜ建物の外に出ることができないのか?
選挙の動静を知ることができる可能性のある人が、外部に情報を漏らしてしまうリスクを減らしたい、ということなのかなと思うのですが、休憩中はみんな当たり前にスマホを使っているのです。
モロに外部と繋がっているのです。
この辺りも、昭和の時代から考え方がアップデートされていないのではと思ってしまいました。
②やりがいゼロ
立会人の仕事は、
・投票開始時に投票箱に何も入っていないことを確認する
・有権者が投票用紙を違う投票箱に入れたり、持ち帰ったりしないよう監視する
・投票終了時に投票箱の投函口閉鎖に立ち会う
・投票記録に署名・押印する
・投票所とは別の開票所に投票箱を送致する際に投票管理者に付き添う
の5点です。
14時間の大半は2点目の「監視役」です。
ただひたすら、有権者の行動を見続けているのです。
もちろん、パソコンもスマホも、本を読むこともできません。
全くもってやりがいがないんですよ。
やりながら「居る意味ある?」って考え続けてしまいます。
当たり前のように眠くなりますから、特に昼食後などは意識朦朧。。
AIカメラの方がずっと良い監視してくれると思います。
地元なので、ちょくちょく顔見知りの人が投票に来ます。
来ますが、大半の人は立会人である僕に気付いてくれません。
投票後にこちらから「ありがとうございました」と声がけしているのに、視線すらこちらに送ってくれずに帰って行くのです。
立会人はもはや「道ばたに落ちている石ころ」なんですね。
どうやってもモチベーションを保つことが難しい。
あまりに暇すぎるので、30分単位の投票者数を、男女別、見た目の年齢層別にカウントし続けました。
午前中は男性の高齢者中心、昼過ぎから夕方にかけて女性比率が高まり、夜の時間帯は勤労年齢がほとんど、投票のピークは11時頃だがひっきりなしに人は来る、などの傾向はつかめましたが、そんなの後から公開情報を調べればわかりそうだし。。
③成長の機会ゼロ
何かしら得られることがあるかと思って引き受けてみましたが、残念ながらほぼゼロ。
立憲民主党と国民民主党の略称がともに「民主党」で、略称での得票数は正式名称での得票数に応じて按分されるのだそう、という、ほぼどうでもいい情報を入手できたくらいです。
後は、複数ある記名のブースはどういう順番で埋まるのか、や、投票用紙を投票箱に入れるときにキッチリたたむ人、たたまずに入れる人、ぐしゃっと押し込む人、などといった、人間の行動特性には色々なタイプがあることを知れますが、これもまあ、、、想像の範囲内です。
あ、一つ勉強?になったのは、「センキョ割」なるものをやっているお店があるようで、「投票済み票」をもらえばその割引きを受けられるようです。
何人か、特に若い人たちが「投票済み票ありますか?」と聞いてきたので何かと思ったら、「センキョ割」のためだったようです。
最初はてっきりどこかの政党に所属していて、投票したという証跡を提出しないとならないのかな?なんて思ってしまっていました(苦笑)。
④税金の無駄遣い
つくづく選挙って税金の無駄遣いと感じました。
僕の投票所は6241人の有権者がいるエリアですが、投票所の運営には立会人含めて15人ほどが携わっています。
内訳は、
自治体職員:6名
自治体からの委託業者:4人
シルバー人材派遣:2人
警察官:1人
立会人:3人
となっています。
仮に一人2万円とすると、30万円。
ちなみに立会人以外は前日の準備から駆り出されているので、
50万円くらいは人件費がかかっているのでしょう。
全国の投票所の数は約4.5万箇所ということなので、単純計算で200億円超のコストが前日・当日の人件費だけでかかっていることになります。
もちろん人件費だけでなく、設営費や交通費、もろもろの諸経費など含めると、投票所だけでも大変な税金が費やされているのですね。
例えば上記の立会人の仕事は、マイナンバーカードを使ったオンライン投票に切り替えたら、すべていらなくなる仕事です。
自治体の方は定期的に選挙管理委員会に投票数などを報告しているようなのですが、「男女数なんかはつじつまを合わせて報告するしかないね」などという声が漏れ聞こえてきました(笑)。
投票所の入場券でカウントしている数と、その後発券される投票用紙のカウント数が、後者が人手によるアナログカウントなので合わないということなのだと思います。
投票用紙への記入のための鉛筆を定期的に鉛筆削りで削っていたり、、、ほんと無駄なことをやっているな、と。
もっともひどいと思ったのは、選挙管理委員会への報告書。
もちろん紙に手書きで、立会人3人のサインと印鑑も記します。
報告書には、男女別の投票者数などを記入しますが、これ、各投票所から集まったものを、きっとまたエクセルとかに転記して集計するんだろうな、、、
と思いながら職員の方の作業を見ていたところ、
「あ、、、間違えた!」と。
どうやら、小選挙区の投票者数と比例代表の投票者数を入れ違えて記入してしまったようで・・・
結果、イチから書き直し。
当然、立会人のサインと印鑑もやり直し。
最初っからデジタルにしておけばこんなことにならないのに。。
開票作業などもめちゃめちゃアナログなのでしょうから、そこにも相当の税金が費やされているはずですが、デジタルならすべてがミスなく瞬時に終わり、無駄なコストも大幅に減らせるのに、なんてことを思っていました。
ちなみに自治体からは、介護福祉課と総務課からそれぞれ3名ずつ来ていました。
責任者になっている介護福祉課の方にちょっと話を聞いてみたところ、
「私たちもマニュアルを見ながらの対応なので、、、」
ということで、かなりのご苦労があるようでした。
災害時の避難所運営と同じく、選挙も総動員なのですね。
ちなみにその人は自宅が遠いようで、4時半に家を出てタクシーで来たそうです。。
タクシー代も、その人の労力も、、、申し訳ないけど本当に無駄。。。
そんなこんなで、分かっていたこととは言え、選挙は本当に無駄ばかりで、こういうことが民主主義のベースにあると思うと、自治体の業務を変えるって本当に難しいことだなと思いました。
そして目下の悩みは、来年の参議院議員選挙のときにもう一度立会人を頼まれたらどうするか。。。
他の人に頼むのは本当に忍びないブルジット・ジョブですが、本当に苦行なので心底やりたくない。
来年に向けて、前向きにやれる「何か」を今のうちから考えておきます。