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Tokyo2020オリンピック セルフポートレート⑧

Season2 〜トライ アンド エラーのRoad〜

Episode5 心に残った出来事Part2

ヨーロッパのマフィア ハンガリー

私がずっと担当させてもらい、興味を持ったチームが女子ハンガリーチームです。

華やかさの中にも何となくダークホース的存在で少し不気味さも感じました。

その中でも二人の選手に注目しました。

87番キャプテンのジュジャンナ トモリ選手66番ビクトリア ルカーチ選手

まず、ベテラントモリ選手は英語表記は”Tomori”、日本語と同じで親近感を感じたのが最初です。

ハンガリーはヨーロッパで唯一日本と同じく、ラストネームが先にくるとマーカスが教えてくれた。

なので選手紹介の時は、トモリ ジュジャンナ

187cmの長身でシュートは1試合に2本程度ですが、身体を張っての得点のアシストやディフェンスをするダイナミックなプレーが印象的な選手でした。

「ハンガリーのくノ一」

もう1人のビクトリア ルカーチ選手のプレーを見るのが毎回楽しみでした。

きっとどのチームのプレーヤーよりも運動量多く速かったと思います。

彼女の存在に気づいたのは、試合のアナウンス中に凄いスピードで前を横切った時でした。

黒髪のポニーテールとキリッとしたメイクで、決してゲーム中は笑顔を見せない。

Wingというサイドのポジションで、まるで現場へ早乗りするSPYのよう。

オフェンス、ディフェンスのそれぞれの切り替えの移動はアッと言う間。

コートを縦横無尽に動き廻り、時にはサイドからゴール前の中央で相手の動きを抑えたり、時には大人しいと思ったら、いきなり飛び込んできて華麗に得点を決め、何もなかったかのようにディフェンスに移るスナイパー

正に忍者!ハンガリーのくノ一と名付けました。
ベンチに戻ってしまうと少し寂しく思い、出て来るとワクワクさせてくれる様な選手でした。

「小さい身体でよく動き、よくぶつかるな。」と思ってましたが、
公式プロフィールを見ると、168cm 60kgと廻りの選手が180cm70kg越えが多く、チーム最小最軽量の彼女がより小さく見えただけでした。

ハンガリー代表は予選では常に熱いゲームを繰り広げ、勝つ時は接戦をものにし、
負ける時はあっさりと負け、最下位で最終戦を迎えます。

そこでは、強豪スウェーデンを26対23で破り、わずかな得失点差でトーナメント進出を決めました。

この試合、キャプテン トモリはファールアウト(退場)になる程アグレッシブに動き、
ルカーチもパフォーマンスは落ちる事なくほぼフル出場。

チームもいつも以上に躍動し殺気だった印象でした。

試合後、初めてみるルカーチの大人しい笑顔を見てホッとしてると、
マーカスが「彼女達は、常にマフィアって呼ばれてるんだぜ。 死んだふりして、突然噛みつくんだ。」
納得の例えでした。

36年ぶりのオリンピック勝利

8月1日の男子予選最終日、ポルトガル対日本は21時からの最後の時間に行われました。

男子日本代表“彗星ジャパン“は初戦でデンマークに大敗してからは、
接戦を繰り広げて来ましたが、僅差での試合が続き未だ勝ち星はありませんでした。

そして、この試合はホスト国としてなんとしても1勝を挙げたいと入場前から選手達の顔つきは違いました。

私も選手コールの段階からいつもより一段ギアが上がり、
勝たせたいという気持ちでいっぱいでした。 
しかし、試合中は冷静になる事も大切です。

試合は前半14対16と日本が2点リードで折り返し、
その後もハラハラドキドキのシーソーゲーム。

結果は30対31で日本は36年ぶりの勝利!
試合終了のブザーが鳴った瞬間にスタンディンオベーションで、
周りのスタッフと喜びを分かち合ったのを覚えてます。 
皆同じ気持ちでした。

しかしそれも束の間、試合終了後は両チームへの敬意を払うため落ち着く事を心がけ、
この時ばかりはまだ騒いでいる他のスタッフに、早くアナウンスブースから離れて欲しいと思ったのは正直な気持ちです。

けれど、この試合のアナウンスを出来た事を本当に光栄に思ってます。
泣きじゃくる監督や選手に、あるコーチが「胸はってコートを出よう!」
背中を押した言葉は忘れません。

今回、シフトの関係で女子日本代表“おりひめJAPAN“の試合を担当する事はありませんでしたが、
ある日デイブを通し、電話でイギリスで日本戦を担当する現地のアナウンサーに
選手一人一人の名前のアクセント伝えた事は良い思い出です。

もし私がおりひめJAPANの試合を担当するならば、こんなコメントを用意してました。

例えば、キーパーがセーブしオフェンスにパスを繋げてゴールするシチュエーション。

「キーパー亀谷さくらの好セーブ! その思いを皆で繋げたMilky Way!」
これは自分の引き出しに納め、いつか開くチャンスを伺いたいと思います。

これで予選という長いロードは完了し、
それぞれのチームと同じく我々もブラッシュアップして決勝トーナメントに進みます。

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