チョコを貰えなかった男の末路
くそっ!!バレンタインめっ!!
2月14日、世の中やタイムラインがピンク色に染まる中、僕は日中から社会との繋がりを断ち切られた暮らしぶりを発揮していた。
ソシャゲーでキュンキュンしながら魔法使いを育成し、始めて7ヶ月ぐらい挫折し続けていたDTMづくりにリベンジし、夕飯には味噌ラーメンを茹で、餅を焼いて食べるという
「バレンタインにやるべきことランキング」堂々の圏外にあたる生活を見せつけてやった。誰にだろう。
そんなことをしていたもんだから、そもそも人に全くと言っていいほど接触せず、無論チョコレートはもらえなかった。
「求めよ、さらば与えられん」とはこういう意味だったのか(多分違う)ということを学んだ。
しかし、僕はチョコレートが欲しい。バレンタインにチョコレートを貰わないということは、節分の豆まきの後に歳の数だけ豆を食べないのと同じようなことなのだ。なんだかモゾモゾする。
ということで、失われた令和初のバレンタインを取り戻すべく、夜10時、僕は自室をあとにした。目的地はコンビニだ。
コンビニでレジの女の子からチョコレートを渡してもらう。こうすることによって「バレンタインに女の子からチョコをもらった」という既成事実を練り上げることができるのだ!!
聡明な読者の皆様の中には、「それって、お金を払ってチョコを渡してもらうってことでしょ?」と考える方も、いるかもしれない。
しかし、大切なのは逆転の発想だ。
お金をいくらか積むことで、バレンタインに、合法的に、見ず知らずの女の子から、チョコレートを、手渡してもらえるのだ!
大切なのは、少しのお金といくらかの時間、そして、素敵な店員さんがレジ打ちをしているコンビニを見つけ出す、妥協しない精神である。ということで、レッツ・バレンタイン🍫٩(๑❛ʚ❛๑)۶🍫
まずは近場から攻めていく
「先ず隗より始めよ」という、中国の故事がある。
遠大なことを望むのなら、まず手近なことから始めるとうまくいくというものだ。僕の家の近くには、ローソン、セブンイレブン、ファミリーマートが存在する。まずはこの辺りから探りを入れてみよう。
まずは、ローソンだ。
なんと幸先よくこの店舗は、レジ打ちが二人ともお姉さんだった。
ここでそそくさとチョコを購入し、ほくほくと帰るのもまた一興…
しかし、本当にそれでいいのだろうか?
他にも行けるコンビニはある。「ここでいいや」という、いい加減な考えで、チョコレートを貰う?
それは驕りである。
どうせなら、いくつかのコンビニを見る冒険の後、幾多の苦悩を乗り越えて辿り着いたローソンで「やはり、このコンビニのチョコだった!!幸せの青い鳥は、最初からここにいたんだ!!」という感じがいいのである。
重要なのは、心のこもった義理チョコであるということだ。というわけで、僕はローソンを後にした。
次に訪れたのは、セブンイレブンだった。しかし、ここは店員の2/3が男性。チョコレートを貰うという理由のために、何度もレジに並び直すのは流石にキモすぎる。一発勝負と考えた時、この店はリスクが高い。
続いて、ファミリーマート。少し遠くにあるので、歩いていくのに時間がかかった。しかし店員は男2人だった。次ィ!
遠くのコンビニへと足を伸ばす
僕のnoteに定期的にスキをくれるネットナンパ師の方がいるのだが、彼女によれば「良質な出会いは、出会いの量で決まる」のだそうだ。名言である。
その言に倣って、自転車に乗り、少し遠めのコンビニまで足を伸ばしてみることにした。バレンタインへの、あくなき探求心。
セブンイレブン2軒目。
男性1人に女性1人。勝率50%か、と思っていたら、アジア系の外国人が万引きして店員に捕まっていた。何しとんねん、バレンタインに。
ミニストップ。
初めて来た。オシャレな内装。これは期待できる。
しかし、レジ打ちはオシャレな外国人男性1人だった。ここもダメか…と思っていると、店から出てきた大学生っぽいカップルが、仲睦まじく話しながら自転車を漕いで行った。
とても、幸せそうだった。
ふっ…くっ…(悔し泣き)
次のコンビニに向かう途中、ラーメンのチェーン店を見た。「今はチョコレートよりラーメンです」って感じの飢えた大学生やおじさん達が、暖房の効いた店内で暖かいラーメンをすすっている。
彼らは皆笑顔で、チョコレートがなくても幸せそうだった。僕は一体、何のために寒空の下、自転車を走らせているのか?
答えが出せない自分を慰めるかのように、ペダルを漕ぐ足に力を込めた。
セブンイレブン3軒目。
茶髪のお兄さんが1人。はぁ、もう・・・お兄さんでもいいかな・・・。僕はもう疲れたよ・・・。
コンビニめぐりを始めて、はや2時間が経過しようとしていた。このままでは2月15日になってしまう。これでは「バレンタインデーにチョコを貰った」ことにはならない。殺してくれ。。。
そしてついに、運命の出会いがーーー
その時だった。突如地の淵に差し込んだ一筋の光。それは紛うことなきウェルシアであった。
なぜ僕は今まで「薬局」という選択肢を考えていなかったのであろうか。コンビニより女性スタッフの比率が高く、チョコも置いてあるし、24時間営業。
さっそく僕は店内に入り、品定めに移った。
誤解のないように言っておくが、品定めしたのはチョコレートの方である。
ここでどんなチョコレートを選ぶかで、その人の品性が問われるというものだろう。
いかにもな感じの高級そうなチョコレートを選ぶのはさすがにキショい。もっとこう、気を使わなくていい感じの、重くない感じの、一目で義理とわかる感じのチョコだ。残念ながらその代表格であるブラックサンダーは置いていなかった。
チョコを選びながら気づいたのだが、そもそも僕はわざわざチョコを買い求めるほどチョコレートが好きじゃなかった。チョコレートよりラーメンの方が好きである。何のためにここまでチョコを求め歩いたのだろうか。
仕方がないので、エクレアを買うことにした。四個で100円という驚きの安さだったし、あれはチョコかかってるからギリギリチョコだろ。
どっちかというと、バレンタインというより、深夜に酒のつまみを買いに来た大学生みたいな感じになってしまった。ええい、ままよ。ついでにビールに合いそうな酒のつまみも買った。
さあ、いよいよお待ちかねの、お会計の時間だ。
金額は224円だった。財布の中に50円玉が3枚と10円玉が7枚という壊滅的なパーティーで小銭が存在していた為に、大変恥ずかしい思いをした。
その上、財布からTポイントカードを出すのに手こずり、大変恥ずかしい思いをした。
会計時のポイントは、何気ない感じで「あっ、袋大丈夫です(*^^*)」と言うことである。こうすることによって、まるで手作りのチョコレートを手渡たされたかのような、さもしい幻想に浸ることができる。
残念ながら、レジ袋なしにしたところで結局商品は商品カゴの中に入れられて、セルフで受け取ることになってしまった。
だが、こちとらお金を払ってチョコレートを貰っている身。贅沢なことは言えない。
しかし、ありがたいことに1円のお釣りを直接手渡してもらえる運びとなった。ありがとう。これはチョコレート、お釣りではなく、チョコレート。マスクをつけていて顔の半分以上が見えなかったが、店員さんの笑顔は眩しかった。
ホクホクとした気持ちで店を出、時計を確認すると、時刻は23時54分。勝った。僕は運命に勝ったのだ。
ついでにスーパーに行って、ビールを購入し、買った商品を自転車カゴに揚々と詰め込み、祝杯をあげるため、嬉々として帰路についたのである。
かあーーーーーーーーーっ!
コレだよ!コレコレェッ!!!!!
もう時刻はとうに深夜0時を回っていたが、ビール、エクレア、スナックという完全おデブルートの宴を始めることにした。仕方あるまい、バレンタインだもの( ˆᴗˆ )(なお現在2/15)
自転車に揺られ続けていたビール缶から泡がエグい勢いで発射されてしまったが、これもまた一興というもの。缶のふちに口をつけ、ずずず、と一気に啜り上げる。くぅーーーーー、、、んまい・・・!!
これは勝利の美酒である。
すかさず塩辛いスナックを口に含み、ビールで流し込む。アハー。バレンタインデー1日の苦悩が、この一杯で報われた気がした。運命の女神が、僕に微笑みかけている。
さあ、いよいよお待ちかねのエクレアである。
上にチョコレートがかかっているから、これは断じてチョコレートなのだ。いいね?
...甘い。断じて甘い!!
これが恋の味だというのか。カスタードクリームの味がする。人間、甘いものとしょっぱいものを同時に与えられると、永久に箸が進んでしまうものである。まぁエクレアは箸では食わんけど。
エクレア、スナック、ビール。
スナック、ビール、エクレア。
ビール、スナック、エクレア。
最強の黄金比的なルーティーンが僕の中で完成されつつあった。人類史上最高に体に悪そうな「三角食べ」である。だが、それでいい。今日はそれでいい。それでこそ、ハッピーバレンタインなのだ(なお現在2/15)
まとめ
いかがだったであろうか。もはや「バレンタインに女の子からチョコレートを貰う」ことは叶わぬ幻想ではなくなったのだ。
全国の義理チョコすら貰えなかった男性諸君に告ぐ。今すぐ小銭を掴んでドラッグストアに走るんだ。希望はきっとある。
しかしながら、希望を込めすぎて「彼女に手作りチョコ手渡してもらいたいっぴーーー💛💛💛」などと抜かしてみても、現実はチョコレートより甘くない。カカオ100%だ。もはやカカオだ。
真実の愛というものは、手作りチョコレートなんかで表現できるものではない。思いやりと真心。そして何があっても己の力で幸せを掴み取ろうとする、諦めない心が、私達に愛を運んでくれるのである。
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