SI業界出身者がキャディにハマるわけ
最近、キャディにSI業界出身の仲間が続々とJOINしてくれています。しかも皆さん一様に活躍されており、とても嬉しく、頼もしく思っています。
どうやら、SI業界出身者はキャディにハマるようなのです。ということで、今日はなぜハマるのかについて考えを書いていこうと思います。
ちなみに筆者は新卒でとある独立系SIerに入社し、在籍4年間で直請けの4つのプロジェクトを経験しています。また、2社目3社目では事業会社側の人間として数社のSIerさんとお付き合いがありました。つまりは特別SIの専門家というわけではありませんので、そのあたりはお手柔らかにお読み頂けたら幸いです。
ハマるわけその1:業界の類似性
私自身キャディを選ぶ時点で特に意識していたわけではないのですが、実は製造業とSI業界には以下のような類似点があります。
▼多重下請け構造
まずは何をおいてもこれかと思います。よくSIer業界の闇としても語られる多重下請け構造です。先日厚労省から発表された「接触確認アプリ『COCOA』の不具合の発生経緯の調査と再発防止の検討について」に対しても、複数社にまたがる下請け構造を原因の一つとして指摘する向きも散見されました。
SI業界ではNTTデータや富士通、日立、IBM、アクセンチュアなどの一次請けのSIerが元請けとして案件を受注、それが二次請け三次請けというように、徐々に中小規模のSIerへと流れていく構造になっています。
製造業も同じ構造で、誰でも知るようなTopTierのメーカーを筆頭に、そこにぶら下がるTier1→Tier2→Tier3という形で、徐々に小規模の加工会社へと仕事が流れていきます。
この多重下請け構造による負は、中抜きが横行することです。(もちろん、全ての会社や案件がそうだとは思っていません)
最上流で提示される単価や納期は、階層を下るごとに目減りしていきます。それは各社が利益を取るためでもありますし、何か問題が発生することを見越したバッファであることもあります。そのため、下請けは必然的に低い単価かつ厳しい納期の中で、リスクの高いビジネスを迫られます。
以前弊社代表加藤のnoteで言及していた下記のような構図が、日常的に発生しているのです。
▼仕様策定と開発の分離
2つ目の類似点は、仕様を策定する人と実際にモノを作る人が分かれているという点です。
SI業界では仕様を決めるのは多くが事業会社の情シスまたはコンサルといった人たちであり、コードを書く人が決められるのは細かな仕様に留まるというのが一般的だと思います。
製造業でも同様に、仕様=設計を決めるのは多くがメーカーの設計者であり、実際にモノを加工する人ではありません。
この構造によって必要になるのが、仕様書です。製造業においては設計書、つまり図面やCADデータがそれに当たります。SI業界も製造業も、仕様の伝達という行為がドキュメントを介して日常的に行われている業界なのです。
この仕様策定と開発の分離による負は様々な形で表れます。もしSI出身の方にお読み頂けているようでしたら今更説明の必要はないかもしれませんが、多大なコミュニケーションコストが必要になりますし、認識齟齬があったままモノが作られればバグを生み、品質不良となります。
システム開発の仕様書にも図面にも記載のガイドラインはありますが、厳格なルールは存在しません。設計する人が実際のシステム開発、モノづくりを知らないということも多く、記載内容の不備や曖昧さについての確認作業が日々大量に行われているのです。そして、そういった不備を見落とした場合のリスクの多くが、下流工程に背負わされているのが実態です。
▼不確実性コーンが長い
3つ目の類似点は不確実性の度合いです。以下は不確実性コーンと呼ばれるグラフです。
不確実性コーンは、プロジェクトが進行するにつれて見積もりのバラツキがどのように推移していくのかを表しています。横軸はマイルストーンを、縦軸はそれぞれの時期に見積もったプロジェクト規模(工数・スケジュール)を示しています。
引用:プロジェクトマネジャーのための「プロセス設計術」 - プロジェクトの本質とはなにか
このグラフが表しているように、ソフトウェアの開発において初期の見積はあまりアテになりません。バラツキが大きすぎるのです。不確実性は時間の経過、開発ステップが進むにつれて徐々に減少し、システム開発が「完了と定義された状態」に到達することでひとまずの収束を迎えます。
プロジェクトの規模にもよりますが、大手SIerが入るような案件になるとこの不確実性コーンが非常に長くなります。
製造業でも全く同じ構造になっており、開発規模が大きくなればなるほどステークホルダーも増え、必要な部品の数だけ品質と納期のリスクが内在します。
そして、同じ問題であっても検知が後工程になればなるほどその解消にかかるコストが加速度的に大きくなる点も全く同じです。如何に早い段階で問題を発見するのか。これをITではshift left、製造業ではフロントローディングと呼びますが、テーマとしては同じものです。
余談:私が多重下請け構造をなくしたいわけ
少しわき道にそれますが、私自身がキャディで解決したいと思っている課題こそ、この多重下請け構造に他なりません。
SIerでSEをしていた頃、次のような体験をしたことがあります。
・仕様通りに作ってリリースしたら、現場の方々から全く役に立たないと怒られた
・仕様通りに作ればいいと思いつつも気になる箇所があったが、全体像を知らないので指摘すべきかどうかわからなかった
これらの経験がその後の事業会社への転職、引いてはプロダクトマネジメントを志す原体験になっているのですが、作り手として役に立たないものを全力で作ることの徒労感は凄まじく、本気でこの世からなくしたいと思っています。
これらの要因となっていたのが多重下請け構造による情報の劣化でした。この構造を変えることで、エンジニアがモノづくりにかけた時間が生み出す付加価値を、情報流通の観点から最大化したいと思っています。
また、もう一つ大きな課題意識を持っているのが、作り手が儲からなくなることです。
多重下請け構造において、実際にモノを作るのはどうしても下層に位置する会社になります。必然的に薄利・短納期での対応が増え、背負うリスクと比較すると割に合わない仕事も多くなります。
こうなると、モノづくりに優秀な若手を多く集めるのは難しくなってきます。実際に、エンジニアといってもハードウェアではなくソフトウェア、ソフトウェアの中でもwebや機械学習などの給与水準が比較的高く働きやすい領域に多くの若手が集まっているのが現状です。
しかし、製造業のような大きな産業の変革に、優秀な若手は不可欠です。多重下請け構造を解消し、モノづくりをもっと若手が集まるキラキラした産業に作り替えたいと思っています。
ハマるわけその2:スキルが活きる
これは私の私見も入ってしまうのですが、SIerの方々はまず優秀な方が本当に多いと思っています。元請け叩きのような風潮もありますが、実際に元請けSIerで巨大プロジェクトを仕切るのは並大抵のことではありません。
簡単に思いつくだけでも、次のようなスキルが求められる仕事だと理解しています。
・プロジェクトマネジメント(予算、人工、納期管理)
・外注マネジメント
・対人交渉/調整
・全体設計/業務設計/データ設計などの幅広い設計スキル
・未経験ドメインへの高速キャッチアップ
・Officeをはじめとした各種ツールの活用
もちろんポジションやプロジェクトによって変わるものだとは思いますが、概ねこういったスキルをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
そしてこれらのスキルは、キャディでも様々なポジションで活きてきます。キャディの立ち位置は製造業においていわゆる商社的なポジションに当たりますが、SIerもIT商社といわれることがあります。ポジションの類似性も、有用なスキルに共通項が多いことの理由かもしれません。
プロジェクトマネジメントについては、大規模プロジェクトをしっかり回してきた人も、小規模案件を大量に回してきたような人も、同じくキャディの業務内容や文化にはフィットしやすいと思っています。
ご参考までに、具体的な部署と活躍されるイメージの一例を記載します。
▼OM(オペレーションマネジメント)の場合
OMは、キャディの受発注オペレーションの標準化・効率化を担っている部署です。
製造業の受発注を担うキャディのオペレーションはなかなかに複雑であり、それらを理解した上で最適なプロセスを設計し実業務に落とし込んでいく必要があります。また、頻繁にTECH組織とも連携し、必要な要件を伝えシステム化を促進していく必要もあり、まさにSI出身者がフィットするポジションの一つではないかと思っています。
▼CX(カスタマーエクスペリエンス)の場合
CXは、製造業のお客様に向けて調達改革を支援するチームです。営業活動から具体的な案件の組成、納品までのディレクションなども含みます。
「営業経験がないから難しい」という感覚を持たれる方もいらっしゃると思いますが、SI出身の方でも攻めっ気のあるタイプの方であればディレクションまわりを軸に大いに活躍されるのではないかと思います。
上記はほんの一例です。他にも様々なポジションがありますので、ご興味ある方は是非直接お声かけください!一緒にあなたにフィットするポジションを探します。
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ハマったその先で-キャディで得られること
いかがだったでしょうか。SI業界と製造業の類似点について、またSI出身の皆様がキャディで活躍できる背景について、少しでも解像度を上げて頂けたら幸いです。
最後に、もしご縁があってキャディに入社頂けたとして、何を得ることができるのかについての私見を書いてみたいと思います。これは本来皆さま一人ひとりが見出されるべきものですので、あくまで一つの参考として頂ければ幸いです。
「インサイダーとして」
SIerの仕事はクライアントワークです。良し悪しではなく、そういう性質のものです。私自身、新卒で入社した会社ではクライアントの役に立ちたいという想いを常にもって仕事に取り組んできました。しかしいつもどこかで、手触り感のなさを感じていました。プロフェッショナルとして要求される水準を満たした仕事をすることには間違いなく価値があると思いますし、そういった仕事の積み重ねがこれまでの日本の産業を支えてきたことに疑いの余地はありません。しかし、時代は変わっていきます。特に今、日本のGDPの2割を占める製造業の課題解決は、待ったなしの状況です。これを変えていくのはSIerでしょうか?私は違うと思います。製造業の中で、各プレーヤー自体が変化していく必要があります。だからキャディは、単なるマッチングサービスとしてではなく、受発注プラットフォーマーとして製造業の中に泥臭く入り込みます。そんなキャディで得られるのは、このとてつもなくスケールの大きな挑戦を、業界のど真ん中で、インサイダーとして担える経験です。これまでSIerとして製造業に関わられてきた方にとっても、きっと見える景色は変わると思います。サポーターではありません。自分たちが製造業を変えるプレーヤーそのものなのです。
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