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初開催の町工場LTが”確かな熱量”を生んだ理由

キャディ株式会社でプロダクトマネージャーをしている笹口です。

先週の2/21(金)、キャディ本社にて「町工場LT vol.1」と称するイベントを開催しました。

普段はなかなか互いの技術についてオープンにする機会のない町工場の技術者が「LT(ライトニングトーク)」をやる、というあまり前例のないイベントでしたが、終わってみれば外部から26名の方にお申込み頂き、当日参加したキャディ社員も合わせると実に50名近くが参加する大きなイベントになりました。

そして、何よりも当日の参加者の方々が発していた熱量は、主催者メンバーの期待を遥かに上回るものでした。

このnoteでは当日のイベント内容のレポに加え、なぜ町工場LTがそのような熱量を生むに至ったのかについて考察してみたいと思います。

きっかけは大田区産業プラザPioの掲示、ではなくてTwitter

そもそもなぜこのようなイベントの開催に至ったのか。きっかけはこの町工場LTの発起人である波田野さんのこちらのtweetでした。

ここに、元々波田野さんと町工場のイベントで知り合いだった私が湧き上がる気持ちを抑えきれずにリツイートします。

するとどうでしょう、とある男がさらにノッてきたではありませんか。

はい、こちら弊社代表です。Twitter上でのノリが異常にいいと私の中で話題の加藤の参戦により、町工場LT@キャディの開催が決まったのでした。波田野さんのtweetから1日も経たないうちに開催が決まるというスピード感でした。

イベントの趣旨と目指した姿

町工場LT趣旨

イベントの趣旨について、こちらのスライドを使って説明させて頂きました。

町工場が培った技術は、町工場の競争力そのものです。取り扱う製品も顧客から発注されたものであり、簡単に公開できるものではありません。そのため、町工場はその性質としてそもそもオープンになりづらいのです。ずっと同じ場所に工場を構えている町工場さんが、向かいの町工場が何をしているのか知らない、なんて話もあるくらいです

これだけでも、実はこのイベントの開催自体がチャレンジングであることがお分かり頂けると思います。だからこそ、参加頂いた町工場の方々には本当に感謝ですし、何かに繋がる場にしなければ、と思っていました。今回のvol.1開催に関する事務全般を私の方で進めてきましたが、内心結構プレッシャーでした笑

いざ、LTへ

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私による何とも言えないオープニングトーク及び乾杯を経まして、いざLTです。

なんと登壇者は6名!豪華なLTイベントになりました。町工場の4名に加えて、キャディからも2名が登壇させて頂きました。

・トップオブ微細加工への道(超入門編)[株式会社松浦製作所 色川様]
・樹脂切削加工について[シナノ産業株式会社 遠藤様]
・工作機械観点からみる世界のモノづくり市場[キャディ株式会社 後藤]
・華麗なるTIG溶接[有限会社共栄溶接 波田野様]
・“仲間回し”と“設計力”で 町工場のチカラは爆発する[有限会社安久工機 田中様]
・キャディがやろうとしていること[キャディ株式会社 幸松]

以下、LTの内容についてダイジェストでお届けしたいと思います。

①トップオブ微細加工への道(超入門編)[株式会社松浦製作所 色川様]

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トップバッターは株式会社松浦製作所の色川さんです!

1μm単位の精密な加工をするための加工条件の準備や測定などの心配り、そしてその技術の高さについて数多くの写真や今日のために撮影頂いた動画で非常にわかりやすく解説して頂きました。

例えばこれです。お分かり頂けるだろうか…

おばま

なんと、超精密なオバ〇!これ以外にも超微細な穴あけや、マシニングだけで鏡面加工並みの仕上げを実現されているサンプルなど、驚きの連続でした。

ちなみにこちらがサンプルの写真です。作品名は「削り出しほほえみナイスミドル」だそうです笑

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②樹脂切削加工について[シナノ産業株式会社 遠藤様]

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続いては、樹脂切削加工のシナノ産業株式会社の遠藤さんです。個人的には下町ボブスレーのポロシャツがずっと気になっていましたが、その後酔ってその話を伺うのを忘れたことが悔やまれます。

遠藤さんからは元々金属の切削加工をやられていたご経験も踏まえて、樹脂の切削加工の特徴についてお話頂きました。

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カラフルでデザイン性も高く、金属では出せない形状を削りだすことのできる樹脂切削。油などで汚れることも少ないからか、シナノ産業さんは女性社員の比率が高く、とても明るい印象でした。

サンプルも、樹脂ならではの形状が見られてとても面白いです!素材×加工で表現できるバリエーションが多く、デザイン関連のお仕事も多いそうです。

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③工作機械観点からみる世界のモノづくり市場[キャディ株式会社 後藤]

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3人目は弊社より、サプライパートナーサクセス本部で架台チームの責任者を務める後藤が登壇しました。ここまでのお二方とは少し違った視点で、前職で携わっていた工作機に関するLTです。

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上記のスライドの「1975年」の部分がクイズ形式で出題されたのですが、会場から即答で正解が返ってきたときはどよめきが起きました笑 さすが町工場LT、参加者のレベルも高いです!

個人的には後藤が工作機について触れてくれたことでイベント全体でマクロとミクロの視点が調和し、よいバランスをもたらしてくれたと思っています。

④華麗なるTIG溶接[有限会社共栄溶接 波田野様]

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さぁ、いよいよLTも後半戦。主催者である有限会社共栄溶接の波田野さんの登場です!

町工場の方って寡黙な職人っていうイメージがあると思いますが、波田野さんはその固定観念を見事に覆してくれます。何度も会場に爆笑を生み出していました笑

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見てくださいこのビードの美しさ…波田野さんは「結局表面処理されて焼け色は消えちゃうんですけどね!!」と自虐的な笑いに変えていましたが、本当にきれいですよね。

色合いだけでなくて、間隔や幅が均等になっているのは一重に職人さんの腕によるものです。一回やってみるとわかりますが、とてもじゃないですが素人がこんなにきれいなビードは作れません。

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LTの中でご自身が考えるTIG溶接のこれからにも触れられた波田野さん。今後も町工場LTに限らない多角的な仕掛けでビジョンを実現されていくのだと思うとワクワクします!

⑤“仲間回し”と“設計力”で 町工場のチカラは爆発する[有限会社安久工機 田中様]

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さて、いよいよ町工場登壇者のトリとなりました。有限会社安久工機の田中さんの登場です。

安久工機さんはこれまでの3社と違い、試作品や装置の設計をされている会社さんです。つまり、自分たちで何かを作るのではなく、何かを作りたい誰かと、作れる人を繋ぐ「コーディネーター」としての役割を担う立場でいらっしゃいます。

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そうして生まれた素敵な製品のうちの一つを、実際に試作段階のプロトタイプも含めて持ってきて頂きました。それがこちらの「触れるペン Lapico」です。とても心温まるストーリーを持った、優しい製品です。詳しくはこちら↓をご覧ください。

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大田区には「仲間まわし」という独自の仕組みがあり、町工場同士が契約書も交わさない「横請け」として製品を融通し合うそうです。

町工場の強みを活かしたモノづくり。まさにキャディが実現しようとしている世界を、既に実現されていることに強い感銘を受けました。

⑥キャディがやろうとしていること[キャディ株式会社 幸松]

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そしていよいよ最後の登壇者は、弊社でサプライパートナーサクセス本部長を務める幸松です。

キャディには自社のオリジナル作業着があるのですが、この日幸松が着てきた作業着はそうではなく、キャディを始めた頃に3カ月間修行させて頂いていた町工場さんのもの。本人曰く「勝負作業着」だそうです笑

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こちらはその町工場の社長の一日のスケジュールです。加工が夜に残ってしまうこともよくあり、それが終わってから見積を出します。見積は高度かつ経営に直接的な影響を与える業務のため、社長自らやられているところも多いです。にもかかわらず、相見積を取られているため、受注率は2~30%程度という会社さんが多いようです。

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幸松からは、そういった課題に対してキャディがどのようなアプローチで解決を目指しているかを説明させて頂きました。詳細は下記の幸松のnoteにもございますので、ご興味ある方はご覧ください。

終わった後は座談会、のはずが・・・

ほぼ予定通り19:30に開始し、ここまで休憩も挟みつつ約2時間かけ、万雷の拍手と共にLTパートが幕を閉じました。

当日は各社様力を込めたサンプルをたくさんお持ち頂いており、何せどのLTも非常に面白かったので、参加者の皆さんテーブルに並べられたサンプルがとても気になっている様子でした。

元々は波田野さんから「終わったら座談会スタイルで話したいです!」と言われていたので、そこまでの繋ぎの30分くらいのイメージで「皆さんお待ちかね、サンプルを眺めつつ飲みましょう!」とアナウンスした途端・・・

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群がるキャディ社員たち・・・!

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そして文字通り食い入るようにサンプルに見入る参加者各位と、それに応える町工場男子たち!

ここからイベントはさらに一段階ギアを上げ、各所で名刺交換をされたり、サンプルについて語り合ったり、LTの内容について語り合ったり、互いの仕事の話をしたりといった光景が広がっていきました。大変盛り上がった結果、結局座談会はvol.2へ持ち越しとなったのでした笑

町工場LTが残した確かな熱量

あっという間の3時間半が終わり、最後まで残っていた登壇メンバーの終電が近くなったことを受けて、会はお開きとなりました。

会場の片付けをしながら、ひとり胸の辺りに残っている熱を確かめて余韻に浸っていたのですが、それは参加者の皆さまも同じようでした。

キャディ社員もたくさん刺激を頂きました。

さらに、こんな嬉しいお声も聞くことができました。町工場関係者にとっても意義ある場になったようです。

こちらは直接お聞きした社員からのメッセージで頂いたもの。

はじめは年寄りばっかり集まる会だと思っていたが、いざ来てみたら若者が一杯で驚いた。そして発表のたびに、自分達の世界では当たり前のことを発表しているだけなのに、若者達が驚いたり面白がる姿が良い意味で新鮮だった。製造業をこんなに面白いと思って貰えたことが本当に不思議。日本の製造業はお先真っ暗だと思ってたけど、これだけ若者がいる姿を見て、少し希望が持てたよ!

そこには製造業のポテンシャルがあった

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最後に、なぜ町工場LTがこうも熱量を帯びるイベントとなったのか、考えてみました。

イベントはただの媒体です。元々そこにいた熱量の高い人たちを集め、繋いだだけの媒体です。

町工場で要素技術を突き詰める人

誰かの思いに呼応して、それを形にしようとする人

そんな人たちが好きで、それをもっと知ってもらおうとしている人

直接モノづくりはできないけれど、彼らを支援したいと思い動いている人

町工場の技術が生み出したモノを見て、目を輝かせる人

それを見て、そこに未来を感じる人

製造業により深くかかわるようになってから、その産業としての大きさと深さに驚かされる日々なのですが、今回もこれまで知らなかった製造業への関わり方をされている方々に多く出会うことができました。

そこには、初めから高い熱量がありました。町工場LTは、おそらくこれまでのイベントよりも少し深く、少しオープンに、少し大きな規模でそれらを繋ぐことをしたのだと思います。

製造業はその産業の特性から、大小様々なクラスタ(群)を形成しており、それらの集積で成り立っています。各クラスタ間でのコミュニケーションはそもそもプロトコル(やりとりの規定、ルール)が異なるために希薄であり、機械を扱うため受ける地理的制約も相まって、どこか閉鎖的な側面があります。

しかし、そこで培われてきた技術や文化が大好きな人や、彼らが生み出す価値の重要さに気づいている人は確かに存在しており、これまでもそういう人たちが媒体となって製造業同士を繋いできたのです。

キャディもそうありたいと思いますし、キャディが掲げる「製造業のポテンシャルを解放する」というビジョンが向かう方向性は、当日いらっしゃっていた皆さんが目指されている方向性と、きっと一致しているのだと思います。

次回「町工場LT vol.2」も乞うご期待!

さて、こうなってくると楽しみなのが第2回ですよね!

現在まだまだ企画段階ですが、次回はまた場所もテーマも変えてお届けする予定になっておりますので、関係者のTwitterをフォロー頂き、続報をお待ち頂ければと思います!

ありがとうございました!

四天王

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