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影の反射

割引あり





ながくデュエルマスターズの大会に出場していると環境と自分のデッキが完全に噛み合って際限なく昇っていける感覚になるときがまれにある。

蝋燭が消える前のような束の間の時間だけだが。


その事象に呼び名は・・まだない。











いずれにしても1回戦を幸運で拾ってからというもの
今日の風は僕に吹いていると感じていた。





対戦相手はよく知る強敵だが、誰が相手でも一切負ける気がしない。











・・とまでは言わない。漫画じゃあるまいし。






ただ、緊張はなく純粋にカードを楽しめていることを自覚できているからか


マナに置くカードの比較を冷静にこなせる自信が持てる。


仮に敗れたとしても『これでダメなら仕方ない』と諦めがつくゲームにできる感じがする。





そんなポジティブな気分になれていた。

メンタルのコンディションはベストと言っていい。












『星野こそよくここまで生き残ってたね!どっちが勝っても恨みっこなしだよ。』




『おう!もちろんや!それにまだまだ道は険しそうやしなぁ。』




と星野が隣の卓の空井に視線を向けた。



空井の方は星野の視線には気付かず対戦相手の少年と談笑を交わしている。




『間違いないね。』











自分のデッキをシャッフルし、星野の前に出す。


出されたデッキを受け取り、念入りにシャッフルして返す。





先程まで笑顔でお喋りしていた星野の顔をチラッと覗いた。


口を堅く結んで真剣な表情だ。





(ここからは言葉を交わす必要はなさそうだね。)

(盤面で対話しようぜ!)









『いくぞっ!デュエル・スタートぉ!!』






デュエルジャッカー・ショーの掛け声がゴングとなってフロアに鳴り響く。







『『よろしくお願いします。』』


 






1ターン目



じゃんけんには敗北。星野のターンからスタートだ。


星野は炎槍と水剣の裁きをマナに置きターン終了。



大会直前の宣言通りボルバルブラックとみてよさそうだ。



僕の配られた手札は




よし!





ミラーの初手としては極上と言っていい。

このデッキの最高ムーブである幻緑の双月→サイバーブレインが保証されているからだ。




ドローフェイズで持ってきたのはロストソウル。

悪くない。先に打てればかなり勝利に近づく1枚だ。


スクラッパーを置いて番を返した。





2ターン目




星野の2ターン目は次元の霊峰をチャージでエンド。


予想外のマナ置きに少し驚いたが、ノーアクションで番が返ってきたのは幸運だ。




まだ間もないボルバル制限後環境を試行錯誤した形跡が見れる。





僕のターンで引いてきたのは腐敗勇騎ガレック。

貴重な黒マナはありがたい。


幻緑の双月チャージから幻緑の双月を召喚し、効果でガレックを埋めて終了。





3ターン目



星野はアクアサーファーを置いて青銅の鎧を召喚。

山上から幻緑の双月が落ちた。



現状星野のマナの色は赤青緑の3色だ。





僕のターン。



トップしたカードはまさかの・・








ここでか・・





・・・あまり歓迎できるドローではない。

というのもボルバル系統のミラー対決でボルバルをマナに置くというのはご法度だ。


ボルバルをマナに置いた状態でうっかり6マナまで伸ばしてしまうと、
相手の母なる大地でこちらのボルバルザークを引っ張り出されてしまう。

そうなった場合次の自分の1ターンで決着をつけないとボルバルの効果で強制敗北を強いられるのだ。




マナに逃がして一生5マナのままで戦い、自分のターンで6マナにして大地経由でボルバルを出すという手口もあるにはあるがそもそもミラーを5マナの状態でやるのはかなり無理がある。


かといって手札に抱えたままだと次の相手の番でなんらかのマナブーストを打たれた場合、先にロストソウルの7マナに到達するのは星野だ。






・・・どちらにせよこのターンは僕に取れる選択肢は1つだけだが。




『・・・コーライル置いてブレインで3枚。エンド』





4ターン目





ドローフェイズを終えた星野は、大きな手を額に当てて少し長めのシンキングタイムに入る。



青銅の鎧をマナに置き、悩んだ末に場に繰り出されたのは・・・
鳴動するギガホーン!




山を念入りに確認した星野がサーチしてきたカードはディメンジョンチョーカーだった。




意外なチョイスではあったが、これには内心ガッツポーズだ。

次のターンにロストを先打ちされないことが確定した。





帰ってきた僕のターン。

ドローは3枚目の幻緑の双月。



そのまま双月をマナに埋め、サイバーブレインで引いてきた青銅の鎧を召喚して番を終わり。

ターンエンド時の僕の手札はこうなっている。



完璧な4枚だ!





次のターン星野が炎槍と水剣の裁きを打ってくるのであればこちらのロストソウルが突き刺さり、

横展開してくるのであればボルバルザーク召喚→追加ターンジャガルザーで勝率充分。勝負に行くつもりだ。






5ターン目





僕は星野の顔をじっと眺めながら次のアクションを待った。



このターンに相手の強い動きはない。
何が来ても問題なく対処できるハズだ・・。




手札を数十秒睨んでいた星野が不意に目線を上げて僕と目が合う。




「なんや。随分強い手札持ってそうなカオしとるけど、勝負はこっからやで。」



ディメンジョン・チョーカーをマナに置き、星野が盤面にたたきつけた1枚は・・・




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