階段
『次の方どうぞー。』
DM公式スタッフの青いポロシャツを着た受付のお姉さんから参加ハガキと引き換えにトーナメントの卓番号がラミネートされたカードとデッキリスト記入シートを渡される。
僕が最終的に選び抜いた40枚はこれだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1692434008314-yudWMvtbc0.jpg?width=1200)
会場は百貨店のイベントスペースにしてはかなり広い。
小学校の体育館ほどの大きさはありそうだ。
対戦テーブルコーナーはパーテーションで仕切られていた。
観戦はパーテーション外からのみなので見学者からは試合中の盤面は目視することができず、対戦者の姿が辛うじて見える程度の距離がある。
ジェネレートリーグのルールはBO1のトーナメント・シングルエリミネーション方式。
1回でも負ければ強制退場させられてしまう。
開会式予定時刻までまもなくだ。
僕が1人で近くの空の対戦テーブルに座りデッキリスト記入シートを埋めていると
『おっしゃーーー!やーっと勝ったよ!!』
突如会場内の隅の方からよく通るささぼーの叫びが聞こえた。
なにごとかと見に行くとなぜか床でささぼーと空井が両手対片手の腕相撲をしていたようだった。
『・・ついにささぼーに負けたかぁ!』
『空井くん!今日から毎日、一日も欠かさずに腕立て伏せした方がいいぞ!!俺は日々進化してっから!』
『まいったよ。そろそろ大会始まりそうだからその前に一服してくるわ!またあとでなー。』
軽く手を振って空井が出口の方に去り、力を使い果たして顔を真っ赤にしたささぼーがこちらに気付いて歩いてくる。
『空井くん開会式まであと2分だけど大丈夫か・・?』
『どーしてもタバコ吸いたいんでしょ!
あんなモンなにがいいのかまっっったくわかんねーけど!!
おれらは対戦テーブルにいこうぜ!わた、数字は?』
僕とささぼーの卓番号は比較的離れていた。
僕が97でささぼーが12。
『当たるとしたら準決かな!
まあそうなりゃ勝ちよ!どっちかは決勝いけんだもん!
そこ目標でがんばろうぜ!!』
『おう、それまで負けんなよ。』
僕らはそれぞれの対戦テーブルを探しに歩き出した。
全ての卓には番号が記された札が設置してある。
一回戦は受付で配布されたカード番号の卓に着席する。
参加人数の最大が512人なので、おそらく卓の番号はその半分の1-256の数字が割り振られているのだろう。
2回戦以降は人数の減少に伴い隣の席に移動するか、そのままの席に留まるかを都度ジャッジに指示される。
基本的に勝ち続ける限り隣の席の勝者とどんどん当たっていくため、次の対戦相手のデッキ内容は横で観戦していればおおよそ把握できるシステムだった。
僕が向かった先のテーブルで待ち受けていた人物は・・・
『こんにちはー!よろしくお願いします!』
初めて見る20代後半くらいの男性だ。
外見、話し方から陽気な人物であるこということが推察できる。
『・・ヨロシクオネネシマス』
中学2年の僕からすると恐らく一回り以上歳上のプレイヤーだが、一切の気後れはない。
基本的に『環境デッキ』というイデオロギーが存在しない時代だ。
インターネットが今ほど普及しておらず、強いデッキも一部の強者が各々で勝率の高いデッキを考案して大会に持ち込み、それを現場で見聞きした人間がリストを雑にコピーして少し広まる程度の拡散具合だった。
故に一番の脅威は四六時中紙のことばかりを考えていて、週末に公認大会を何件もハシゴで足繁く通うタフな中高生の層である。
逆に公式の大型大会でも初見のアラサーアラフォーのアダルトプレイヤーの1ターン目のマナチャージがアルティメットドラゴンで始まることなど日常茶飯事なのを僕は知っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1694634432955-QGUeWhoHuT.jpg)
ヘッドジャッジから大会のルール説明がアナウンスされ、いよいよ・・・
『いくぞっ!デュエル・スタートぉ!!』
デュエルジャッカー・ショーの元気な掛け声とともに闘いの火蓋が切って落とされた。
![](https://assets.st-note.com/img/1693557754559-NfGJB8fQem.jpg)
1ターン目
ジャンケンに勝利した僕の初期手札は・・・
![](https://assets.st-note.com/img/1693580567584-IIEMHQkXWs.png?width=1200)
先攻としてはまずまずだが現状2ターン目のアクションがないことと強トリガーの1積みサーファーが手札に来てしまっているのが懸念点か。
サーファーをマナに埋め、手の平を相手に向けてターンエンドのジェスチャーをした。
(赤置いて1マナタップだけはやめてくれよ・・!)
相手の最初の番。少し時間を使ってチャージを選んでいた。
緊張しているようにも見える。
マナに置かれたカードは・・
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