4. 繰り返す症状と、すべなく経過する日々
わが市は、とても住みやすい都市で9万人規模である。県境に位置して独自のエリア観を形成していると思う。所属している県の中でも有名市であるだけでなく隣県の90万都市の文化圏にも属している。病院も行政管轄で先進医療から急性期、緩和病棟に至るまで行える市の病院がある。これを仮に地元の O病院としよう。
僕が前回、2017/12に 胃がんで内視鏡手術(ESD)を行ったのは90万都市にある同じく先進医療ができ、緩和病棟まで備える P病院としておこう。これらの病院は転勤があり、その時の消化器内科の主治医はもう転勤していた。前に記したように、これまでの経緯から消化器内科でO病院もP病院も一年に一回は検査しましょうという流れになっており、ダブルなあと思いながらもどちらにもそれぞれの観点から経過観察を受けることは悪くないと思っていた。かたや癌を治療してもらったし、もう一方は、地元であるし救急で運ばれ胆管の異常を治療してもらっているので肝臓、胆嚢、膵臓なども監視できている。いいんじゃない。
1月以降に嘔吐を繰り返すようになった。一週間に2度程度、だんだん背部の痛みや上半身の痛みが交じるようになってきた。職場は社会福祉法人であったため感染性胃腸炎やウィルスなど感染性であると困るため早めの対応が必要だった。幸い症状の出始めた1月14日にはP病院の胃部内視鏡検査とほぼ全身のCTの予約が入っていたので、年末年始よりおきている嘔吐の件も相談し診断をお願いした。胃に気になる部分もあったので念の為生検も取った。
1月27日には結果が出揃い、生検はGroup1で問題なし。CTは、前回胃がん後の再発や新規病変なし。リンパ節腫大認めず。膵尾部嚢胞あるが問題なし主膵管拡張なし。(背部痛で気になる膵臓がんではなさそう)腹水、胸水認めず。両肺への転移や病変なし。など、概ね異常なし。検査診断書によると十二指腸下行脚までカメラで観察し、胃や十二指腸に残渣が中等量残っていた事が記載されている。僕は朝絶食で行っているので、実は十二指腸の水平脚から上行 つまり内視鏡で見に行った ほんの数センチ先に狭窄部分が生じていたことになる。実に惜しいところまでの観察であったが、このあたりのがんは希少なのである。
この内視鏡とCTで異常がないというお墨付きが、のちのちに時間が経ってしまう原因となったような気がする。あとから思うと。さて、その日 (14日) はタケキャブ錠と六君子湯エキス顆粒を処方されている。
職場では、体調が悪いことをしばしば申し出て急な休みこそ少なかったが、ちょっと別室で椅子を並べて横になって小休止したり、昼食がカロリーメイトやおかゆになったりしていたため同僚は心配して、早めに病院に行きなよなどと言われていたが、いやいや、内視鏡、CTとゴージャスに検査して異常なく、薬を調整中というように言うものの、一向に改善に向かう気配なく悪化の一途をたどる。
2/17 P病院受診して経過報告し、タケキャブ、モサプリドクエン酸塩錠、アコファイド錠の処方に変更。薬を変更しながら状態を観察するフローチャートに入ったと思った。薬の効果を数週間単位で評価するので時間がかかる。 一方で自分で細かく食事内容と嘔吐や痛みの状況をスプレッドシートにスマホから記録を続けた。受診時に、P病院まで特急に乗って小一時間来るのも大変になるかもしれないから、きついときはO病院に行くかもしれない。紹介をしておいて貰えないか訪ねてみた。主治医の先生は、「もうすでにかかっているんだから紹介するまでもないでしょう。同じ消化器内科だし手紙不要で、直接相談していいですよ」と軽く言われた。
2月から3月に入るあたりでどうにも立っていられなくなる症状が交じるようになり、こりゃたまらんと 3月7日市内のO病院に電話し、予約がないのでなんだか受付も渋っているようだったが、来てみてくださいと言われた。以前の担当医はいるようだったが、時間が取れず内科医が相手をしてくださった。
今思うと大失敗だと思うのだが、きついのに自分でタクシーで行ったこと、一ヶ月の食事内容と症状をプリントアウトして持っていき、丁寧にP病院の検査結果をもっていき異常がなかった事を伝えたこと。内科医は血液検査をオーダーしてくださったが、他にやることがなくなってしまった。血液検査の結果待ちで、検査室にあるベッドに横になっていた。座っていられなかったからである。先生がやってきて、血液検査上では以前の患部に異常はなさそうなので担当の先生も見られないと思います。新しい技術ですがカプセルで腸を見ることもできますが、そこまでやりますか?と聞かれる。面倒な患者と思われたかもしれない。受けたい診療を僕に聞いてきた。それを僕に聞くかと思いつつも、お話する中で、数日後にP病院受診の予定であることも話した。結局、流れもあるからP病院で詳しく診てもらう方が良いのではという話になった。そこで感じたが、やはり主治医の筋というものは厳然とあり、2つの病院に診てもらうから安心というのは間違いで、セカンドオピニオン取るにも手順を踏んでゆくべきだし、どちらも引き気味になりかねないので、ひどくなったら数万かかってでもタクシーで P病院まで行くべきだったのだ。もしくは、救急車でO病院に行き、黙って一から精密検査を受ける。そんなことを考えながら、苦しみの中にいた。
その日は、吐き気どめのような、メトクロプラミド錠 頓服5回分だけもらって、タクシーで苦しみながら帰った。職場に電話して、明日も休みますと連絡した。3月10日は P病院受診だ。
こんな状態で行けるかなあ・・・