令和6年司法試験予備試験論文再現憲法

設問(1)
 A町内会は私的団体である。憲法は対国家に対する法であるため私法関係に直接憲法を適用することはできない。しかし、弱者が強者に支配される関係が存在する現代では、私法の一般条項に憲法の趣旨を織り込んで解釈適用ができるものと考える。
 A町内会は、憲法上の権利が保障されるか。A町内会は、権利義務の主体足り得るので社会的実在であり、性質上可能な限り憲法上の人権享有主体足り得る。もっとも、目的の範囲内でのみ権利義務の主体となることができるものと考える。
 A町内会による祭事費の支出は、「目的の範囲内」にあたるか。
 本件では、A町内会規約⑤目的を達成するために必要なことに該当しなければ、A町内会は権利義務の主体足り得ず、無効になると考える。
 そして、祭事費の支出が宗教的活動(憲法20条3項)にあたる場合は、A町内会規約⑤に該当せず無効となると考える。
 現代においては日常生活と宗教を完全に分離することは不可能なので、宗教的活動とは、①目的が宗教的意義を有し、②効果がほかの宗教の援助、助長、促進又は圧迫、干渉になる場合をいうものと考える。
 本件では、確かに、C神社は宗教法人ではなく、住民の交流や憩いの場として利用されている。また、伝統芸能の発表の場でもある。さらに、神職が在中していない。これらから考えるとC神社は世俗的目的を有すると考えられる。しかし、ご神体が安置されており、神道方式の行事が挙行されており、祭事の目的は宗教的意義を有するといえる。また、ご神体や安置や神事の挙行により、他の宗教を信仰している者の信仰感情が害されるので他の宗教に対する圧迫、干渉になる。以上より、祭事費の支出は宗教的活動にあたり目的の範囲外の行為として無効になる。

設問(2)
 町内会費の一律徴収は公序良俗(民法90条)に反し、無効でないか検討する。
 A町内会は地域生活に不可欠の団体で住民は加入せざるを得ないので事実上の強制加入団体に該当する。そして、強制加入団体においては、様々な思想を持つ構成員が存在することが想定されるので、構成員の人権を侵害する行為は公序良俗に反し無効になると考える(税理士会事件)。
 本件では、町内会費8000円のうち1000円が祭事挙行費である。確かに、町内会の伝統行事を維持していくうえで費用負担はやむを得ないとも思える。しかし、一律徴収はC神社の神事に対して費用負担を強いられることになり、D教信者のXの信仰の自由を侵害する。
 以上より、Xの信仰の自由を侵害し、かかる一律徴収の規定は公序良俗に反し無効である。
 
感想
・過去問で出題がなかったと思い私人間効力を書くべきか迷った。
・私人間効と法人の人権主体性の論点をどこで展開すればいいかわからなった。
・例年の過去問と比べて設問形式が変わっていて、構成を考えるのに時間がかかった。時間がなく、論理やあてはめが甘くなってしまった。高い事務処理能力が求められそう。
・設問(1)と(2)でどう違いを出したらいいか悩んだ。
 

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