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大宅壮一の先見性

「一億白痴化」は大宅壮一が言い始めた造語である。1957年2月2日号「週刊東京」で、この造語が使われている。

大宅の文章を一部切り取って引いてみよう。

「白痴番組が毎日ずらりと並んでいる。(中略)一億白痴化運動が展開されていると言ってよい。」

ここでいう白痴番組とは、言うまでもなくテレビメディアのことである。低俗さ、薄っぺらさ、それに加えて捏造、隠蔽、虚報などごみ溜の様相を呈している。そんなものばかり見ていると、人間の想像力、思考力を低下させると大宅は警告した。

若い人は、大宅壮一を知らない。一億白痴化という言葉さえ知らない。が、若い人ほどテレビを観なくなった。もし、大宅が生きていたら、現在のマスメディア状態を見て、何と言うだろうか。

若い人は、テレビを観ない代わりにYouTubeを観るようになった。YouTubeは、自発的に選ぶことができる。チャンネルは数え切れない。その数え切れないほどのチャンネルから、自らの興味・関心・好奇心から選ぶのである。

そのチャンネルは、「公共放送」などと吹聴しない。受信料を取ろうともしない。(有料チャンネルもあるが。)

YouTubeチャンネルのユーチュバーはほとんど個人である。その個人が自らの責任で運営している。したがって、組織の論理に縛られ、ヤラセ、捏造、虚報をする必要もない。仮にそんなことをすれば、数日にして捨てられるだろう。

大宅の「一億白痴化」警告を、それとは知らずに、心で聴いたのは若い人たちであった。その意味では、大宅の先見性は昭和までであったと言っていいだろう。平成・令和時代の申し子はある意味聡明なのである。

若い人は見抜いている。

テレビが洗脳装置になっていることを。

(注)大宅壮一の「一億白痴化」に総を挿入して、「一億総白痴化」と言ったのが松本清張であった。

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フンボルト
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