初心とは
「初心忘するべからず」
と黒板に書いて、中一の決意を書きなさい、と促した先生がいた。
初心とは、初めの決意というイメージだった私は、確かな意味付けをしていなかった。
大学でH先生『風姿花伝』演習を受講した。先生が始めに問われたのは、この初心という言葉であった。
「初めの決心」
「初々しい決意」
私たち学生は、上のような答えをした覚えがある。が、先生は違う、とおしゃった。
「未熟な時の心」
これが先生の読みだった。
未熟な時を、多くの人はネガティブに考えがちです。が、未熟な時の希望、初々しさ、ドキドキ感、不安、ときめき、胸の熱さ、謙虚さを世阿弥は忘れなかった。それを忘れるから花がなくなる。その花を忘れなかったのが世阿弥その人なんだよ。
先生は、以上のように話された。
「珍しきは花」
「秘するは花」
この源は初心なのだよ。
今でも、H先生の声が聞こえてくる。
あの未熟だった時のドキドキ感、無限に感じられた可能性、
もう取り戻したくとも、取り戻せない。
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