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フナ釣りの思い出(浮きはススキの茎だった)

それは小学校に上る前のことだったと思う。

父母、私と妹でフナ釣りに出かけた。雨上がりであった。川は茶色に濁っていた。

浮きはススキの茎を利用したものだった。父は失業していたのかもしれない。浮きを買うお金さえ節約していたのではないか、と今だから推測できる。

フナは、濁った川から次々に銀の光を放ちながらつり上がった。父もかなり釣り上げたが、幼い私も負けないぐらい釣り上げた。数えて競っていたが、途中からそれどころではなくなっていた。母も妹も次々に釣り上げるので、フナの口から針を外すのにエネルギーを要した。手間取る妹のフナ口から私は針を取ってやった。

大漁だった。そのフナを自宅で鱗を取り甘露煮風にして食べた。1日目は美味しく食べられたのだが、2日目から美味しいと思えなくなったのを覚えている。

フナを釣り上げる父の朗らかな声を思い出す。酒を飲んで時に愚痴を垂れる父だった。が、フナ釣りなど遊んでいる時の父の声を私は忘れない。

朗らかな父の声を。

きょうは、近くの神社にお参りする。父の風を感じながら。


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フンボルト
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