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樅ノ木(モミの木)物語

ずっと昔のこと。
「樅ノ木は残った」というTVドラマを観たことがあった。その主人公(平幹二朗演じる)の精神性の高さに共感しながら観ている自分がいた。当時、樅ノ木の本物を観たことがなかった。観たことがないのに、樅ノ木は私の精神の中に入り込み、神聖な樹木になりつつあった。

33年前、今住んでいる家を買った時、北の庭に樅ノ木が植えられていた。

この時、本物の樅ノ木を初めて見たのだった。樅ノ木は仄かに檜に近い香りがした。

それから17年後、軽井沢のある宿に泊まることになった。2階の風呂に入ると、たまたま窓が開いていた。窓の前は樅ノ木であった。樅の大木が聳え、樅の新芽が窓先50センチほどの所まで伸びていた。樅の香りは強く、檜の香りを超えていた。何度も深呼吸をして、おいで、おいでをした。

10年ほど前に、その宿近くに小さな土地を購入した。そこには樅ノ木が10本植えられていた。いや、樅ノ木を残して造成したような区画だった。

今現在、その樅ノ木に雪がかかっているらしい。今年は、行っていない。来年のクリスマスの頃、何としても樅ノ木にお飾りを付けたい。夜、オリオン座を見上げてみたい。

樅ノ木は残っている。

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フンボルト
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