象徴遊びのお話
落語家の扇子は何のためにあるのでしょうか。暑い時に扇ぐためではありません。
では、どんな時に使うのでしょうか。
その扇子を盃に見立てて、お酒を飲むふりをします。
また、ある時は大根や人参に見立てます。さらには、その大根を刻む包丁に見立てることもあります。
目の前にないものを別のものを使って表す機能を象徴機能(シンボル機能)と呼んでいます。
例えば☀の絵文字は晴を表しています。この絵文字のことを英語ではsymbolと言います。
きのう、「ミルク飲み人形」について投稿しました。この人形を人の赤ちゃんに見立てて遊ぶことは象徴遊びの一つです。世話好きなあっこちゃんは、人形を赤ちゃんに見立てているだけではありません。自らを赤ちゃんのお母さんに見立てて、つまり2つの見立てを使って象徴遊びをしていたのです。
この遊びをは、入門期算数の数概念の獲得にも役立っていることが心理学研究で明らかにされています。
たとえば、次の問題があったとします。
1つ目の皿にはりんご2個ありました。2つ目の皿にはりんこが3つありました。合わせると何個ありますか。
最初はそれを半具体物の絵や模型で具体的操作をして合わせるでしょう。そして、体感的に5個と答えを出します。
が、この操作を省いて、もっとうまくやれないか、と人類は考えました。
やがてブロックやサイコロ形をこしらえて、それを合わせます。
この時の答えは、「りんご5個」です。なぜなら、ブロックやサイコロをりんごと見立てたからです。
こうした見立てのことも象徴と言います。この象徴は想像力、類推力の元になっています。
ミルク飲み人形を使って遊んでいたあっこちゃんは、やがて結婚してお母さんになりました。この遊びは、ひょっとすると母親になるためのリハーサルをしていたのかもしれません。母性本能が少しずつ育まれていた可能性を否定することはできないでしょう。
このように象徴遊びは、知的に影響を与えているのみならず、情的にも影響を与えているのです。