観察学習時代(YouTube時代)
中学の頃のことである。級友にNという勉強のできる男がいた。ある時、『螢雪時代』という雑誌を休み時間に読んでいた。「故人は螢雪の灯で学んだのかあ。」と心のなかで呟きながら、詩的感傷にしばし浸った。
この頃の中学生は、どんな雑誌を読んでいるのだろうか。勉強法の雑誌を読むより、YouTubeチャンネルを検索して、英語や数学を学んでいるのかもしれない。その意味では、「YouTube時代」と言い換えてもいいだろう。
今や、中学生はTVよりユーチューブ視聴時間が長いと言われている。時々にTVのチャネルをひねるが、バラエティー、お笑い、チャンバラ、報道など、どの番組を見ても面白くない。すぐに飽きてしまう。
ところがどっこいユーチューブにスイッチを転じると、そのチャネルの多彩なこと、ジャンルの多様なこと、驚くばかりである。趣味、好み、テーマさえしっかりしていれば、能動的に選べるのである。それもピンポイントで選択できる。3分見て、面白くなれば隣接するチャネルに飛ぶことができる。
私の趣味は日曜大工DIYなので、丸鋸の使い方、ガルバリウム鋼板屋根葺の仕方など、プロのチャネルを選ぶ。昨年、自宅の土間屋根をガルバリウム鋼板で葺くにあたり、ユーチューブを繰り返し視聴した。現場作業映像を繰り返し見る。それは、実際現場を見るのではないが、あたかも現場を観察しているような心持ちになる。これを私は「観察学習」と呼んでいる。もし、これが本の説明だけだったら、私はガルバリウム鋼板屋根葺を諦めただろう。
英語学習はどうだろうか。ユーチューブで学んでおられる方が多いのではないか。学校の英語学習は1回性の学習である。途中で先生の授業を止めて質問するわけにもいかない。が、ユーチューブなら、発音口形を何度も見直して、繰り返し練習することが可能だ。つまり観察は何度でもできるのである。繰り返し観察し、試してみる。試してみて、細かいところで躓いたら、改めて見直す。こうすることで、凡そのことは解決する。
手前味噌だが、たった4畳弱のガルバリウム鋼板葺は美味しい仕上がりだった。
観察学習、おそるべし。ユーチューブおそるべしである。