悲しみからとったダシがこれほどうまいとは 連載③
発病したのは、高校二年生のときだった。
電車の中、知り合いはひとりもいないのに、誰かの視線を感じる。視線の方向を見ると黒い服を着たひどく陰鬱な男がいて「死んじまえよ」と言ってくるのだ。
その声を境に乗客全員に「死ね」と言われる。
私にとって電車や人混みは地獄で、だからと言ってひとり歩く道が避難所でもなく、ひとりになればひとりになったで、また先程の黒い服を着た男が現れて「死ね、死ね。お前の日々が何になる?お前の日々に価値があると思ったことあるか?お前は、どの生物よりも、どのゴミ