ハンバーガーの味がなぜ違う?
大阪府の豊中にあるマクドナルドがおいしい!といまSNSで話題らしいです。
元マクドナルドクルーの私からすると、この"禁断のマクドあるある"がSNSで広まるというのが実に現代社会らしいなーと。
これからするサービスや品質のお話は、かつてのマクドナルドの話です。現代とはすこし違って改善されているかもしれませんがお許しください。
結論からいうと、同じレシピと食材でも、人が作る以上味が違ってしまうから、店の全員が努力して意思的にやった結果があの大阪のマクドなのでは?ということですかねー。
そう考えると、コーラが日本でもイタリアでもアメリカでも同じなの、すごくね?笑笑 でも飲料は工場で作ってるから正確に同じ味にできるのであって。ハンバーガーはそう簡単じゃないんですわ。実体験とともにお話ししますね。
最初に言いたいのは、この記事はクレームのような意図はまったく無いです。
僕、マクドナルド好きだから!
生まれて初めてお金を稼ぐ大切さを知ったのは、マクドナルドだったから、一生感謝してる(涙) 他のお店も負けずに、がんばってほしい。マクドナルドでは、優秀なサービスをできてるクルーや店の全国大会もあります。きっと他の店もがんばってます。
だけれども店によって・作り手によって味や質が違うのがしまうのは残念です。でもその"からくり"をぜひ知って改善してくれたら私はうれしい!
熱くなったところで、本題です(笑)
マクドナルドのレシピは「グローバルスタンダード」といいまして、世界中どこの店でも同じ味になるようになる「はず」です。誰が作っても同じになる「はず」。
具体的には、レタスやトマトの大きさとか、オニオンの量、ピクルスの水切りの徹底、ミートパティやポテトは一定時間が過ぎたら廃棄(ウェイスト)するなど、食材の分量に"基準や決まり"があります。チェーンの飲食店とか食材加工工場とかなら当たり前にありますよね。スターバックスもグローバルスタンダードです。エスプレッソのような濃縮された濃い味は、たとえ1mlでも量が違うとカフェラテの味がまったく変わってしまうと言われています(スタバは深煎りなので特にね)
アメリカは様々なルーツの人が働いているので、店や作る人ごとに味が違う事がざらだったようです(ここだいじ!)国内外で店舗が増えていくなか、味とブランドと利益を守るために、このグローバルスタンダードのレシピが採用されたそうです。とはいえ日本だけのメニューもあるじゃん?となりますが、国と地域ごとに食の嗜好が違うので変えてるメニューもあります。ただ作り方やレシピはどの店も同じです。味が同じになるように作ってる「はず」なんです。同じ味にならないのは現場の作り手にヒントがあります。
僕が思うのは、「グローバルスタンダード」というのは「世界中どこも同じ基準」という解釈ができますけど、実態としては、国や地域ごとに違ってもそれぞれの中では同じになるように「みんな一つになってがんばりましょう!」というのが現実に寄った解釈だと思います。外資系はほんと好きよねこういう理想論(笑)
世界中どこも同じ味にするのは、機械化が鍵です。ただ人の手で作るハンバーガーはそう簡単じゃありません。なぜなら作り手によって味は違うわ、食材によっても味は違う。ということは生産地も違うので、もし同じにするにはどこかから食材を輸入する必要があります。スターバックスの店内で使ってるコーヒーは輸入ですね。近年インスタントも売り始めましたが、日本の企業との共同開発ですので国内で作ってます。
余談ですが……、サードプレイスだとか店での体験を大切にしているスタバって、かつてはインスタントやボトル飲料を日本では売らないと言ってました。けど日本でも結局でましたよね。それもグローバルスタンダードの名の下に始まりました。でも味は、店と明らかに違う。わたしスタバでコーヒーテイスティングを散々やりましたから自信あります。インスタントやチルドカップのコーヒーというのは、味を広めるのではなくて、ブランドを広めて来店を促すというのが本当の目的です。ご家庭でもあの"風味"を!と良い事言ってますが、あんな"店とまったく違う雑な味"に変えて売るのはどうかなーと。なんでもかんでもグローバルスタンダードが最適解ではないと思うんですよ。国や地域に合わせたやり方を柔軟にやってもいいも思う。けどグローバルポリシーで「店での体験を大切にしたい」という方針なのであれば、雑な味で金を払わせて客を釣るやり方には矛盾があるし反対ですね。別のやり方があると思う。ドリンクカップに手描きのオーダーとイラストを廃止して印字されたラベルを貼るするなど私はもう大大大大反対でした。あれこそスターバックスのクラフト感や人の温かみが伝わる、すばらしい店舗体験のひとつなのに。なんか元々会社が大切にしてきたものってなんだったか思い出してみてって言いたい。最近の米スタバ管理部門の人員削減とか、スタバの迷走っぷりに僕は切なくなりますね…。言いたく無いけど昔はよかったよ。グローバルスタンダードには良し悪しがある事を、外資系はもっと相互理解したほうがいいと思う。
すいません、話が脱線しました。
マクドナルドのバンズは、契約でレシピを受け取った日本のパンメーカーが国内で作ってます。今はわかりませんけど、昔って店に届くバンズはメーカーが二つあって(店がある地域によって違います)、なぜかやや冷たい状態のものと、常温のものがありました。なぜパンが冷たいのかは当時高校生の僕にはわかりませんでした。でもこれバンズの味が違ってたんですよ。冷たいほうはパンの嚙みごたえがよくない。今思えば、たぶんパンを冷凍・解凍していたんじゃないかなと。品質のためだったのだろうけど味は違くて、常温のほうがおいしくて、よく焼ける。マクドナルドにはラピッドトースターという、バンズを上から落として10秒以内に焼いて下から落ちてくる機械がある。このトースターは「メイドフォーユー」という、それまでのハンバーガー類の作り置きをやめて出来立てアツアツを提供するオペレーションが2005年頃に始まった時に導入されました。ハンバーガーを作るテーブルが暖かくなってます(やけどしない温度)。レジでハンバーガーやナゲットをためておくアノ黒いスペースはもっと熱い。バンズを焼く最初の段階から最後まで冷めにくい設計になっています。
オペレーションが変わるまでは、バンズは12 or 6個単位で焼いてストックしていましたが、オペレーションが変わった今は、注文がはいったらトースターでたった数秒で焼き上げる。
冷たいバンズでもきちんと焼けるしおいしい。しかし常温のほうが温度の問題で基準以上によく焼けてしまう。こんがりしてておいしい。レシピと違ってるにも関わらず割り増しで美味しく感じるのですが……、品質管理とグローバルスタンダードの点ではNGでしょうね。今はどうなんだろう?バンズについては、味の違いがわからないほど毎回おいしい。
ここまでが、ハンバーガーの作り方とグローバルスタンダードの話でした。
ここからは、じゃあレシピ通りに作れば同じ味になるのか?!という話です。味が変わってしまうポイントはやはり作り手と店舗にあるので、私のアルバイトの実体験をもとにお話しします!
私はかつて高校・大学の頃、マクドナルドでアルバイトしていました。人生初のアルバイトがマクドナルドでした。学校から帰ったら直接店に行き、油のにおいがしみついた(洗っても取れない)ユニフォームに着替え、帽子の下に髪を入れ、慣れないエプロンをつけ、爪と肘を含めた手洗いを1分間、アルコールを手に噴霧してキッチンに立ちます。爪や髪が長いと店長に怒鳴られて家に返されるスタッフもいました(若かった私も何度か…)それほどマクドナルドは品質衛生…クレンリネスに厳しい。さすがとも言えるし当たり前でもある。現代じゃ怒鳴るのはアウトでしょうが、髪が食品に混入するのを防ぐために身だしなみを守らせるというのは今も変わらないでしょう。とはいえ髪が長い子をマクドナルドで見かけることもあり、そのへん店によって"意識が違う"のかもしれません。
当時は店長らがとにかく厳しかった。平気で怒鳴ります。怖かった。彼らに"スマイル0円"の文字などありません(笑) 頭にあるのは売り上げのこと。でもまぁそれを管理するのは彼らだけの仕事です。食材の廃棄は売上の低下につながります。なのでミートパティ一枚でも廃棄(ウエイスト)になると表に数字を書きます。ハンバーガーひとつでも「これウエイストね!」と言われて捨させられます。作り置きをする数(需要供給)はシステムが計算します。それに基づいて店長の部下のマネージャーが、どれだけの量を作り置きするか考えアルバイトに指示します。何枚ミートを焼いてストックするのか、どれだけナゲットを揚げるか、どのタイミングで新しいレタスを開封して追加するのか。レタスは常温にしておくと歯応えが変わってよくないので、開封するタイミングが重要です。別に食材が廃棄になっても僕らアルバイトは怒られはしません。ただマネージャーは怒られてました昔はね、今は知りません。(マネージャーから八つ当たりされることはありましたが彼らも人間です)
大阪のマクドナルドが話題になってから考えてみたのですが、私がよく行くマクドナルドのお店はもう長いこと通ってるんですけど(かつてバイトしていた店です 笑)、揚げたてを出すため 5分ほど待たされる事が多くなった気がします。おそらく作り置きと廃棄を減らすためでしょう。待たされるのは別に構わないのですが、せっかく揚げたてのチキンを使ったチキンフィレオなのにレタスが少なくて食べ応えが無い事がまぁよくある。作ってるのは若い男子高校生です。改善すべきなのが彼らなのか店長やマネージャーなのかは分かりません。
ここからが今回のだいじな話。
ただレシピやオペレーションつまり作り方を守ってるかについては、さすがに店長もマネージャーも管理しきれません。アルバイトが作る様子と出来上がるハンバーガーをいつもずーーっと監視してるわけでは無い。毎回はかりで重量を測るわけでもない。毎回ポテトに塩を振るときに、きちんと"M"を描いてるか見てるわけでは無い。どのメニューもすべて検品してるわけではありません。毎回それをしていてはお客さまへの提供が遅れてしまいます。(お腹空いてる時の人間は怖い)
毎回量を測ったりとかレシピを守ってるか正社員は見ていないとなると、最終的にはハンバーガーの味は、作っているアルバイト学生くんやパートのおばちゃんらの腕にかかってきます。味はもちろん、ブランドやグローバルスタンダードや安全衛生や品質保証や株価は彼らにかかってきます(笑) おおげさかもしれませんが今やSNSで情報が行き交う時代です。
彼らアルバイトくん/さんが、きちんとレシピを覚え、レシピの意図も理解し、毎回正確に作っているかどうか、忙しい時でもオペレーションにミスや手抜きがないか。ここが味を変えてしまう分岐点です!
私がよくやらかしてしまったのは、レタスの葉の選び方が難しくて。工場から納品されたレタスは、大きさもある程度均一にカットされて届きます。でもやっぱり芯がある部分とか葉が細かすぎるとかがあるんですね。重さじゃなくて枚数を守ればいいや!バンズからレタスがはみ出るくらいって先輩から教わったしいいや!とレシピの意図を理解できていないと、レタスが少ないベーコンバーガーとかが出来上がります。
あとポテトの量ね。本来はマクドナルドは、紙でできたポテトカップの背中の部分がポテトでほとんど隠れるくらいの量と決まってます。実際には重量の決まりがあり、はかりも置いてあります。ただ毎回ポテトの重さを測ると提供スピードが遅れることがある(ここだいじ)ので、ひと目で判断できるように、ほとんど隠れるくらいと決まっています。カップのサイズも設計されているのでしょう。
ただ、ポテトを測っているクルーを、客としてレジから一度も見たことがない。量が明らかに少ない時と多い時と差がある。これなぜかというと、ゴールデンブラウン…黄金色と例えられる揚げたての状態と、数分経って油が染みた状態だと、ポテトの固さが違くて。ポテトカップの中で揚げたてのものは固くてきちんと立ち上がりますが、数分たったものはそうならず、カップの下に沈んで倒れ込みます。するとポテトカップの背中が見えますが量はきちんと入ってる、っていう状態になります。ただ背中が丸見えなので、クルーは見た目で少ないと安易に判断してさらにポテトを入れます。つまり、揚げたての方が量が少なくて、フニャポテトのほうが量が多い「可能性」があるんです。文字だとわかりにくいと思うので、ポテトのカップの画像がこちら。
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これね僕がバイト時代から何十年もずぅーーっと思ってた。けど今はSNS社会だからぜひ問題提起したい!笑
レタスの葉っぱの大きさやポテトの量だけじゃなくて、ケチャップもそう。味が濃い食材ほど、分量を誤ると味が結構変わってしまいます。ケチャップの出が悪くなったりしてちょっと少ないとかちょっと多いとか、それでもいいかーーっていうのが現場では起こりえます。アルバイト学生くんやパートのおばちゃんがそこまで品質管理の意図と重要性を理解できるでしょうか。教える先輩がそこまで教えるでしょうか。彼ら責任を負えるでしょうか。人手が少ない・他店からヘルプの人員が来ないから店が忙しい。そんな忙しい時でもみじん切りのオニオンの量をいつも毎回きっちり守れるでしょうか。
そういうのはすべて、スタッフの教育を意識的にやればできます。それをやってのけたのが、おそらくあの大阪の話題のマクドナルドなんじゃないかと思ってます。でもこれ、当たり前なんです……グローバルスタンダードだからね。どの店も同じじゃなきゃいけないのにマネジメントが教育や監督をしてない or 作り手が守れてないってことです。他の多くのマクドナルドは、自分の店はできてないからSNSで話題にならない事をちゃんと認めて改善しなきゃダメなのよ。話題にならない=品質がよくない可能性があるともいえます。
私だったら、量が違うハンバーガーやコーヒーを食べ飲み比べをさせて、こんなに違ってしまうから量はきちんと守ってね!と伝えます。私はそう教えてた。実体験させてジブンゴト化させます。ただ単に提供スピードを重視すると、味や品質が犠牲になります。なので日頃からの準備と余裕、教育って大事だと思います。それってアルバイトやパートの仕事ではなくて、マネジメントの仕事だと思います。そのマネジメントが、忙しいとか本部から圧があるとかでやらない・できない、その結果が、店によって味が違う事に繋がるのもあるんじゃないかなと思いますねー。
今は私は飲食業から離れましたけど、長いことマクドナルドとスターバックスにいました。社会人になってもどちらも好きで、当時のアルバイトの事をよく思い出しながら食べてます!
でも当時はSNSなんか無くて、こういう味とか品質の話題って世間に広まらなかった。けど当時から、あの店のあのスタッフが作るカフェラテやポテトはうまい!とか、バンズの製造から配達の過程で冷蔵保存をしてないあのバンズメーカーのほうがふっくらしてて美味しい!とか、あったんですよね前から。今は改善されたところも多いとは思います。個人的にはいまさらこれでバズるんだ!っていう不思議な感じではあります。しかし裏には相当な努力と厳しさと涙があると思いますよ。レシピやオペレーションを徹底して守るって飲食ではそう簡単じゃ無いし。特に正社員だけではない、アルバイトだけでも店がまわせます。ただやはり味やオペレーションを守るとかまで深く考えるには年齢と経験が要るでしょうし、丁寧に教えてあげたほうがいいのでは?と思います。アルバイトを抱えるすべての企業に言えることです。
繰り返しますが、僕はマクドナルドが好きだから。他のお店も、会社としても、味が違うだなんて皮肉なことにならないよう頑張って欲しいです!
いま大阪のマクドナルドが話題な背景には、こういったことがあるんじゃないかなと、元マクドナルドクルーの考察でした。ありがとうございました😄
ちなみにYouTubeチャンネルで「ファーストフードシミュレーター」っていうゲーム実況をしてます。よかったら見てくださいね!↓↓↓