![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158355350/rectangle_large_type_2_dd398230cfd8bcdfbce26e04561a8e8e.png?width=1200)
マジかよ、生き霊!?
「なんだよこれ! どういうことなんだー!」
洋司は混乱のあまり、天を仰いだ。興奮して大声を出した拍子に、口から唾が飛んだ。洋司が吐いた唾は、冷たい天井に向かって一度飛び上がると、重力に逆らうことなく垂直に落下した。
「俺の美しい顔に、俺の透明感あふれる唾が!」
落下する唾に洋司は顔を歪めた。唾は美しい顔面にぶつかることなく、白く透き通った体内を通り過ぎた。唾はそのまま、洋司の足元にぽたりと落ちる。洋司は自分の足元を見る。そして、自分の手を見た。
「マジかよ。浮いてる! それに透き通ってる!」
洋司の体は、地面から10cm程度ふわふわと浮いている。そして体は、美しく儚げな彼女と水族館で眺めたクラゲのように、半透明になっていた。
洋司は自分の首を、両手で押さえた。
縄がない。洋司は首吊り自殺をしたはずだった。この世の全てに嫌気がさして、学校の裏にある森で首を吊った、はずだった。
しかし、おかしい。洋司は自殺した森がある学校の教室にいる。それも、生徒の側の席に。
目の前にいたのは、鈴木美鈴。
17歳とは思えない美貌。少し影のある雰囲気。飲み込まれてしまいそうな黒い瞳。洋司は美鈴が少し苦手だった。女子校の教師になり、顔面偏差値の高い洋司には楽しい日々が訪れていた。しかし、美鈴のクラスを受け持つようになって、いつの間にか陰鬱な気持ちになっていた。そして、自殺。
洋司は頭を抱えた。なぜ教室の美鈴の席の後ろで、宙に浮いたまま俺は立っているのだろうか。死んで、俺は幽霊にでもなったのか?
ガラガラと前の扉が開き、教室に教頭が入ってきた。
「おはようございます。担任の斉藤洋司先生ですが、事故に合われ、緊急入院されることになりました。しばらく私が、斉藤先生の代わりをしますので、よろしくお願いします。では、出席をとります」
美鈴が後ろを振り向き、洋司を睨みつけた。
「マジかよ、生き霊!?」
つづく
797字
#逆噴射小説大賞2024 応募作品です。
長文を前提とした作品の「冒頭」を考えるというコンテストらしいです。
つづきはありません。
続きはないの? と思ってもらえてたら嬉しいです!