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指先のブルー_存在しない小説のワンシーン


少しだけ触れている。
彼の左手の人差し指と、私の右手の人差し指。

風がびゅうと吹いた。
「寒いね」
彼が、少しだけ後ろを歩く私の手をそのままぎゅっと握ったのは、いつのことだっただろうか。もう、遠い昔のような気がしている。

「じゃあね」
私は横にいるのに、彼がこちらを見ることはなかった。
あっさりと彼の左手と私の右手の間に、冷たい風が音もなく通り過ぎた。

私は行くあてのない右の手を、そのままコートのポケットにしまいこんだ。



あおさんが楽しそうな企画「存在しない小説のワンシーン」を募集してたっぽいので、書いてみました。

前後に「〜」を入れればいいっぽい。




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