連作しらず19
いくつかまとめたい、まとめにゃぁならんのがあるが気が進まない。そういう時は速度を落として、ほんでもちょっと動くのがいいんだよね。
19。という数とはもはやあまり関係ないけど、連作というのは、短歌1首では伝わらない「なにかしら」を伝えるのが目的になるわけで、それがストーリーであったり、世界観みたいなものだったりする。世界観ならば、いい歌を干渉しない感じに並べればそれでよいだろう。ストーリーである場合は、作品内時間や空間、或いは物語の始まりや終わり、主題、地の文などの構成が求められる。でもそれでいて、その構成は一首一首の良さとは本質的には関係がなかったりする。そもそも、短歌というものが、伝えようとしたもの以上に伝わるものがあるのをよしとするようなところがある、厄介な詩形であるのだ。
連作「3月の海」
3月の海がみたいというきみのポエムにきみより乗っかるぞ今日
コンビニのいまだにこれが百円と信じられない珈琲を買う
軽自動車はかっこ悪いと言うけれど事故った時は紙の箱だよ
ぺしゃんこの死もありとして軽ってさ浮世絵みたいなニッポンだよね
カーナビの経路が微妙、どの道も渋滞しそうなぼくらのポエム
学校を風邪で休んで部屋に家に地球にわたしひとりの世界
生き物は境界である、ヒトガタの切り絵の外のほうからの思慕
体育館のステージそでの階段で告白されたことは忘れた
革命は夜のニュースで知るだろう映像の暴動はともかく
甥っ子が凹ませたスピーカーで聴くステレオからのジャン・シベリウス
灯台はここからかなり歩くけど入れないけどポエムだし行く?
海風の腐食をふせぐ厚塗りの白いペンキが湛(たた)える光
3月にしては天気の晴れだけど海風が奪う二人の温度
坂を下りて水にさわろうレミングの死の行進が嘘の現代
浜辺には打ち上げられた醤油鯛塩分濃度が合わざりき、嗚呼
天井の模様に意味を見出して我のみの思春期の妄想は
飽きたので未来の若いカップルは帰りに交通事故に遭わそう
原稿をまるめて後ろにポイとする夜、そのあとでゴミ箱に入れる
3月の海は曇りてうみねこが示し合わせたようにざわめく
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