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#202208自由連句「まだ炎昼」の巻

2022年8月の存在証明として。

#202208自由連句 「まだ炎昼」の巻

1 いちについて、よーい、の尻たかくまだ炎昼  てるや
2 計画ばかり前のめりかな  多実果
3 逃げ水で濡れてしまったうしろ足  朱夏
4 アビイ・ロードのトリケラトプス  大祐
5 朝顔が飲み込んでいく夏の雲  よう
6 フェンスをつかむ手のかっこよさ  てるや
7 隣人の屈託なさに戸惑って  多実果
8 独房に飼うおれだけの蟻  大祐
9 肉球がふたりをここに保存する  朱夏
10 冷やしておいたトマトを君と  ほのか
11 夕焼けにとろけてしまうガラス瓶  よう
12 ぶぉーっと吹けば汽笛のようで  多実果
13 夜空にも宇宙くじらの泳ぐころ  てるや
14 ひまわりだけが滅びずにいる  朱夏
|15 惑星がぶうんぶうんとふくらんで  ほのか
|16 かき氷機の影の伸びざる  大祐
|17 まだ動く昭和家電も昭和人も  てるや
|18 南極基地の坐禅の会に  大祐
|19 電球が頭の上に現れる  よう
|20 エアコンの効いた部屋にブルース  ほのか
|21 ピラティスもヨガも母には体操で  多実果
|22 わたしのへその緒まで深呼吸  朱夏
|23 こだま帰さぬ山に向かって  よう
|24 何回も名前を呼んだことは秘密に  多実果
|25 海風がうるさいときにさようなら  てるや
|26 てるてる坊主を持ち帰るひと  ほのか
|27 筆名が母のグリーンアメジスト  大祐
|28 蝉の翅だけ集めてしまう  朱夏
|29 透き通る月をあなたに贈る夜  よう
||30 片方なくした1DAYアキュビュー  多実果
||31 希望とは目玉焼きの目をつつくとき  てるや
||32 泣いているねと笑いあうこと  朱夏
||33 朝顔のつぼみ弾けて歌い出す  よう
||34 昼間にこそりうたた寝をする  ほのか
||35 扇風機に集まってくる宇宙人  多実果
||36 アップデートは羽根を隠して  朱夏
||37 レッドブルは隔日とするマイルール  てるや
||38 白だけを踏む横断歩道  よう
||39 エミネムが経営しない酒屋出て  大祐
||40 ゲロルシュタイナー日本撤退  てるや
||41 ジャクソンになれずランダムウォークする  朱夏
||42 借り物競争の「聖子ちゃんカット」  てるや
||43 ラジオから砂を吐き出す音がする  よう
||44 光と影を残しもせずに  多実果
||45 妹はおしまいのあとも生きました  朱夏
||46 アコーディオンを弾き語りつつ  ほのか
||47 日陰ではふいにすずしき石畳  てるや
||48 甲斐よしひろがペリカンを撃ち  大祐
||49 返信はあずさ2号に載せました  朱夏
||50 今年も夏をあきらめました  多実果
||51 曲が途切れオートリバースでB面へ  てるや
||52 補正している空白の歌詞  多実果
||53 カラオケのラップが(ラップ)と書かれてて  てるや
||54 唐揚げにする三蔵法師  大祐
||55 発端は冷やし中華のサクランボ  朱夏
||56 メロンソーダも、フルーツパフェも  てるや
||57 サンプルが色褪せている純喫茶  多実果
||58 ペッパー君がうなだれている  てるや
||59 ポリゴンのゲームでいうと初期型の  てるや
||60 オッケーバブリー的肩パッド  多実果
||61 すきとおる体を捨てて書架整理  朱夏
||62 崩落現場から、以上です  てるや
||63 夏の恋 麦茶以外が溶けた部屋  てるや
||64 筆に含ますあなたの涙  よう
||65 君の住んだ街だったから水彩画  てるや
||66 あつめた風はここに置きます  朱夏
||67 まだ続くハッピーエンドのその先で  多実果
||68 ラビに唱える南無阿弥陀仏  大祐
||69 アジアの来迎図は雲に乗り  てるや
||70 海底にぼくたちだけの三千世界  朱夏
||71 キンキンのエアコンの職場の休日の  てるや
||72 高校野球、終わらないでよ  多実果
||73 すいかよりスイカバーが好きな少年に  てるや
||74 冷たさが強さと思う思春期  てるや
||75 かき氷くずが死までを滑空し  朱夏
||76 おちればとけることはしってる  多実果
||77 チュッという音たてるのがうまいですね  てるや
||78 夜明け未満を背に注ぎながら  朱夏
||79 いつまでも友達以上になれなくて  多実果
||80 朝の占いも一位と最下位  てるや
||81 新設の0番線に降り立てば  朱夏
||82 こゝろのなかの最終定理  大祐
||83 江戸絵師が竜を見るまで荒呼吸  てるや
||84 花散る音に気づかぬままに  多実果
||85 ぼくという風をあなたに見てほしい  朱夏
||86 テトリスみたいなビルの窓から  てるや
||87 落石注意の日本語は上を見ちゃうよなぁ  てるや
||88 熱病の日に重力の虹  大祐
||89 大丈夫、マリオカートはうまいから  てるや
||90 祖母・母・孫はメガネをかける  ほのか
||91 水晶玉で推しを見守りつづけるも  てるや
||92 逆立ちしても見えぬ真実  多実果
||93 プッチンプリンをプッチンしない大人なんて  てるや
||94 チャップリンとは永遠にチャットを  朱夏
||95 韓国の焼酎(ソヂュ)の香りにサッカリン  てるや
||96 酒池肉林の熱帯雨林  多実果
||97 競輪のマニアの誤認サブマリン  大祐
||98 きみ去りて実の匂へるカリン  てるや
||99 一輪のまだ目にみえぬそれの色  てるや
||100 あなたのラッキーカラーだといい  多実果
||
|30 絶対零度になるまで眠る  朱夏
|31 尻子玉つるりと痛みなく抜かれ  てるや
|32 「川」か「河」かと悩む会  よう
|33 磨りガラスの引き戸がらがら公民館  てるや
|34 まだ戦争が立っていますね  朱夏
|35 さえずりを聞いた気がした空の籠  多実果
|36 古代ギリシャに飛んでいく雲  ほのか
|37 『存在と時短』を書架に忘れ去り  大祐
|38 奇病の夢のことを話した  朱夏
|39 涙する人形作家の隠し部屋  てるや
|40 ガラスの球は海になれずに  よう
|41 体育の授業は雨でも水泳で  多実果
|42 流れたいのにかさばっている  朱夏
|43 財布には期限の切れたクーポンが  よう
|44 リサイクル(せぬよう/するため)火葬せり  てるや
|45 プラスチックのくらげゆらゆら  よう
|46 からからと透明な手触り感じて  多実果
|47 ねちねちと街のマチネに待ち合わせ  てるや
|48 擬音としてのきゅーぴー斃れ  大祐
|49 ぺなぺなのへこんだバレーボール打つ  てるや
|50 魔女のほうきがぶんぶんうなり  よう
|51 奥底に見つけた不在連絡票  多実果
|52 シュレーディンガーのクロネコヤマト  てるや
|53 新文明三原色に足す色は  朱夏
|54 AI描く自画像の中  よう
|55 撒き菱と松井秀喜をくらべつつ  大祐
|56 カルシウム以上鉄分未満  てるや
|57 ネジひとつ過去に忘れたデロリアン  多実果
|58 甘くない餡を言うときオトナ  てるや
|59 五人組チュチュのスカートくしゃくしゃに  朱夏
|60 かわいい子にはたびたび会いたい  てるや
|61 田舎には無口の時間ちちははに  てるや
|62 たまの会話は犬を介して  多実果
|63 乾杯はアルコールなしの甘酒で  てるや
|64 政治資金パーティーおままごと  朱夏
|65 指舐めて札束、でなくレジ袋  てるや
|66 貧乏人の買う宝くじ  ほのか
|67 水星の西瓜畑にばらまいた  大祐
|68 スパンコールやスワロフスキー  多実果
|69 バッティングセンター裏の大魔神  朱夏
|70 また失恋してここに来たいな  てるや
|71 バズーカを担ぎ挙式に駆けつける  朱夏
|72 軽トラはやや傾きながら  てるや
|73 どしゃ降りで鉢受皿に水あふれ  多実果
|74 左に旋回しがち背泳ぎ  てるや
|75 手鏡を映す鏡のこちら側  朱夏
|76 時計はちょうど12時だった  てるや
|77 桜島、ここがまだ島だったころ  多実果
|78 ふんどし長きじいちゃんとぼく  てるや
|79 ぺこぺことポンプのカエル逃げ切れず  てるや
|80 謝る俺の肺が縮まる  朱夏
|81 なんとなく潜水艦が沈む日の  大祐
|82 くらげに間違うビニール袋  多実果
|83 真夜中の交差点なら踊れそう  てるや
|84 ツーステップとスキップだけど  多実果
|85 起こされたモグラはしかし感謝して  朱夏
|86 たったひとりで越える国境  てるや
|87 冷蔵庫に隠して飼ったクリオネと  てるや
|88 バッカルコーンの練習中です  多実果
|89 磯野家の廊下の電話あらまほしけれ  てるや
|90 銀河のなかでつなぐザ・たっち  大祐
|91 ふたご座のAB型で分裂症  てるや
|92 わたしたち入れ替わってません  朱夏
|93 名画座はビルの名だけに残されて  多実果
|94 三店方式の途中の灰皿  てるや
|95 人生は無駄が楽しいのが楽しい  てるや
|96 水戸黄門の贋金つかい  大祐
|97 刺されない空を冠してスカイツリー  朱夏
|98 鼻にングッと、腕にチクッと  てるや
|99 サザエさんが終わる時間のあの気持ち  多実果
|100 まだ来ん明日も楽しい予感  てるや

15 熱風に曲がったままの秒針は  よう
16 いつも記録を更新してる  多実果
17 滋賀県の県誌かさねるディカプリオ  大祐
18 恋の戦の火蓋を落とす  よう
19 三番の歌詞に合わせて抱き寄せる  朱夏
20 信号待ちの隙にクリムト  てるや
21 手毬唄大轟音に響く世の  大祐
22 嫗の編む手止まりもせずに  ほのか
23 乾ききった全休符をはがす朝  朱夏
24 てかてかの泥団子誕生  てるや
25 おへそからにょろり這い出るツタがあり  よう
26 ジャックは自分で登りたいのに  朱夏
27 屋上にじょうろで書いたSOS  多実果
28 星かげだけが拾っていった  朱夏
29 パタリロを美輪明宏がぶちまけて  大祐
30 虹の根元に落人の里  てるや
31 じーちゃんの昔語りが止まらずに  よう
32 白波五杯入れ歯カクカク  多実果
33 寝顔みる頭蓋のうつくしいあなた  てるや
34 色のないベジェ曲線として  朱夏
35 うちわから優しい風が生まれ来る  よう
36 眠るこどもはバンザイの腕  多実果
37 サブウェイを棋士一同で切り分けて  大祐
38 通天閣であおぐ三日月  よう
39 いいマスクなのでくしゃみのとき外す  朱夏
40 あの縄文土器でぼくらは食べた  てるや
41 アイメイクばかり濃くなる三年目  多実果
42 桃の香りを夜に纏って  よう
43 肉食は間違いでした夜の底  朱夏
44 忌の字の引っかかる原爆忌  てるや
45 チャイム押すときピンポンとつい言って  多実果
46 ヤクルトあげるとよろこぶ子ども  てるや
47 おそろいの野球の帽子を被ってる  よう
48 双子姉妹は朝ドラ向けの  朱夏
49 ポッキーが存在しない惑星に  大祐
50 王様ゲームが盛り上がらない  多実果
51 バク転をしながらピエロやって来る  よう
52 遺失物届け出す暇もなく  ほのか
53 ゲルニカを解体すれば足りない手  朱夏
54 図書室に隠れダリと目が合う  てるや
55 ほっぺたをチュッパチャップスでふくらませ  多実果
56 大胆なことをやることで夏  てるや
57 山勘でもしもボックス修理して  大祐
58 「もしも俳句が五八五なら」  てるや
59 3Bの中八先生秋に死す  大祐
60 傷んだ檸檬抱えたままで  朱夏
61 走るのはメロスだけではなかったか  ほのか
62 トンネルくぐり探す雪国  よう
63 追いかけてきたはずなのに逃げている  多実果
64 安部公房的黒縁メガネ  てるや
65 流行が一周回るその日まで  てるや
66 使い続けたデッサンノート  朱夏
67 どうしても角が長めのユニコーン  てるや
68 ハットリ君に二つの祖国  大祐
69 バイパスの以前の裏道なつかしく  てるや
70 誰かわたしをさらって欲しい  よう
71 行き先は決めずに荷造りが終わり  多実果
72 わたし自身もかばんに入れた  朱夏
73 沖縄まで逃亡犯を泳がせて  てるや
74 知らないうちにマイルがたまる  多実果
75 薬局のヤードバードの席磨き  大祐
76 ビルにはEVAの換装機能  朱夏
77 逃げてゆき逃げられぬとき草枕  てるや
78 いつか行きたい店通り過ぎ  てるや
79 行きつけのスケートリンク四畳半  朱夏
80 天下取らなくても二合半  てるや
81 まだ宿も決まらぬうちに土産買い  多実果
82 ボストンバッグの中で鳴く猫  てるや
83 冷やしたらクラムチャウダーちゃうんちゃう  朱夏
84 ラムちゃんは九州か北陸生まれ  てるや
85 方言のない田舎からのど自慢  てるや
86 山葵がわりの桃鉄つめて  大祐
87 貧乏は人間だけの特権だ  てるや
88 トノサマバッタが食べられました  朱夏
89 あの路地に口裂け女が今もいて  てるや
90 校舎の下駄箱に置き手紙  てるや
91 泣いたぶんちょっと斜めになる切手  朱夏
92 太陽の塔が手を振っていた  てるや
93 いってらっしゃいは祈りの言葉  多実果
94 残り少ない梅干の瓶  てるや
95 コンビニで柔らかい餅が買える世に  てるや
96 鈍器がひとつ減ってしまった  朱夏
97 さみしくてボクは何かを食べたらし  てるや
98 食べやまぬのはまだ癒えぬせい  多実果
99 月はもう蝕(く)ひ終へたからさぁおいで  てるや
100 何度でも生きなほしたねこは  朱夏


てるや……山月亭てるや
多実果……寿々多実果
朱夏……袴田朱夏
大祐……川合大祐
よう……海月漂
ほのか……小澤ほのか

                                    




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