けさのまにえふしふ46
玉匣(たまくしげ)明けまく惜しきあたら夜を袖(ころもで)離(か)れて独りかも寝む(9-1693)
玉匣 開巻惜 恡夜矣 袖可礼而 一鴨 将寝
けさのまにえふ。「玉匣を、あけるように夜があけることの残念な夜を、袖交わすことなく一人で寝るのかなあ」
雑歌。紀伊国に来た旅行者が、そこで会った女性を誘うんだけど、断られたので、二首連作してる。どちらも「独りかも寝む」が結句。
どうも、われわれ21世紀日本人は、和洋折衷のいびつな性風俗観に囚われているので、万葉の性風俗を知的にしか理解出来ない部分があるのだが(100年前の混浴も感覚がもうわからん)。
これは、断られて残念だーという失意の歌なのか、さみしいよー(チラ)というワンチャン狙いなのか、本当はそんな女性なんて誘わないけど、そういう風情でいないとかっこ悪いし、その土地に失礼だったりするのかね。
面白いのは、夜の形容で、玉匣は、宝石や櫛、化粧品を入れる箱のことで、歌では「明けまく」とあるが仮名は「開」で、夜が蓋されているイメージがあることだ。
また、玉匣は、「ふた(蓋、二)」につながる枕詞だが、ここでは「あける」の序詞(じょことば)的に使用されている。
あと、当時の紀伊は、南海道の行政区分で、四国エリアだったのね。それは遠いわ。それは、ひと夜の火遊びもありだわ(ないわ)。
照屋へんかん。
蓋されてたちまちの夜、月という穴から今日も見られておりぬ(照屋conv.)
(20160923)
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