連作知らず15
noteに課金機能があることから、短歌表現とマネタイズについてほそぼそとその周辺をうろついていたけれど、歌人の定義問題なども巷には話題になったりして、意外と大事な問題なのかもしれない。
さて、15首の連作。連作の作り方は、おおきく3つあると言えようか。ひとつは、それまでに作ってきたものを、何かしらの関連があるようなまとまりに配置するもの。ふたつは、あるテーマのようなものがあって、そのテーマの周辺をめぐるもの。みっつは、わりとしっかりしたストーリーを短歌で物語ったもの。連作数の決まっている新人賞などはひとつめ、歌集の中の、数首で出来ていて副題がついたようなものはふたつめ。みっつめが、いちばん連作ぽいが、いちばん難しいところかもしれない。
連作「15の朝」
夜な夜なに音楽史など語りいて自分史に片寄りつつ耐えつ
音楽は脳のいずこに貼られたる記憶であるかテープが回る
洋室のボロいソファに夕方の陽(ひ)が差すことも音の記憶に
幸せなシーンばかりだ、団らんに誰かが一人いないのだけど
音楽がストレージ(蔵室)なんだこの曲に秘密鍵あれば開くわが過去
目覚めれば十五の朝というけれどすぐ気づくのは不自然だろう
この朝は十五のいつだ、電話ボックスの彼女に呼ばれる以前か以後か
前だった、てことはつまり弟が惚れてた彼女にまだ告(コク)られず
今夜彼女が告白をして付き合えば兄弟は遠くはなればなれだ
人生はやり直せるかワンクールのアニメのような予定調和に
夢覚めて五十の夜だ、夢オチにあらねば少し説明が要る
音楽は楽譜のとおり弾(ひ)かれゆくあの時もわれは再び惹(ひ)かれ
性欲の奥になにかの欲があり理性もひとつの荷物であった
ソファには夕方の陽(ひ)に弟の無表情あり、記憶と違い
団らんにそりゃ僕は少し浮かれいて彼女が出来たことを隠して
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