けさのまにえふしふ10
垣穂(かきほ)なす人言(ひとごと)聞きてわが背子が情(こころ)たゆたひ逢はぬこのころ(4-713丹波大女娘子)
垣穂成 人辞聞而 吾背子之 情多由多比 不合頃者
けさのまにえふ。「垣根みたいな人の噂のせいであなたさまの気持ちがゆらいでしまって、最近逢いませんわね」
たにわのおおめおとめさん。たんばのおおめいらつめとも読むらしいですが。この奈良時代の女性も、三首の恋歌でしかしられていません。
万葉の恋歌にはけっこうおなじみな「人言」。うわさって訳すけど、このうわさって何ですかね。ただの芸能ゴシップの意味だろうか。(前々回はそんなスタンスだったが)
おそらくはほとんど政治的な情報だっただろうし、家とか家格に関わる大事な人事(人言)情報だったろう。
この女性は丹波、どちらかというと田舎の方だったろうし、大伴家とこの家が関わったのはこの女性の功績が大きいかもしれない。
自由恋愛時代のわれわれには、違う時代の恋愛感がほんとうにわからなかったりするものです。
和歌っていうのも、おそろしくプライベートなことを書いているようでいて、基本的にはパブリックな形式なわけだから、今回の歌みたいな、彼氏にも訴えながら、世間にも牽制をかけている歌は、すごい強い一手だよね。
「逢はぬこのころ」最近逢ってないことを周りに伝えながら、外野がうるさいせいにしつつ、男にもプレッシャーかける。つよい。
コンバート。
公認にもうなってるし迷ってる時間がもったいないんですけど(照屋conv.)
(20160719)