連作知らず18

いろいろnoteでやろうと考えていたこともあったが、ちょっと推し進める力が失われつつある。そんな大したことをやろうとしているわけではなくて、書いてきたものをまとめたりする作業なのだが、めんどさがまさってきた。無理してすることもあるまい。

18首。9のかたまりを2つか、6のかたまりを3つか。ちょっと連作の構造と少し離れるけど(ミクロな意味では離れない)、同じ主題(あるいはアイテム)の歌を2つ並べると、通常、この主題について言いたいことが2つあるんだな、と思う。ただ、3つ並ぶと、そこには並べた、という作者の意図が感じられるようにみえる。で、その3つめを、数首空けて置くとどうなるだろうか。連作知らず16でそのようなブロックを考えていた。あれをもう少し押し進めてみようか。

  連作「ひとつ足りない」

まっすぐは進めないのか愚直なる騎士(ナイト)の駒をうろうろさせて

負け込んで玉砕のように配置さる布陣のゆえにさらに負けゆく

負け戦だれにも責めを転嫁せず駅前は三時、金だけが無し

スカジャンのポケットになぜか入りたるプラスチックの桂馬がひとつ

歴史には「もし」はないのだ今の今の今半身の「もし」が消えつつ

時の運のような勝負に勝つとしてなにをもたらすだろう夕焼け

ベトジャンに作為がいつかすこしずつ縫い込まれゆき流行すぎる

ネオン管のヤシの木のある看板のお店に君のスカジャンが合う

思い出を最初にセピア色にしたやつの写真もセピア色かも

3月のまだ完全に春じゃない半島の南国風ソテツ

コンビニのガラスの結露著(しる)くしてモンスーン脱いで男ら入り来

残すことの価値失われたる未来100年プリント技術羞(やさ)しも

枯らしたる観葉マングローブにも組み込まれてあれ熱帯の夢

CMの虫ひとつおらぬナチュラルな自然で育った水をがぶ飲む

未来には進みたくないはずなのに君の写真が遠ざかる今

すきまなく菌につつまれぼくたちは手をつなぐきみをつかまえている

勝利への渇き、すべての言い訳を積んでもきみはドアの向こうへ

将棋盤に盛られた駒をぽつねんと並べる駒がひとつ足りない



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