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なぜ独立した?②

その頃、我らの使命は世界で高いシェアを誇る自社加工糸を使用した生地の国内シェアを上げることだった。
その生地は海外事業部と同様、国内においてもフォーマル用途に多く使われる。

国内におけるその生地のトップシェアは東レの原糸をもちいた加工糸で作られており、テイジンの原糸をもちいている我が社はそもそも見向きもされない。

理由は単純だった。

テイジンはチタン含有量が高いのでドレスを撮影すると黒ずんで写る。
残留収縮が高いのでアイロンで簡単に縮む。
それと我が社の作る生地の緯糸が撚りをかけず引き揃えで打ち込む、かつ高速のウォータージェット織機で作っている。
いわばコストの安い作り方をしていた。

さぁどうする?

当初は品質問題を二の次とし、コンペチターの客先を巡礼した。
もちろんキャッチアップを始めたから単価は安い設定になる。
それでも見向きもされず話を聞いてももらえない。
付き合ってくれる問屋からも日々文句が届く。
それに奔走していた時に朗報が入る。

そのタイミングで本社工場が取り組んでいた新素材があった。
撚りのないスーパーブライトの糸だった。
それを経糸に用いてサテン素材を作ったところバカ受けした。

海外ライセンスブランドポールスミスが取り扱ったことでその素材は爆発的に売れ始めた。
しかしそれは目標のフォーマルマーケットではなく一般アパレル用素材だ。
あっという間に生産が追いつかなくなり勘違いした我が部署は不毛な流行り廃りマーケットがさも目指した市場と思い奔走する。

そこからその勘違いがこの部署の存続を危険にさらすことになる。

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