boa idole(ボア・イドル)
これは幻想ではなく実像である。
赤い軍服に身を包む彼女たちがステージへと向かう。瞳、唇、髪の一本に至るまで、完璧を仕上げたアイドルたちは新曲を披露するために足早に楽屋を出る。
分厚いブーツの靴音は聞こえない。テレビ局内はごった返し、揺れるピアスがカシャンとぶつかる音もその耳に吸い込まれるだけだった。そこで仕事をする誰もが小走り以上の速さで交錯し辛うじて交通事故を回避している。
ステージへ上がる。暗闇の中互いの手を掴む。位置を確認したら、眩しすぎる閃光を待つだけである。人々は待ちきれず胸を掻きむしり彼女たちの名を叫ぶ。
これは逆襲ではなく制圧である。
大蛇の如く獲物を捉えんとするアイドルは、人々を一飲みするために腹で地を這う。強靭さは誰の目にも触れないバックグラウンドで培われた。
音楽が鳴る。彼女たちの耳に嵌められたイヤモニの本当の役割を我々は知らない。
恋を歌う、思想を歌う、在り方を歌う。
熱狂を踊る、主義を踊る、在り方を踊る。
蛇の目で見つめられ、締め上げられ腹の中に放り込まれた我々が狂気の中で息を吹き返す頃、彼女たちの頭上には王冠が輝くはずだ。頭を垂れ、次の供物に選ばれることを祈り、我々は彼女たちの君臨を祝うのである。
大好きな二つのガールズグループのカムバックを祝して!
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