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夜の涼しさに、春の終わりを感じる。
「何度思い返しても矛盾しているとしか思えない表現だわ」
肌寒さを遠ざけるカーディガンのほつれを見つけて、少し気分を落ち込ませながらアイスをかじる。
状況と行動だけを見れば学生時代とそう変わらないつもりなのだが、肩を竦ませる寒気がそんなことはないと訴えた。昔は寒さなんて何のそのと振舞っていたような記憶があるような、ないような。もしかしたらただ覚えてないだけかもしれない。
それとも一人ではなかったからか。
誰かが罪悪感と共に置いて行った空き缶がコンビニの明かりに照らされながら音を立てて倒れた。
決して自分が捨てたものではないけれど、見ないふりをするには寝覚めが悪い。いつか抱いていたかもしれない思い出せもしない罪悪感の主張に従って拾った空き缶をやたらと詰まったゴミ箱に押し込む。
「ボランティア活動とか、そりゃできないわけだ」
これだけのことで良いことをしたと満たされる心を仰ぎ、苦笑いが漏れる。
いつかここで笑っていた友人の幸福と、今一人残る寂寥を吐き出して、それが白く曇らないことに微かな満足感を覚えた。