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夏雲と言うらしい。塊のような、立体感を持った手の届かない雲を見上げる。
言葉にしてこなかっただけで、ずっとそこにあったもの。夏と言えば真っ先に思い浮かぶ癖に、そこに名前つけようとしなかったし探そうとも思ってなかった。同時に眺めることしかできない、関わることのできないものでもある。
夏を隅から隅まで厭うほどではないが人並みに暑さは嫌いだ。
「腐れていても気温が下がることはないよ」
首筋にペットボトルを当てることで涼をとっていたルームメイトがフローリングから涼をとりながら悪態をつく自分を嗜める。
見た目のみっともなさはお互い様、でもないか。室内とはいえ床にはいつくばっている方がよほど異様だろう。とはいえ室内とはいえ上裸はどうかと思う、文明的な生活をしてほしい。
「エアコンという文明のないこの部屋で過ごす文明的な生活に如何ほどの意味があるんだ」
聞こえていたらしい、もっともらしいようなそうでもないような言い訳をしながら盛大にペットボトルの中身をこぼした。勘弁してくれ。