十王

十王星南が追加されました。
「最近ちょっとご無沙汰だけど石もらえてるなら引いてみるか」と引きました、出ました。
そしてコミュを読みきった結果
一番星、一番星だな・・・生徒会長・・・」
ってなった。まぎれもなく一番星だった。

事前情報を眺めて想像していたのは「理想のアイドルになるために夢見たアイドルを切り捨てた少女」だった。
アイマスである程度やり切っている議題でもあり、作中でも似たようなことを課題にしているアイドルが複数いる。だからこそ「既にその理想のアイドルとして成功している」ところを軸にするんだろうと。
まあその予想はまったく的外れとまではいかないもののしっかり外れたが。

十王星南は自身の判断に、その過去に後悔はない。
その選択を重ねて現在に至っている状況に後悔がない、というより「最善を目指して最善の地点に辿り着いた」と表現する方が正しいか。本人もまたその「最も高いところに辿り着いている自身」を目標としているから「諦めた理想像」はない。
幼いころからアイドルを見つめていて、憧れていて、初星学園という場所で誰よりアイドルに近いところで焦がれていた。だからこそ純粋にアイドルを目指している。
だからこその課題が産まれ、「既に最善を尽くしきった」ところに突き当たった課題だからこそ十王星南の足は止まってしまったのだが。

十王星南は「初星学園のトップであり、学園で最も優れたアイドル」である。
だがその初星学園トップのアイドルは「才能を最大限発揮しきった未来のないアイドル」でしかない。
当人の弁をまるきり信じるのであれば十王星南は「見たアイドルの現在の能力値と本人の資質の最大値が見える」らしい。どこまで正しいのかは一旦横に置くとしても、彼女の祖父である学園長の発言を総合するとおそらくそれはある程度の強度を持っているように思える。
曰く「十王星南は教育で生み出せる最高のアイドルだ」と。

そしてその才能を発揮しきって教育の限界にいたり、初星学園全校生徒憧れの「一番星」という場所に到達した十王星南は、自身がトップアイドルには届かないことを知った。
そして事実一番星を取った後一年弱の期間を経て尚彼女の実力は全く伸びていない。
彼女が卒業後プロデューサーへの転向をしようとしている理由がこれだ。
「能力の限界に至りこの先がないというのなら、憧れを裏切るだけになるのなら、卒業を契機に消えてなくなってしまった方が良い」
本人の発言を要約するとこうなる。
だから「自身が辿りつけないトップアイドルをこの手で生み出したい」と語る。
それだけなら或いはプロデューサーは退いたかもしれない、「そういう夢があるなら邪魔するのはな」と手を退くのも間違ってない選択だろう。
十王星南の失敗は、恐らくその先。
「夢を託すことにした」という発言、それを聞いてまずプロデューサーより自分が思ったのが「この少女は夢を諦めようとしている」であり、「十王星南はトップアイドルになりたいのか」であった。そう思ってしまったのだから、プロデューサーの言うことはひとつしかない。
「夢は自分で叶えましょう」
十王星南の物語を要約するなら、きっとこの一言になる。

アイドルとしての十王星南の抱える課題はわかってしまえばシンプルで、「正解と理想がわかってしまうからそれしか出力できない」という点にある。
正解でない十王星南を見せられないわけだな。
その結果として十王星南のファンは「十王星南は心配する必要も応援する必要もないアイドルだ」と思ってしまっている。
十王星南が一人で充分なパフォーマンスを発揮できてしまうアイドルだったから起きた悲劇とも言えるか。
そこからプロデューサーの手によって、「十王星南という少女はこういうものである」という売り出し方をされる。
「完璧ではなく、臆病なところがあり、なんならポンコツですらある十王星南」
そうして彼女は「応援されるアイドル」になった。



十王星南はアイドルに憧れた、トップアイドルに憧れた少女である。
だから十王星南は自身を憧れている初星学園の生徒たちに「トップアイドルになれない自分を憧れていてはダメだ」と思っている。だからこそそんな低い憧れな自分は跡形もなく消えてしまって誰もに新しく高い憧れを見つけてほしいと。或いは自身がトップアイドルになって確固たる憧れになるしかない。
そんな十王星南は、「応援されるアイドル」になった十王星南は、ファンの応援を受け輝いた十王星南はトップアイドルになる。
「あなたたちの目指すべき一番星は、トップアイドルはここにある」
十王星南が「私がトップアイドルになれたのはプロデューサーのおかげ」と言い、プロデューサーは「あなたが誰より努力と研鑽を積んできたからだ」と応えた。
そういう物語だ。

トップアイドルに足らぬ実力でトップアイドルと競い続ける十王星南は、これからもアイドルを続ける。
そしてその経験を持ってあなたに負けないプロデューサーになるらしい。
いつかトップアイドルに憧れた、トップアイドルになった十王星南の新しい憧れは、プロデューサーだ。



一番星は夜空で最も早くに輝く星である。
その正体は金星であり、夜空に輝く他の星と異なり恒星ではない。自ら輝くことのない地球と同じ惑星だ。
太陽の光を受けて反射して輝いて見えるのが金星、一番星とはそういう星。
自身だけで輝けず他の輝きを受けて光る星、空に輝いていても地球と同じ惑星である星。
十王星南とは紛れもなく、一番星だ。