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【トレーナー】実際に働いて気付いた日本とイギリスのスポーツ現場の違い

私はイギリスの大学でスポーツリハビリを学んだ後、イギリスのセミプロサッカーチームやテニストーナメントでスポーツトレーナーとして活動しています。学生時代には、主にイギリスで現場実習を行いましたが、日本の2つのプロスポーツチームでも職務経験を積む機会がありました。

ここでは、私が実際に働く中で感じた現場の違いについてお伝えします。

1.業務の分担

最も大きな違いと感じたのは、各自の業務範囲に対する意識の違いです。

日本のチームでは、トレーナーがマネージャー(キットマン)の仕事を手伝ったり、兼任している方も見られるなど、互いに助け合う文化がありました。そのため、自分の仕事が終わっていても帰りにくい雰囲気があり、「みんなで協力して早く終わらせよう」という考えが根付いているように感じました。

一方、イギリスのチームでは、トレーナーはトレーナーの仕事、キットマンはキットマンの仕事、コーチはコーチの仕事と、役割が明確に分担されています。それぞれが責任を持って自分の仕事を全うする代わりに、他人の業務には介入しないというスタンスが一般的です。「それぞれの仕事には対価がある」という考えが根底にあり、自分の役割を果たせば問題ないという姿勢です。

また、イギリスで手伝いを申し出ると感謝されることが多いものの、あるコーチから「やりすぎると、チームがその善意に頼りすぎて人員削減を招く可能性がある。自分や他人を守るためにも適度に止めておくべきだ」と助言を受けたことがあります。仕事に余裕があることで、選手への対応や細かな作業を丁寧に行えるという考え方も根付いています。

ただ、日本でのアルバイトやインターンシップを経験した私にとっては、他の人が働いている中で何もしない状態は申し訳なく感じ、適度な加減を見極めるのが難しいと感じることがあります。

2.マッサージ

スポーツチームではどの国でも選手ケアとしてマッサージが行われますが、その手法に違いがあります。

日本では、あん摩マッサージ指圧師の資格を持つ方が多く、服を着たまま行う指圧マッサージや鍼灸、カッピングなどが一般的です。一方で、イギリスでは基本的にオイルを使ったスポーツマッサージが主流です。この手法はスウェーデン式マッサージを基にしており、試合の前後でもオイルを使用します。オイルを使わない施術としては、マニュアルセラピーやモビライゼーションが挙げられます。鍼灸については、イギリスでは資格制度の関係でトレーナーと鍼灸師を兼業しているケースはあまり見られません。

3.男女比

イギリスでは、国籍や性別など本人が変えられない属性を採用基準としないため、メディカルチームの男女比は比較的均等です。試合前後に相手チームのメディカルスタッフと挨拶をするたび、男女比がほぼ半々であることに驚きました。女子チームでさえも男女比が偏っている印象はありません。

一方、日本ではトレーナー職は男性が多く、女子チームでさえ男性トレーナーが主流です。女性トレーナーがニュースになることもあり、イギリスとは雇用に対する意識が異なると感じます。これには文化や育成環境の違いが大きく影響していると思います。日本のアカデミーでは男性コーチやトレーナーが中心であり、接骨院などでも男性の施術者が多いため、選手にとって安心感があるのは当然です。そのため、チームが男性を優先して雇うのは合理的とも言えます。

ただ、イギリスでは多様性が求められている現代でわざと均等にしている可能性も少なくはありません。イギリスのサッカーのインタビューでは、白人ばかりではなく他の人種にもフォーカスするようにインタビュアー側が意識しているそうです。


4.理学療法士の立ち位置

日本では、以下の職種がスポーツチームで働くスタッフとして一般的です:

  • ドクター

  • アスレチックトレーナー

  • 理学療法士

ドクターがいればドクターがヘッドメディカルとなり、いない場合はアスレチックトレーナーや理学療法士がヘッドトレーナーを務めることが多いです。

一方、イギリスでは資格によってスタッフのランクが暗黙のうちに分けられています。職種としては以下が挙げられます:

  • ドクター

  • 理学療法士(フィジオセラピスト)

  • スポーツリハビリ士

  • スポーツセラピスト

ドクターが最上位である点は共通していますが、その次に位置づけられるのは理学療法士です。スポーツチームの求人では理学療法士のポジションが圧倒的に多く、スポーツリハビリ士やセラピストより上位と見なされる傾向があります。

豊富な経験を持つスポーツセラピストがヘッドトレーナーになる可能性もありますが、現状では理学療法士が多いのが実情です。


皆さんはイギリスの現場についてどう思いますか?
コメントお待ちしております。

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