ポークカレーに入れちゃダメなもの|スリランカカレーの不思議
あちらこちらで桜が開花し、まさに春爛漫。
心浮き立つ季節のはずが、わたしは春の日差しを浴びる間も惜しみ、休日もほぼお篭り。
何をしてるかですって?
はい、もちろんスリランカカレーづくりに勤しんでおります!
ポークカレーの不思議
このところ、訳あって試作を繰り返す毎日。
今まで気に入って作り続けてきた料理の、スパイスの種類や配合量を変えてブラッシュアップを試みたり、食材を旬のものに置き換えて新たに構成したり。
そんな中、週末久しぶりに作ったのがポークカレー。
初めてのスリランカ料理修行から帰国後、教わったことをやってみるぞと意気込んで最初に作ったカレー。わたしにとって思い出深い一品です。
実はこのスリランカのポークカレー、ちょっと不思議なルールがあります。
写真)現地では「ポークカレーはスープなしで」と教わりました
これまでスリランカカレーの特徴として「ココナッツを多用します!」と散々書いてきました。肉や魚、野菜や豆のカレー、つまりどんなカレーだってココナッツミルクで軽く煮込むのはいたってポピュラーな作り方。
でも…ポークカレーは違うんです。ポークカレーだけは。
ポークカレーに入れない理由
「ポークカレーに、ココナッツミルクは入れません!」
最初の料理修行を含めて、スリランカで料理を教わったあちこちでこう言われました。
「ふーん、そうなんだぁ」と思いながら、でも本当は入れるバージョンもあるんじゃないの?と半信半疑な思いも抱きつつ。今まできちんと調べていませんでした。
ということで。
ちょうど良い機会です。眠い目を擦りながら、現地で買ってきた料理本を片っ端から繰ってみました。
…ふむふむ。どの本のレシピでもココナッツミルクは使われていません。ゴラカやタマリンドを使い、酸味のある味わいに仕上げる作り方の紹介が多い。
真相は、いかに
さて。ではなぜポークカレーにはココナッツミルクを入れないのか。
ある料理本の一節に、豚肉を調理する際の注意事項としてこんな記述を発見しました。
Coconut milk if used is reduced and the 2nd and 3rd extracts are preferred as this reduces the fat content in the cooked curry.
ココナッツミルクを使う場合は減らし、2番目と3番目の絞り汁(※)を使うと、調理したカレーの脂肪分を減らすことができるので好ましい。
※スリランカではココナッツの絞り汁を一番絞り、二番絞りと使い分けます。もちろん一番絞りの方が濃厚
なるほど。脂肪分は体によくない、ということですね。確かにスリランカでは、豚肉に限らず肉の脂肪部分は極力削ぎ取ってから料理に使います。
ここでまた、料理を教わった際伝えられた言葉を思い出しました。
「豚肉は体を冷やすから、スリランカでは頻繁に食べない=食べてはダメ」
肉類自体は全般的に体を温める食材ですが、豚肉や馬肉に限っては体を冷やす作用が高いそう。先述の脂肪部分を取り除くのも、これまでは傷みやすい部分だからと思い込んでいましたが(スリランカでは冷蔵庫の普及率はまだ低い)、脂肪が体を冷やす傾向にあることも理由として挙げられるかもしれません。
そして、ココナッツも冷やす性質を持つ食材です。
つまり、体を冷やす性質の食材(豚肉とココナッツミルク)同士を合わせるのがNGと考えると辻褄が合う!さすが5000年の伝承医学アーユルヴェーダの国。
探究はつづく
とはいえ、好奇心旺盛なわたし。体への作用はともかく味としてはどうなの?ということで、パリップ(豆カレー)を作って少し残っていたココナッツミルクとポークカレーをドッキング!
結果は…うーん、もちろん美味しいのですが、いつもゴラカやブラックペッパーを効かせた味に慣れているせいか少し物足りなくも感じます。
見てくれも…これはまるでスリランカカレーじゃない!(笑)
今日の内容は少々マニアックな考察に偏ってしまいましたが、今回の試作ではポークカレーの特徴のひとつ=「汁気がない」を「少しだけスープを残した形」にしたいなという目的も抱いていました。さてさて、どのようになるでしょうか。
何はともあれ、スリランカカレーで美味しく、そして「心と体も元気に」が一番。サライラサイのスリランカカレー、進化させますよ^_^
ある日の試作、あれこれ。
スリランカの生活と切っても切れないココナッツはこちらで。
近頃登場機会の多いゴラカはこちらで。