
どこまで混ぜるのがホント!?|スリランカカレーの問題
どこまで混ぜるか問題
スリランカカレーの特徴に「混ぜて楽しむ」ということが挙げられます。
確かに、それはその通り。
辛いカレーとマイルドなカレーを混ぜたり、ライスとカレー、ライスと副菜を混ぜたりと、組み合わせはさまざま。
しかし、この「混ぜる」という行為。
思うに、最近ちょっと誤解されていると思うのです。
「スリランカカレー」を検索すると、「混ぜまくって食べる」「豪快に混ぜる」「混ぜるほどうまい」「とにかく混ぜて」など、「混ぜる」推しワードがずらり。
でも。
混ぜるは混ぜるでも、ちょっと違うんですよね。
素材ごとの味が、台無し
ある時某テレビ番組で、もうそれぞれの料理の原型がわからないくらいグチャ混ぜにされたスリランカカレーを「これがスリランカカレーの特徴です」なんて紹介されていて、少々がっかりしました。
スリランカカレーは、素材ごとにひとつひとつ作ります。チキンならチキン、マグロならマグロ。カボチャならカボチャ。素材の味を引き出すように、スパイスやハーブ、ココナッツミルクなどを巧みに使い分けて作ります。
そうして完成したライス&カレーは、五味―酸味、苦味、甘味、辛味、塩味などの複数の味が幾重にも重なりあい、複雑な味わいを醸し出します。これこそが、スリランカカレーの真骨頂。
それを全部グチャグチャに混ぜてしまっては、もう五味を味わうレベルなどではありません。どれだけ種類があっても、全部ひとつの味ですよね。
ならば、最初からごった煮にしちゃえーって思ってしまうのは、わたしだけではないはず。
作り手に感謝を込めて
作る過程も一つひとつはシンプルであっても、複数の種類のカレーや副菜を作るには、トータルでとても時間がかかります。作り手は一品ずつ味を完結させて作っているので、感謝しつつそれぞれをちゃんと味わいたいと思うのです。
ちなみに、スリランカのローカル食堂に入っても全部グチャ混ぜにしている人はほとんど見かけたことがありません。現地の方に聞いても「そこまでは混ぜないよ」と言われます。うーん、ちょっとお行儀が悪いですよね。
日本のスリランカ料理店でもグチャ混ぜ推奨店もありますし、食べ方は人それぞれ好みの問題ですから、究極は好きなように食べればいいと思います。
でも、それがスリランカカレーの「食べ方の王道」「食事のマナー」と言われると、やはり異議を唱えたくなります。それが普通とまかり通るのは、いささか悲しい。
五感が喜ぶ、口福の一皿
結論を言うと、全部を一気に混ぜて食べるのはちょっぴりマナー違反かと。
まずは、それぞれ単体の個性を味わって。
基本はライスとカレー、ライスと副菜を混ぜて。次にお隣同士のカレーを少し混ぜて。次はちょっと離れたところのカレーと副菜を混ぜて。
必然の出会いのハーモニーを楽しみましょう♪
人は五感が働く生き物です。食事においても、それを感じながらいただく。
心と体が健康である証だと思います。
五感が喜ぶ料理。五感で五味を味わう。これぞ、スリランカカレーの魅力。
口福の一皿は、「ほどほどに」混ぜてお楽しみを。