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アレクサンダー・テクニーク教師が「フォーム」や「型」の話をきらう理由

アレクサンダー・テクニーク教師を代表するような発言ですみません。
私が、好きじゃないんです、「型」。
ですが、きらっているとは言わないまでも、アレクサンダー・テクニークは動きとともにあるメソッドなので、本質的にこれらと対局の方向にあるというのは教師の多くが認めるところだと思います。

アレクサンダー・テクニークを学ぶ過程で、世の中の動作に関する教えの多くが、型を提示するやり方であることに疑問と気持ち悪さを持っていました。
スポーツ・ヨガ・瞑想・ダンス・演奏・姿勢・肩こり etc…
「フォーム」「型」は初心者にも玄人にも分かりやすく伝わる一方、弊害も大きいのでは、という理由を、以下に考えていきたいと思います。

・フォームの「改善」はパフォーマンスを良くする


まず、フォーム改善はパフォーマンスの改善に貢献します。このベクトルにおいては、型をつくることは「正」といえます。
目指す結果・パフォーマンスに対して非効率・不要なフォームでのぞんでいたなら、その点の改善ができるなら当然パフォーマンスも改善されるでしょう。

・フォームそれ自体には「固定」の弊害があり得る


しかし、「フォーム」「型」を求めることで起こる弊害があります。
「保持」「固定」の意図が働く、ということです。

どうも人というのは、フォームの話になった途端、その形にはめたまま固定しようとする思考が出てきがちです。
初心者の場合は断片的な視覚情報と言葉が主な原因だと思います。
そして玄人になればなるほど、個人の感覚が固定に影響する可能性が高いです。

もう少し詳しく考えてみましょう。

・フォームの罠にはまる(初心者編)


例えばSNSや動画で見た筋トレをしてみよう!という状況について考えてみます。
動きの断片である写真の解釈や、解説の言葉のイメージをもとにフォームをつくっていくことになると思いますが、指導者の本来の意図と合致しているかの検証が初心者には難しいです。
分かりやすい見た目・平易な言葉であるほど、逆に解釈の余白が大きく、初心者である個々人の思いこみや身体的限界に左右されがちではないでしょうか。
見たのが動画であっても、初心者は動きの本質の見定め・自分の動きの認識が甘いものですが、検証ができないまま「正しい」と思いこんで記憶した情報の枠におさめた「正しくない(かもしれない)」フォーム作りをしている可能性が高いです。
そして検証ができないがゆえに、あやふやな「正しい」を目指して思いこみの型に身体をはめ、フォームを固定することが目的になりがちです。
なぜなら、本質的なねらいや動きのポイントが分かりづらく、ゆえに分かりやすい型を独自に作ってはめていこうとするからです。
(「骨盤を立てる」「複式呼吸」「巻き肩」などの呼び方へのこだわりも同じ)

・フォームの罠にはまる(玄人編)


対して玄人は経験上、素人より知識としても体感としても情報を多く持っています。
それがうまくパフォーマンスにつながっている場合は問題ありません。
問題なのは、経験の積み重ねの過程で「フォーム」と「感覚」の繋がりが強まっており、パフォーマンスが出せていないにも関わらず感覚的に慣れた「フォームをつくること」を重視したり、新しい知見を得ても感覚的に見慣れた・やり慣れた方に補正してインプットしたりすることです。
結果の客観的な検証よりも、無自覚に慣れた感覚に近づけて、結果的に過去のフォームをより強固に固定していく可能性すらあります。
(スポーツ選手などがビデオで検証をするのは、感覚による動き・フォームの思いこみを避ける意味もあると思います)

フォームはつまり、不正確な見た目判断・感覚にとらわれがちなので、はめようとすればするほど結果が伴わない可能性を大いにはらんでいます。

・「フォーム」「型」自体の罠


そもそも、万人にフィットするフォームは存在しません。
身体の構造・筋肉のつきかた・動きに対する感覚がまさに千差万別だからです。
千差万別ゆえに、個々人の理解したフォームが目的のパフォーマンスに合っている保証もないわけです。
(指導者の身体的な構造・動きへの理解が甘い場合、個別指導であっても指導者の感覚を生徒さんに当てはめてしまい、フィットしない可能性が残ります)

・筋肉からの解説


フォーム・型をつくる、という状態について、筋肉の面から見てみましょう。

例えば肘を曲げる、など、身体を動かしてある状態にするには、脳の指令に従って筋肉が働くことが必要です。
そしてあるフォームを保持・固定しようとすると、メインで働く筋肉(主動筋)とともに、反対側ではバランスをとり固定するための対抗する筋肉(拮抗筋)が関与してきます。
つまり、あるフォームを保とうとすることは、動作のための筋肉と対等の動きを止めるための筋肉が働き、両者の緊張が続いている状態と言えそうです。

・固定は必要?


そもそも人が生きている限り、完全に止まる(固定する)ことはできません。
心臓が動き、血が巡り、筋肉が働いたり休んだりし、内臓が動き、一瞬たりとも同じ状態を保っていないからです。
その観点からも、パフォーマンスとは「動き続けること」であり、動き続けるには筋肉が拮抗し続けていてはまずいのです。
たとえ一時的に止まったり停止しているように見えても、あくまでそれは、動き続ける中で起きていることです。
そして保持・固定のための筋肉が働き続けることは、動いていれば使わなくていい筋肉を収縮させ続けることなので、痛み・けがの原因となり得ます。
拮抗させる必要がないものを拮抗させているのであれば、エネルギー的にも無駄がありますね。

見た目や言葉のイメージ、感覚への検証なしに、一定のフォームを目指すことはリスクを伴います。
固定するより動き続けること、型にこだわるより構造的な意図を学ぶこと、などをうまく組み合わせて使い、建設的で安全なパフォーマンスにつなげていきたいなと日々思っています。

#コラム #アレクサンダーテクニーク #ヨガ #スポーツ #パフォーマンス

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