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歌えるよ、きっと。「響空の言祝」

 今月は「響空の言祝(きょうくうのことほぎ)」という作品を紹介します。この時期の澄んだ青空みたいな、からっと晴れあがった気持ちになれるお話。


あらすじ


歌によって命あるものを癒す歌鳥の民の少女・ハフリは、内気な性格と音痴ゆえの劣等感に苛まれていた。
人目を避け、森外れの樹のもとで過ごす彼女の前に現れたのは、翼持つ金色の獣を従えた少年・ソラト。導かれるように彼の手を取り、ハフリは草原の彼方へと旅立つ。
しかし彼の故郷は火山灰の汚染によって存亡の危機に立たされていた——

空と草原の青春ファンタジー。少年少女の成長譚。本編完結済。

                ——作者さまあらすじより


レビュー


 このお話について語るときにまず外せないのは、「やさしい」ということだと思う。何回でも言いますが、とにかくやさしいお話です。
 もちろん、語り口がやわらかなこと、登場人物全員が優しいことも理由のひとつですが、短所から逃げず、そのまま受けとめられるような強さが作品にあるからだとも思います。人には誰だって欠点があって、完璧な超人なんて存在しえないわけですが、そんな欠点を見過ごすのではなく、憎むわけでもなく、しっかりと見据えていけるような話の運びがすごく好き。人の良いところだけを描くのではなく、良くないようなところもていねいに描かれているのがすごいなと思います。どうしようもない自分を許すことができるような気持ちになりますし、でもただ真綿でくるんでくれるような安易なやさしさではないところに、心の底まですくいあげてくれるような気がします。

 あとは主人公のハフリが森から飛びだして、ソラトと一緒に世界を知っていく過程のキラキラさ……! 
 歌の歌えないハフリは歌鳥の民たちが暮らす森のなかで生きづらさを抱えていて、言わば全てが灰色に見えているような状態なんです。けれど、ソラトと森を飛びだして一緒に見る世界は、本当に美しく色づいていて、きらめいて見えて、ふわーっと明るくなるようなところが本当に好きです。あぁ、見渡してみればこんなにまわりはきれいなんだな、と。

 それとこの子たちが読んでてとっても可愛くて……。
 まず、後日譚で読むソラト視点のハフリがめちゃくちゃ可愛くて心臓が止まりそうになります。本編も可愛いけどソラトから見るともっと破壊力があるよね。ハフリ……なんでこんなに可愛いんだろう。見た目も勿論なんですが、彼女のまっすぐさや無防備さ、素直さがすごいかわいいんです(可愛いしか言葉が出てこない)。
 ソラトは可愛い、とは私はあまりなりませんが笑、ツムギとスオウのお二人さんも見ていて可愛い。この二人のお話は現在「青藍と赤藍」として更新されているので、こちらもぜひ!

 やわらかでしなやかな強さをもった、泣きたくなるくらいやさしいお話です。寒さで心が凍えそうな日にどうぞ!


基本情報

響空の言祝 著:青嶺トウコ
本編完結済長編小説
166,566字
掲載サイト:
小説家になろう
カクヨム
アルファポリス
個人サイト コトカゼ

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