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娘と出会うまでにあったことⅢ

貴重な体験~忘れないための記録③
【感動、ちょっと生々しいお話】

一週間後の診察。
一週間前よりは冷静だったが、この一週間はきつかった。
仕事になかなか集中できず、ずっとぽかんとしてた。
何をするにも力が入らなかった。家に帰るとずっと泣いてた。
救ってくれる神様なんかいてない!と自暴自棄やった。

無意識に、「流産後の妊活」でネット検索している自分がいる。今回のことで傷ついてるはずやのに、次のことを考えてしまう。自分の年齢は大丈夫なのか、不妊治療はまたどれくらい続くのか。余計な不安で押しつぶされそうやった。

せっかくできた赤ちゃんに対して申し訳ないという気持ちの余裕すらなかった。

診察で再確認・・
やっぱり心拍は確認できなかった。
ヤブ医者を期待したのに、そうではなかった。
次回の予約をする。
一週間後の診察までに、お腹の赤ちゃんがそのままやったら、手術で取り出すことになる。
手術の日程は月曜日。
即座に頭の中で仕事の調整をする。
自分の身体が機械的に動いてた。

出血は少しずつあったが、先生が言う、腹痛はなかなか来なかった。普通に出勤する日々が続く。普通に過ごすしかなかった。

二週連続で台風が週末に来てた。
日曜日の夜、外は暴風雨。まさに嵐の中。
その腹痛はやってきた。
痛い、これが先生が言ってた腹痛か?
生理の重い感じの痛さ、鈍痛というのかな。
その鈍い痛みは徐々に激しくなってくる。
痛み止めを飲むが効かない。
一人苦しむ。夫が背中をさすってくれる。
気を失った状態で朝を迎えた。
起きたらパジャマが血で濡れていた。
出血の量は多く、シーツまで染みついている。
トイレへ駆け込む。
先生が言ってた「カタマリ」が出てきた。
思わずそれを手ですくった。
この中に我が子がいてるのか。
とりあえずティッシュでくるんだ。

痛みは落ち着いていたので、仕事に出た。
昨日の台風とは打って変わり、今日はまさに晴天。
気持ちも何故か晴れやかやった。

が、しかし。
腹痛はその日の夜にもやってきた。
昨日来たのに?なんで?
これはきっと、違う腹痛やわ。
そういえば、便秘気味やった。
きっと便が出たら、この痛みは落ち着くはずと言い聞かせた。

ただ、その腹痛はなかなか落ち着いてくれない。
なんでやろ。トイレを行ったり来たりする。
早く出てくれと心の中で叫ぶ。
その叫び声は次第に心だけでは収まらなくなった。
一人もがき苦しむ横で夫も心配してくれて背中をさすってくれる。次第にさすられることすら不快になってくる。私に触れるな、先に寝てくれ、という心境にまでなる。横になっても、立っても座ってもマシにならない。身体をずっとゆすってた。

クソーっ!!!
いろんな思いが重なり合う。

痛みを通り越して、苦しみというか、
鈍痛で激痛の絶頂の時に、
ドバっと何かアッタカイモノが出た。

慌ててトイレへ駆け込む。
前日よりもグロテスクなものが出てきた。
驚愕する。気絶寸前。
その気絶を押しとどめたのが、、

そのグロテスクなもの(つまり胎盤)に繋がった
3㎝にも満たない『ちっちゃい赤ちゃん』やった。
細いへその緒でつながってた。

深夜に大声で叫ぶ。しかもトイレで。
無意識に夫を呼ぶ。

先に寝てくれと妻に言われた夫は、
隣でハァハァ苦しむ私をほっといて寝るにも寝れない。
私がトイレに入ったり出たり、私が出てくる度に「出た?(もちろんその時は便と思い込んでた)」と確認してくれてた。

それが、便じゃなかった。

なんかすごいものを見てしまった。
小さくても、目がついてて、手足がピョコっとついてる。

かわいい・・・

生まれたその日にはすでに心臓は動いてなかったけど、
心の底から、素直にかわいいと思ってしまった。
すごい神秘。不思議な感覚やった。

夫も何故かフラフラの状態で駆け寄る。
しばらくの間、二人でじっと見つめた。
大事に大切にくるんだ。
その時は、写真を撮ることすら思いつかなかった。
ちっちゃい赤ちゃんは、振り返った今でも、鮮やかに思い出す。

血の海と化したトイレ…
夫はそれを見てフラフラやった。

壮絶な時間を過ごした後、疲れが一気に出てそのまま深い眠りに入った。

翌朝、早朝に起きる。
睡眠時間は短かったけど、身体はスッキリしてた。
奮闘した後のトイレは改めて見るとすごかった。

その日はトイレ掃除から始まった。
シーツも洗濯した。
いい天気。

ちっちゃい赤ちゃんが自然に出てきてくれた。
現実的には、自然流産。
でも手術をせずに済んだから有り難かった。

赤ちゃんが出てきてくれた翌日が、
まさに私たち二人の入籍記念日やった。
結婚して丸3年を迎えた時、
ちっちゃい赤ちゃんが生まれて、逝った。

なんか不思議。
ほんの一瞬でも父と母になることができて幸せやった。

何もかもが新しい気持ちで、
入籍記念日の日に、そのちっちゃい赤ちゃんとお別れした。
気持ちはやっぱり晴々してる。

『有り難い』まさにその思いを深く感じる。

これから先、どんなことが起こるかわからない。でもこのことは伝えたい。本当に貴重な出来事。

奇跡的な体験で、一つ私は成長できたかな。
いつまでもメソメソする私たちに活を入れられたような気がする。そして、前を進むことに背中を押されたような気がする。

ほんまにありがとう。
今は、ただそれだけ。

…ひとまず、おわり。
      いつかまた、つづく。

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