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日常生活でもPDCAサイクルを活用中!失敗も成功も次に活かすのは面白い!

森さんは2012年に千秋庵製菓に入社し、店舗管理の仕事に従事した後、2019年に設立された物流業務課で、販売経験を活かし発注管理、生産管理、流通体制の改善に貢献しています。今回の【一日千秋】で、森さんのこれまでの歩み、現在の活動、プライベートについて、幅広くお話を伺いました。

森 義治郎(もり よしじろう)
出身地 北海道札幌市
1994(平成6)年 大手家電量販店 札幌店入社 家電事業部 販売職 
退職後、東京都内で流通、整備関係に従事。札幌に戻りホビーショップの販売職を経て、
2012(平成24)年 千秋庵製菓株式会社入社 売店課 店舗管理
2015(平成27)年 千秋庵製菓 売店課主任
2016(平成28)年 千秋庵製菓 売店課係長
2019(令和1)年 千秋庵製菓 物流業務課 課長代理
2020(令和2)年 千秋庵製菓 物流業務課 課長(現職)


 これまでの道のり

― 森さんのご経歴についてお伺いします

森:私はこれまで、たくさんの仕事を経験してきました。
簿記の専門学校を卒業後、その知識を活かした経理職を探しましたが、なかなか合う仕事に出会えず、札幌で新規オープンした家電量販店の販売職に応募しました。販売職であれば簿記の知識が役立つと感じたのです。家電事業部で働き、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の販売を担当しました。
その後、千葉で新しい店舗のオープンに伴って上京し、続いて神奈川での店舗開設にも携わり、7年間勤務しました。当時は地元の電気店と大手家電量販店が市場シェアを巡って激しい競争をしていた時代。残業は日常的で、月に120時間にも及び、より充実したプライベートを求めて転職を決意したんです。
家電量販店を辞めた後、派遣社員として東京の大手物流センター、通販会社の工場ライン、航空機の整備工場などで働き、多岐にわたる仕事を経験しました。30歳を目前にして、将来を考えて地元に戻る決心をしました。これまでの経験を活かして、販売業に携わりたいと考えていました。

 千秋庵製菓に入社したきっかけは?

森:札幌に戻って、全国に店舗展開をしているホビーショップで販売の仕事を始めました。新店舗のオープニングスタッフとして採用されましたが、資金繰りの問題などで会社が倒産してしまいました。その後、新しい仕事を探し始め、条件を絞り込んだ結果、千秋庵製菓の販売職に出会いました。
 
千秋庵製菓への応募理由は、これまでの販売経験を活かせると感じたからです。その名前は昔から知っていましたが、2012年(平成24年)に入社した時は、かなり規模が縮小していると感じました。
「山親爺のCMで有名な千秋庵か…最近あまり耳にしないが、営業を続けていたのか…」というのが正直な印象でしたね。
地元で名高い老舗で、かつては売上も高かったのですが、現在は減少しています。何らかの原因があると思い、改善すれば再建が可能なのではないか…その改善に少しでも貢献したいと考え、入社を決めました。

千秋庵製菓での歩み

― 入社後のギャップはありましたか?

森:入社後は売店課(現:店舗運営部)に配属されました。当時、札幌千秋庵には季節商品も含めて約600種類ものアイテムがありましたが、実際に製造して供給できていたのは約200種類だけでした。一つを作ると他は作れず、店頭に置く商品が不足するという状況が続いていました。

 「もっと商品を供給すれば売れるのに…」と、当時の私は感じていました。お客様が求める商品を提供できず、それが売上が伸びない原因なのではないかと感じていました。

― 森さんは、会社の再建に貢献したいと入社されましたが、実際には歯がゆい思いをされたのですね…

森:「返品率を下げること」と「返品率が高い状態でも在庫切れを起こさないこと」は相反する戦略で、それぞれに利点と欠点がありますが、当時の会社は「返品率を下げること」を優先していました。
しかし、「買いたい!」というお客様がご来店してくださっている以上、私は在庫切れを起こさないことが重要だと考えていました。

商売はお客様がいてこそ成り立ちます。自分たちが店に行ったときに欲しい商品がなければ、再び訪れることはありません。しかし、商品が不足しているにも関わらず営業を続けられていたのは、老舗を信じる熱心なお客様が支えてくれていたからです。あらめて感謝の気持ちが湧いてきます。

2010年頃の札幌千秋庵本店外観

― そのような状況の中、どのような取り組みをされましたか?

森:私が以前勤めていた家電量販店では、商品をフルラインで展示し、来店されるお客様に積極的に販売する手法を採用していました。売れ筋商品だけでなく、販売量が少ないニッチな製品も取り扱うことでターゲット顧客層を拡大し、売上を増加させるいわゆるロングテール戦略を採用していました。この戦略を踏まえ、私が最初に取り組んだのは季節商品の販売促進でした。

「子どもの日」の催事で、前年比130%で「柏餅」の商品供給を提案したところ、上司は「そんなに増やせば余る」と反対しました。しかし、私は自信を持って、「絶対に売れます。実行させてください!」と主張し、実際にほぼ完売という結果が出ました。

「クリスマスケーキ」は当時、いくつかのサイズを展開しており、24cmサイズが毎年余っていました。そのため、製造中止を検討していたのですが、「この商品があるからこそ、他の商品が売れるのです。お客様は他のサイズや価格、量と比較して購入されます」と説得し、さらに量を1.2倍に増やして販売したところ、結果としてやはり売れました。ニッチな商品を置くことで、お客様に選択肢を提供し、それが成果につながりました。

商売の基本は、相手の利益を最優先に考えることです。それを忠実に実行すれば、商品は売れます。商品が残ることを過度に心配し、製造を停止したり、製造数を減らすと、売上は確実に減少します。

「返品率を下げる」という方針のもと、縮小された製造体制で、私たちはできる限りのことに全力を尽くしていたことを覚えています。

2016年度札幌千秋庵のクリスマスケーキ・サイズ展開
(右:バタークリーム、左:チョコクリーム)

現在の仕事について

― 現在のお仕事を教えてください

森:私は現在、物流業務課に所属し、チームメンバーの作業管理を行いつつ、製造管理在庫管理を主に担当しています。直営店や取引先からの注文を集計し、製造指示を出すことも私の仕事です。「〇日にこれを製造するための準備をしてください」と製造者に伝えます。原材料の調達から製造、在庫、物流に至るまで、商品が市場に出るまでの全過程を効率的に管理し、必要な時に必要な量だけを供給することを目標に取り組んでいます。

― 販売から「物流業務課」へと異動された時の心境を伺えますか?

森:突然、上司から「物流業務課を新設するので、分析が得意な森さん、よろしく!」と頼まれました(笑)。

― それは、いきなりでしたね…

森:ええ…まぁ…(笑)、驚きましたね。
私は販売の仕事をしていたので、「どのタイミングでどの商品が必要か」を分析し、把握していた、といった経緯でその業務を担当することになりました。最初は店舗の発注管理を担当し、その後、工場の製造数の管理も行うようになりましたね。
実は、売店課として販売業務を進める中で、売上減少の原因の一つに商品供給の不調があると感じていました。
以前は個々の担当者が商品製造を行っており、注文量に応じた人員配置や製造体制が整っていませんでした。そのため、商品の欠品は避けられず、次の供給も間に合わず、店頭に商品を並べることができない状況が続いていたのです。
原因は工場全体には人員がいるものの、製造現場には人手が足りていないことです。解決策は単純で、製造現場に必要な人員を配置することでした。しかし、当時の体制では、必要な人員を適切な場所に配置することが課題でした。解決策として、商品の発注管理を行う物流業務課が新設され、私がその責任者に指名されたのです。

― 現在の取り組みについて教えてください

森:私が取り組んいることは「製造数とスケジュール管理」「在庫管理」です。
「製造数とスケジュール管理」ですが、工場には製造能力の限界があります。製造の限界を把握し、納期に間に合わせるための予測を立て、計画を策定し、各製造現場に指示を出します。
「この数量がこの日に必要です。製造方法はお任せしますが、このスケジュールで準備が間に合うようにしてください。過剰在庫を避けるための製造体制を取ってください」と指示します。
もし製造現場から「このスケジュールでは人手が足りず製造できません」との回答があれば、製造日を調整するか、他の製造現場から人員を集めて体制を整えます。上司、各製造現場の職長と協議を重ね、協力体制を築きます。

「在庫管理」ですが、特に、外部取引先からの注文は納期を厳守することが大切です。納期を基に製造計画を立てますが、様々な事情で注文が予定通りに入らず、計画が狂うこともあります。その場合は、初期の計画を見直し、製造体制を都度調整します。
たとえば、箱詰め商品の注文を受けると、品揃えや箱の準備など、作業には時間が必要です。予測をもとに進めると、発注数が予測を下回ったり、逆に超えてしまい商品不足になるリスクがあります。また、賞味期限を考慮し、場合によっては製造を最初からやり直さなければならないこともあります。

過剰在庫を避けつつ余剰在庫を保持するには、正確な販売計画に基づく発注計画の精度を高めることが重要です。これには、取引先との丁寧なコミュニケーションが求められ、営業担当者との連携が欠かせません。

― さまざまな関係部署との連携が重要なお仕事だと感じますが、協力を上手に引き出す秘訣は?

森:現在、製造と販売のミーティングを通じて、販売側の「希望販売数」に基づいた製造計画を策定し、在庫管理を行うなど、以前の「返品率を下げる」ことに重点を置いた体制から大きく変化を遂げています。

製造計画や人員配置は一人では不可能ですから、私は、ただ粛々とお願いするだけです。「この時期にはこのような注文が入ります。その際、これらの商品の製造が重複しますが、対応可能でしょうか?」と相談しながら、製造部門の責任者や上司の支援を受けていますね。

現場の職長たちも協力的です。可能な範囲と限界を共有し、「ここは互いに助け合いましょう」「何かあったら頼みます」と協力して進めています。
愚痴や不満も多少ありますが、それも聞きつつ、互いに支え合いながら、「大変だね」「お互い、いろいろあるけど、何とかしましょう」と励まし合いながら進む…といった感じですね。

各製造現場の職長に製造工程の変更を依頼
お互いの合意で計画を再度調整する

仕事への姿勢、やりがい

― 日々の仕事でのこだわりや、大切にしていることはありますか?

森:仕事をする上で「目的を明確にする」ことです。なぜその仕事をしているのかを理解し、その理由に基づいて作業を進めることを大切にしています。
物流チームにもこの点を強調しています。目的を持たずに仕事をすると、結果も漠然とします。「なぜこの作業が必要なのか、なぜ今すぐにそれをしなければならないのか」を常に自問自答してほしいのです。
明確な理由があると、仕事の意義が見え、その仕事を最優先すべきかどうかの判断ができるようになり、仕事の優先順位が自然と明確になります
そうしないと、日常のルーティンに追われ、本来優先すべき重要な仕事がおろそかになり、結果として仕事が滞る悪循環に陥りかねません。この考え方で仕事に取り組むことが、私の現在のモットーですね。

森:100年以上の歴史があるため、従業員の思考も歴史の一部であり、そこからの脱却、変化する過程での困難さを実感しています。
長年にわたって培われた思考パターンは容易には変わりません。物流スタッフにも伝えていますが、昨日と今日で同じ方法を続けた結果、デジタル化が遅れ、アナログの作業が多くを占め、結果として効率が低下しています。

問題意識を持ち、過去の成功に固執せず、今できる最善を尽くすことが大切です。もしダメなら元に戻せばいいし、結果が出ればそれを続ければいい。
P(Plan=計画)D(Do=実行)C(Check=評価)A(Action=改善)のサイクルを回しながら、昨日よりも今日、今日よりも明日をより良くするために、新しい挑戦を続けたいと思います
昔の人は「過去の栄光で飯は食えない」と言いましたが、私もその通りだと思います。常に柔軟な思考を持ち続けたいですね。

物流業務課は、流通に必要な資材管理も業務の一環
物流メンバーと商品出荷、積み込み作業の確認を行う
商品出荷が多いときは、積み込み作業を手伝う
商品出荷がスムーズに行われるように支援する

― 仕事の面白さや、やりがいを感じる時は?

森:販売の仕事をしていた時から感じていたことですが、自分の施策が予想通りの結果をもたらした時が最も面白いと思います。その成果が明らかになると、それがやりがいとなり、また楽しみでもあります。

話は遡りますが…。家電量販店で働いていた時、私は催事売場を任され、戦略を練ってオーブンレンジを山積みに展示し、販売しました。
上司は当初「そんなに必要ない」と反対していましたが、結果としては全て売り切れました。それを見た上司は、反対していたことを忘れたかのように「次の入荷はいつか」と尋ねてきました。「ほら…計画通りに売れたでしょ(笑)」と心の中で思いながら、自分の戦略が成功した喜びを実感していました。結果が出るとやっぱり嬉しいですね。

現在の仕事でも、自分の予測が的中し商品が市場に受け入れられるのは楽しいものです。特に今は、SNSやマスメディアの露出が増えると、注文が急増することがあり、それは期待と不安を同時に感じさせますね。

「自分の予想が計画通りに進み、結果が出た時は嬉しいものです」

これからのこと

― これから、チャレンジしたいことはありますか?

森:私たちの会社は200年に向けての道のりを歩んでいます。物流面では、自動チェック体制の導入を検討していきたいです。デジタル化を進めることで、ヒューマンエラーを防ぐことが可能になります。人的負荷をかけずに出荷作業を行えるシステムを実現したいですね。
これは、理想ですが、「昨年はこの数量で発注したため、今回も同じ数量で発注します。納品日はこの日に設定されていますので、予定通りに製造準備を進めてください」という指示に従い、製造がスムーズに進むことが望ましいですね。
現在、私はコントロールタワーの役割を果たしていますが、注文後に商品が自動で製造されるシステムが整備されれば、この役割は不要になるでしょう。その実現には時間がかかるかもしれませんが、そのような体制を構築するために挑戦し続けたいと思っています。
 
プライベートでは、家庭菜園に励んでいます。仕事と同様に、行った行動には結果が伴います。手間をかけた分だけ成果が見えるのです。もし上手くいかない時は、その原因を分析し、次の年の改善に役立てます。そして、その成果を翌年に反映させる…これを繰り返しています。

― 菜園でも、トライアンドエラーを繰り返してますね

森:確かに…(笑)。私は、繰り返す過程に魅力を感じるのかもしれませんね。
たとえば、土の中に石があるとします。その石を取り除かなければ、ずっとそこに残り、土は綺麗になりません。しかし、毎年確実に石を取り除いていけば、土は徐々に綺麗になっていきます。また、落ち葉を堆肥として加えるなどして土を改善することもできます。このような作業を繰り返し、その結果として作物が元気に育つと、「試してみて良かった!」と感じます。

森さんの菜園 栗の収穫
森さんの菜園 いちごの収穫
森さんの菜園 右:にんにく、中央:ぶどう、左:すいか

森:去年の失敗や成功を次の年に活かすのは楽しいものです。結果を踏まえてどのように修正し、次にどう取り組むかを考えるのが面白いですね…まるでPDCAサイクルのようです。それが菜園での楽しみです。
野菜は環境によって変わるので、しっかりとした土作りが必要ですが、土作りは1年では完成しません。4、5年かけて育てていく必要があります。仕事の話ともつながっていますよね。

|編集後記|
森さんの現在の仕事には、様々な職務経験と販売の知識が活かされていると感じました。仕事だけでなく、個人の菜園作りにおいてもPDCAサイクルを駆使し、改善に努めていることに驚かされました。これらの経験が日々の業務に役立ち、会社のコントロールタワーとしてのさらなる成果が期待されます。引き続きどうぞよろしくお願いします。