「チ・カ・ホとまちの文化芸術活動」(3)
(3)コロナ禍のチ・カ・ホとこれからの活動
酒井:耕平くんがパフォーマンスを自分でしている時とか、観客の人とか、どういうふうに見えてます?おじさんもいると思いますけど、女性が多いなとか。
小西:性別というよりも、年代でいったらご通行されている方って、お年を召された方の方が多いかなっていう気がするのと、パフォーマンスで人が集まるのってやっぱり土日とかなんで、ファミリーか、お年を召された方か。
あと、札幌市というまち自体が女性の比率の方が多いじゃないですか。数字的に。女性の方が比率が多い&今の社会的に、男性と女性の働き方として、パートタイムの方が女性比率が多かったとしたら、お出かけして自由な時間を過ごそうとするのは、女性の方が体験を楽しむ人が多いのかなっていう気がします。
酒井:たしかに、通行している人で当然働かれていて、急ぎで目的地に向かっている人も、チ・カ・ホの大事な機能だからさ。歩行空間という機能だけど、その中で少しぶらぶら歩きしてる割合はそうかもしれないですね。キーボーの話聞いてると、そういうのに積極的になれるっていうのは時間のあるないに関わらず、女性の方が感度が高いっていう気もするよね。
今村:他のところでやるのと、客層って違うの?
小西:違いますね。特定のファンとか、その人が好きな人っていうのはどこ行ってもいるんですけど、そういう他の場所と比べると、完全に初めてこういうのを見たっていう人が多いです。
酒井:それは、チ・カ・ホのある良い部分かも。触れる機会が開かれていることが大切。目的を持たないでたまたまっていう人がいるってことでしょ?
今村:イベントとかを企画すると、関心を持っている人しか来ないんですよ。アートの展示やったら、アート関係者とか、好きな人とかファンしか来ないけど、チ・カ・ホはそこを拡張できる。だからトラブルももちろんあるけど、違うものが出会うと摩擦が起こるから。でも自分たちの価値観を拡張するには、すごく効果的な場所だと思う。
酒井:すごい。その話はもう少し深めたいね。ちょうど耕平くんの話になったんですけど、コロナになってパフォーマンスすることとお客さんとの関係とかにきっと苦労して、そもそもできないっていうことがあったと思うんですけど、チ・カ・ホで今後も継続していくとしたら、ウィズコロナの中で共存していくためにこれから考えておかないといけないことってあるのかな。
パフォーマンスイベント再開実験(2020年9月)
イベントの規制がかかる中、チ・カ・ホでイベントを再開するためにはどのような方法があるのかを検証するために実施。
小西:やっぱり、ある程度コロナを前提に付き合い続けるって考えると、結構管理をしなければならない。今まで自由にできていた部分を削って、ガチガチにルールや制限を定めたうえでイベントができるとは思うんですけど、果たしてそれが自分のやりたいことなのか?っていう疑問だったり、この場所でそれをあえてやる必要があるのか?って疑問があって。
やれるかやれないかで言ったらやれるとは思うんですけど、それってこの場所でやらねばならぬことなのかっていうと、ちょっとクエスチョンが拭えないなっていう。
酒井:さっき話題になった、目的を持たない人たちが関心を持つようなちょっとしたきっかけとか、そういうのって制約ガチガチで人数制限あるなかでって、逆行してるよね。
小西:結局、どこかの箱の中で、クローズドに近づいていっちゃったら、公共空間っていう意味というか、メリットを生かしきれないなって。
酒井:そうだよね。オープンであろうとすることを、どうしてもできなくなるなにかが返ってくるってことだよね。
今村:特に、パフォーマンスはライブであるってことも重要だから、そこが今厳しい。
酒井:それは、なかなかすぐにアイデアがでないかもしれないけど、たぶんこれからのチ・カ・ホ10年の中で新しいものをつくりあげていかなきゃいけないっていう問題意識を持っていたほうがいいかもね。
もう一つ聞きたいんだけど、投げ銭のシステムについて、本来は道路というか公共空間で直接的に表現活動している人に渡すことができないけど、うまい方法をとってるんですよね?
チカチカ☆パフォーマンススポット(2012年)
小西:それは、私が入社する前からそういうシステムであったとともに、チカチカ☆パフォーマンススポットがはじまる前から札幌市でその方式がとられているという。それは柴田さんの方が詳しいんじゃないかな…。要は、主催する団体が、一旦パフォーマーたちの受け取った投げ銭を回収して、自社の収益として計上し、それと同じ額を報酬として支払いますよ、っていう仕組みです。
管理者サイドの収益にしちゃってから支払って、パフォーマー個人個人が受け取っている訳ではないっていうふうになっているんです。そうすると、源泉徴収しますし、確定申告にも載るので、納税の義務がしっかり守られていますよっていう。
酒井:そこで公共性を担保するんだね。
小西:そんなことやってるのって、札幌市だけなんですよ。そんなって言っちゃいましたけど、他はないですよ。その地域の人に聞いたら、なにそれ?って…。
今村:それはどう思うの?
小西:全くそうだよねって(笑)。帯広市でもできるし、ほんと札幌限定なんです。
酒井:でもすごい大事なことだね。表現する人に寛容なまちだよね、ある意味ね。
小西:でもそれを課すのであればですよ、チ・カ・ホを利用してなにか手作り作品を売ってる方とか、サービスの対価でお金もらっている方全員じゃなきゃおかしいじゃないですか。投げ銭は一回回収されて、ほかの物販は適用されない。
酒井:不思議なんだよな〜。もの売っていることとしては同じだよね。
今村:値段が1,000円か100円かが分からないからなのかな?
小西:サービスって、例えばハンドトリートメントっていったってかたちがないじゃないですか。
今村:でも値札で1,000円って書いてあるじゃん。投げ銭って、値段がついてないから1万円なのか5円なのか曖昧だからダメなのかな?10万円入れる人とかいると思われてんのかな?
小西:いないいない…(笑)。
酒井:チ・カ・ホも道路だけど、憩いの空間はいいんじゃないの?
小西:ベースは道路です。
酒井:管理の仕組みが違うだけで、法律的には道路なんだね。
今村:だから、道路としての使い道とずれたり前例がないから、摩擦が起こるんですよね。
高橋:道路上での金銭授受がいけない理由ってなんですか?
酒井:簡単に言うと、道路は我々の税金で管理している場所だから、みんなのもののところで個人的な商売はNGということだよね。ほかの人の金で管理しているのに、自分だけがそこで商売するっていうのが。でも…ね、なんか釈然としないなあ(笑)。でも、相当そういうところに苦労しながらやってきたと思うけど、どうにもならないでしょ。
小西:パフォーマーとしては、やれないよりかはやれた方がありがたいので、そういうルールだったらじゃあそうしましょうかっていうので、そこに乗っかるだけですけれども。まあ面倒くさいっちゃ面倒くさいですよね。だって、小銭数えていくらでしたって言わないといけないんで。
酒井:そっか…。それも札幌ならではなのかもしれないけれど、そういうルール、道路としてのそういう縛りっていうかそういう制度なのを、使いこなさなきゃいけないってことなんだね。ありがとうございます。
★次回は、地下からエリア全体へ活動を繋げていくことについてお届けします。
チ・カ・ホ開通10周年企画座談会
「チ・カ・ホとまちの文化芸術活動」
会 場|札幌駅前通まちづくり株式会社 MEETING ROOM1
登壇者|
高橋喜代史 / キーボー(美術家/一般社団法人PROJECTAディレクター)
今村育子 / いくちゃん(札幌駅前通まちづくり株式会社/美術家)
小西耕平 / 耕平くん(札幌駅前通まちづくり株式会社/ジャグラー・コーヘイ)
モデレーター|酒井秀治(株式会社SS計画代表取締役/まちづくりプランナー)
撮影|Doppietta photo
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