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第5回口頭弁論期日報告会 2022.8.31 10:30-①弁護団からの期日報告及び原告が提出した準備書面の内容説明、②原告からのコメント、③質疑応答

会場:北海道高等学校教職員センター4階大会議室
原告:佐々木カヲル(社会福祉士)
弁護団(弁護士):加藤丈晴、須田布美子、犬塚賢護、髙橋友佑、本橋優子(司会)

司会
原告である佐々木さん作成の報告メモ1枚と札幌LGBTQ映画祭2022のチラシ1枚、そして、さっぽろレインボープライド2022公式マガジン、冊子ですね、が1冊、あれば可能。ご確認いただるかと思います。ない方いらっしゃいますか。はい、では、報告集会始めていきたいと思います。みなさま本日はお足元の悪い中、(当弁護団の)報告集会にお越しいただきましてありがとうございます。
それでは、これから本日第5回口頭弁論を行いました元道職員SOGIハラ訴訟について、報告集会を行います。進行としましては、まず、弁護団から期日報告及びこちら側が提出した準備書面の内容のご説明をいたします。次に、原告である佐々木カヲルさんからコメントや感想等をお話ししていただきます。その後、質疑応答の時間を設けております。なお、佐々木さんのお名前と顔出しは可能ですけれども、パートナーの方については、特定できる情報は全て非公開となっておりますのでご了承ください。それでは弁護団の本橋弁護士より、今回の期日報告及び準備書面の内容のご説明をいただきます。本橋先生お願いいたします。

弁護団(本橋優子弁護士)
この度は私どもの報告集会にお越しいただきましてありがとうございます。弁護士の本橋です。本日の期日報告について簡単にさせていただきます。期日では、原告が令和4年8月19日付けで提出した準備書面(3)とその要旨を、準備書面(3)の要旨の陳述をしました。法廷にいらっしゃらなかった方もいらっしゃるかと思うので、今回提出した書面の内容のご説明をさせていただきます。先ほど申し上げた要旨の陳述とかぶるところがありますので、この点はご了承ください。
今回原告が提出した準備書面(3)は、前回被告らから提出された書面の内容に対する反論です。あらためて被告らからの主張を確認します。被告らは、あくまで内縁関係は男女間の関係のみを予定する概念であって、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないとの主張に固執しています。具体的には、被告らは、これから述べます6つの理由から、原告の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないと主張しています。
まず1つ目の理由として、被告らは、同性間の関係が内縁関係に該当するとして法律上保護されるとの見解が通説的見解であるとの原告の主張が誤りであると主張しています。しかし、被告らによる学者の見解に関する主張は、学者の文献の文言の一部を拾い上げた上で恣意的な解釈をしているものにすぎません。また、被告らは、内縁保護を同性カップルに及ぼすことに否定的な学者の意見を示すことすらしていません。したがって、被告らの主張は、原告の主張を何ら揺るがすものではありません。
2つ目の理由として、被告らは、同性間の関係も内縁関係として法律上保護されることが判例上認められているとの原告の主張が誤りであると主張しています。しかし、被告らの主張は、原告が引用している同性間の関係を婚姻に準ずる関係として法律上の保護される利益を認めた東京高等裁判所の判決の極めて重要な部分を意図的に引用せず、恣意的な解釈しているものであって、原告の主張は誤りではありません。
3つ目の理由として、被告らは、学説や判例で原告の主張を裏付けるような見解があったとしても、その見解が本件各規定の解釈に影響を与えるものではないと主張しています。しかし、原告は、本件各規定の解釈に直接影響を与えることを及ぼすかどうかを争っているのではなく、あくまで複数の有力な学者や判例によっても、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様にある者」に同性パートナーも含まれるとの解釈が十分に可能であるということを主張しておりますので、被告の主張は原告に対する反論とはなっていません。
4つ目の理由として、被告らは、内縁配偶者の権利保護の歴史的経緯から、内縁法理は異性間の関係を前提としていると主張しています。しかし、内縁法理は、歴史的に、当事者が婚姻を望んでいるけれども、外部的な事情により婚姻をなし得なかった関係を保護することを目的としていたので、むしろ現行法制度上婚姻をなし得ない同性間にこそ内縁関係の法理を及ぼすべきものといえます。
5つ目の理由として、被告らは、原告が準備書面(2)で引用した重婚的内縁や近親婚的内縁についても事実婚としての保護を認める判例について、本件とは事案が違う、または男女間の関係を前提としており、むしろ同性パートナーに内縁関係は成立しない立場の判例であると主張しています。しかし、被告らの主張は、結論部分だけに着目し、自身に都合が良いように曲解した主張であって、理由がないものです。
最後に6つ目の理由として、被告らは、他の地方自治体において「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」又は「配偶者」に同性パートナーを含めている実例があるとしても、本件各規定の解釈において同性パートナーを含むものと肯定することにはならないと主張しています。しかし、憲法92条及びそれを受けた地方自治法に基づいて組織・運営された他の地方自治体でも同性パートナーを有する職員に扶養手当その他福利厚生を支給しているという事実は、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」との文言についても同性パートナーを含める解釈が可能であることを裏付けるものであって、被告の主張には無理があるものと言えます。
今まで申し上げたとおり、被告らの主張は、6つ理由をつけて述べていますけれども、いずれも根拠がないものか原告の主張を正確に捉えていないというものです。一方、学説や判例、他の自治体の運用の事実からも「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解することは十分に可能なのですから、被告らの「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないとの主張が誤りであるということは明らかです。
実際に、佐々木カヲルさんは、パートナーの方と当然に内縁と認められる程度の夫婦としての実態がありました。その部分については、お手元に配布されているメモをご覧いただくと、その実態がよりわかるかと思います。にもかかわらず、被告らは、行政機関として一般企業よりもさらに配慮を進めるべき立場にあったけれども、同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に含むことができないという誤った解釈に今でも拘泥しています。そして、合理的な理由もないのに、佐々木カヲルさんに対して扶養認定不可の決定をしました。このことは、性的指向を理由とする差別であって、憲法14条1項に違反します。したがって、被告らが主張する、佐々木カヲルさんに対して扶養認定不可等の決定をしたことに違法性がないという主張には正当性はありません。今まで述べたものが今回提出いたしました準備書面の内容となっております。
次に、次回期日についてのご連絡をさしあげます。次回期日は、令和4年11月9日10時からとなっています。令和4年11月9日10時からです。場所は札幌地方裁判所805号法廷です。また、次回期日までには、被告側が、今回、私どもが提出した準備書面(3)に対する反論をする。ということになっています。こちらとしては、今のところは具体的にどういったことを準備すべきかというところは、裁判所からは指示はされてはおりませんが、今、こちらの方でも、どういった主張、立証をしようかということは検討、引き続きしているところであります。本日の期日の報告は以上となります。

司会
本橋先生ありがとうございました。続きまして、原告の佐々木さんからコメントをいただきます。佐々木さんよろしくお願いいたします。

原告
原告の佐々木カヲルです。本日は、新型コロナウィルスはじめ、国内、国際情勢が不安定な中、私どもの裁判の傍聴、そして、この報告会にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
今日は、お配りした資料をもとにお話ししようと思っていたのですが、先日、名古屋高裁でなされた犯罪被害者給付金制度にかかる判決を受けて、いろいろ考えるところもあり、今の気持ちを率直にお伝えしたいと思います。
今回の期日については、弁護団より説明があったとおりです。被告らの主張は結論あるのみ。なんの説得力もなく、ただ、ただ、私の訴えを門前払いしようとしているように感じます。被告らは、内縁関係は男女、異性間の関係のみを予定する概念であって、「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないとの主張を繰り返すばかりです。個別の事情を検討することも、納得いく理由を説明することもありません。これは、先日、2022年8月26日に名古屋高裁でなされた犯罪被害者給付金制度にかかる判決と同じように感じます。しかし、結婚が認められていない今こそ、同性カップルの法的保護が必要です。
被告である北海道、そして国も、人権課題として「性的マイノリティ」、「性的指向及び性自認(性同一性)」を掲げています。私は、人権課題の解決については、多数派である人々、マジョリティの「理解の度合い」、「社会通念」や「社会的合意」は前提としないと考えています。また、マジョリティの理解が得られない場合、公の機関こそが、率先して制度を柔軟に解釈・運用し、民間の理解水準を高めていくことが求められると考えています。
判例においても、「府中青年の家事件」判決(東京高等裁判所平成9年9月16日判決)で指摘されているように、「(最後の部分ですけれども)行政当局としては、その職務を行うについて、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理(きめ)の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないことである」。つまり、行政機関は性的マイノリティに対し、一般企業よりもさらに配慮を進めるべき立場にあったと言えます。
しかし、現実はその逆です。民間企業の方が性的マイノリティへの配慮ははるかに進んでいます。実際に、民間企業の多くが、私とパートナーとの関係を「同性カップル」と認めてくれました。
また、日本国憲法第十一条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」、同第十三条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」、同第十四条1項には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあります。みなさんご存知のとおり、日本国憲法は「最高法規」と位置づけられています。「憲法が定めているきまりに反する法律や命令をつくることはできない」ことは学校で学びました。しかし、今、私が直面しているのは、この憲法に定められた「人権についての原理原則」を無視した現実。矛盾に満ちた現実です。
今、感じているのは、社会から拒絶されている。という絶望にも近い感情です。これが今の、率直な心情です。
裁判はこれから正念場を向かえます。みなさまには、引き続き関心をもってこの裁判を見守っていただきたいです。私からのコメントは以上です。ありがとうございます。

司会
佐々木さんありがとうございました。
それでは質疑応答にうつらせていただきます。質問される方はまず、ご所属とお名前をお答えいただきだき、それからご質問をお願いいたします。ご質問ある方いらっしゃいますでしょうか。


質疑応答(個人情報保護の観点から記載していません)
質問者
原告
弁護団(加藤丈晴弁護士)


司会
ありがとうございました。では、非常に熱量の高いご意見、ご感想をありがとうございました。お時間もまいりましたので、質疑応答は終了させていただきます。あわせて本日の記者会見(報告集会)も終了いたします。みなさまありがとうございました。
最後になりますけれども、出入口のところに、本訴訟のカンパ箱を設置しております。この度の報告集会の会場費等の費用は、現状全て原告が負担しております。こちらの訴訟を応援していただける方は是非カンパのご協力をお願いいたします。よろしくお願いします。

弁護団(本橋優子弁護士)
あと、マスコミの方にアナウンスですけれども、今回提出した準備書面(3)のマスキングしたデータについては、この報告集会終了後、私のもとにお声がけいただきましたら、そちらの方に連絡先をお聞きしてそちらの連絡先にデータをお送りしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

弁護団・原告
ありがとうございました。


<配付資料>
①原告作成の配布資料

②札幌LGBTQ映画祭2022のフライヤー
③さっぽろレインボープライド2022公式ガイドブック





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