事業報告書を通して見る情報公開の影響について
市民活動サポートセンターのあんbeです。
NPO法第28条によりNPO法人は毎事業年度初めの3ヶ月以内に前事業年度の事業報告書を提出するよう提出が義務付けられておりますが、大体の法人さんは3月末を事業年度の末日としており、従って6月末が事業報告書の提出期限となっていました。
提出ラッシュの6月下旬~7月上旬を超え、我々認証担当も少し落ち着きをみせています。
体感ですが、約半数の法人さんは期限を守りご提出いただいており、約3割の法人さんは少し遅れてご提出くださり、残りの2割にこれから督促を~というのが例年の流れです。
提出期限を守ってね!事業報告書が情報公開になるんですよ~というのは口酸っぱくお伝えしていますが、義務的に淡々と提出している法人さんもいらっしゃいますし、こんなもん誰も見とらんやろとおざなりになっている法人さんも正直いらっしゃいます。
今日はそんな情報公開にまつわるエピソードをいくつかお話したいと思います。どれも最近の実話です。
本当に見られていると改めて認識させられたエピソードです。
エピソード① 法人の信用を損なう?!
市民からサポセンにお手紙が届きました。
定款と事業報告書の内容が一致していないが、この法人の活動は大丈夫なのか?
といった内容のものでした。
調べたところ、この法人さんは最近定款を変更した経緯があったのですが、法人のHPに掲載している定款が古いままになっていました。また、説明が難しいのですが、市が提供する様式には備考欄に記載要領が書かれていますが、それをそのまま残していたことが誤解を招く一端になったようでもありました。
書くべきことを書いていない(HPの更新漏れ、又は改訂日の記載がない)
書くべきでないことを書いている(記載の無い事項に関する備考が残っている)
といったことが、誤解を招いた一件でした。
とはいえ、事業報告書の内容は問題なく、むしろとても詳しく書かれてあるお手本のような事業報告でしたので驚きでした。正直、定款と突き合わせて見ている人がいるとは思いもしませんでしたが、HPの更新漏れはともかく、この方の言うことも一理あり、ご説明のお手紙を返信させていただきました。
エピソード② 契約できない?!
不動産会社から問い合わせがありました。
とある法人が部屋を借りに来ているが、事業報告書を見る限りでは収支状況が芳しくないようである。部屋を貸しても大丈夫か?
というもの。
このような場合、サポセンとしては、その法人の活動内容はもちろん、財務状況についても良し悪しを判断する権限がありませんので、「事業報告書のとおりです」としかお答えしようがありません。これがサポセンによく出入りする法人さんであっても、言えてせいぜい「頑張っているみたいなので話は聞いてあげてください」てなものです。
この法人さんの財務状況はともかく、事業報告書の記載内容は当然“事実である”ことが必要条件ですが、それに加えて、“書き方を工夫する”ことや、“書かなくて良いものを敢えて書く”ことで伝わる内容や印象をある程度操作することができます。
読み手に良い印象を与える事業報告書を公開することで契約や交渉事が有利に運ぶかもしれません。逆もまた然りです。
ちなみに、その後、この法人さんが事務所を借りられたのかは分かりません…
エピソード③ 一攫千金!?大口支援者を獲得する
こんな不景気な世の中でも、お金はあるところにはあるんですね。
サポセンにもたま~に銀行マンがいらっしゃって、世の中のためになるお金の使い方を探しに、あるいは節税対策に、大口顧客の寄付先としてNPO法人を検討しています。
先述のように、サポセンにはその法人の良し悪しを判断する権限がありませんので、先方の条件に沿う法人を、個人的な主観を一切排除して、一様に紹介します。
その後、彼らが寄付先を選ぶ際に参考にできる、サポセンが公表している資料はたった2つしかありません。
定款と事業報告書です。
どのような目的でどのような活動を行う法人なのか。そして、どこでどのような人に対してどのような事業を行ったのか、成果を出したのか。
活動の様子が浮かぶような活きた事業報告書を公開している法人に寄付したくなるのは自明ではないでしょうか。
素敵な事業報告書を…
NPO法には、所轄庁の監督よりも市民の監視を重要視するという観点から、詳細な情報公開の規定が設けられています。その一つである事業報告書。
会計に強い人材がいない小規模な法人さんには辛い業務かもしれませんが、事業報告は情報公開のためだけでなく、1年の振り返りに、また法人の活動の説明資料として、幅広く用途があるような気がします。なので楽しみながら作ってもらえれば幸いです。それは無理か(笑)
今年も事業報告書のご提出ありがとうございました。
来年こそコロナが落ち着いて、活動が元の活気を取り戻したぜ!そんな報告書が見られますように。
あんbe