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ピンク映画と日活ロマンポルノ11

*常連組 片岡修二監督(6)

1986年。残暑も残る頃、実質片岡組出演の最後となった作品のクランクイン。タイトルは「獣漢オオカミ」(のちに「ザ・陵辱」)。この頃マイケルジャクソンの「スリラー」が流行っていた。それに触発されてか、ホラーものの異色作である。「低予算でも特撮をやってみる」そんな言葉を聞いたような気もする。

ストーリー:倫子(早乙女)は、双子の妹である。姉が殺された、という知らせを突然受け、「ほらあ町」という町へ旅する。そこで検死の結果、姉は狼か何かに殺された、と知らされた。しかもその町には「人食い狼がいる」という噂がある。その真相を突き止めたいと、警察に掛け合うが、全く取り合わない。検死官の野沢(下元史郎)がいきなりホテルに来て「この町では俺だけが味方だ」と話していく。倫子は一人で山狩りに。山中で突然の雷雨に雨宿りすると、そこには得体の知れない老婆が。その老婆から聞かされた話とは、、、。

これをお読みの皆さんはお気づきでしょう。ピンク映画としてとても成立しそうにないストーリー。どう考えても欲情をそそるシーンは考えられない。そこを無理やり押し込めるのがピンク映画の面白み。スタッフは、映画づくりが好きなのだ。だからこそ、低予算でも情熱を燃やす。「やってやろうじゃないか」と。

この作品でメインとなる「オオカミ」ですが、もちろん「オオカミ」など借りれない。犬、シベリアンハスキーを狼とする。いいんですこれで。だって「獣漢」ですからね。獣と絡まないとならない。指導者に従順でなければ、裸で絡めませんよ。

実は私、犬、苦手なんです。小さい頃に大型犬が近所にいて、それが怖かったのがきっかけですけど、犬って目を合わしてくるでしょ。それが苦手だったんです。ついそらしちゃう。すると犬は吠える。当たり前なことは重々承知ですが、当時はどうしても馴染めなかった。でも、さすがプロの犬。このシベリアンハスキーは、そんな私にもおとなしく指示通りにしてくれた。そして犬とメインに絡むのは橋本杏子氏。老婆の若い頃の回想シーンである。橋本杏子氏は当時アイドル的に人気のあった人で、芝居は勉強していないが、感性豊かで表現力があった。この映画の中で唯一、エロスを担当した。

そして久しぶり倫子のお着替え、山狩りにいくシーン。今回はミリタリー調である。監督はアーミー調のペンダントを買ってくれた。これもお守りだ。バンダナをねじり鉢巻のように巻くが、これが出来ない。不器用な私は、捻り巻くところから稽古。他のシーンを撮っている最中に何とか見れる?ようになり、撮影。この着替えにつけられたBGMはプログレ調であった。

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そして問題の変身シーン。人間から獣に変わる。指が伸びて、手の甲に毛が生える。そして眼が赤くなる。今ならカラーコンタクトがあるが、当時は照明で見せる。いやー正直、ツッコミ所満載です。でも、そこがピンク映画。

この作品で頑張ったのは、老婆役の風原美紀氏。メイクを勉強して、器用にこなしている。あっぱれな役作りであった。

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「獣漢 オオカミ」
  制作 国映株式会社  配給 新東宝  監督/脚本 片岡修二
  撮影/    照明/   編集/酒井正次 録音/銀座サウンド
  出演/下元史郎 早乙女宏美 橋本杏子 松田知美 風原美紀 鈴木幸嗣 ルパン鈴木

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