過ごした時間が服を織る
心からお気に入りの服はありますか?
私の場合は、刺繍のニットです。もう購入して8年目になりましたが、今も活躍してくれています。
一度すそに穴が開いて諦めかけましたが、修理に出して復活。今も私の春の相棒です。
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服がただの"服"ではなくなる瞬間はいつなのでしょうか。
普段私はとくべつ服に関心がある訳ではありません。しかしこのニットへの思い入れは、正直自分でも少し怖いほど強く、手放すことは考えられません。
この服を着て、色々な場所へ行き、色々な人と出会いました。ときに「いつも着ているよね」と揶揄され、恥ずかしくなる経験もしました。
今思い返すとみずみずしく、ほろ苦い経験です。そしてあの時あのタイミングだからこそ、心に刻まれた経験だったとも思います。
歳を重ね、良くも悪くも落ち着いた日々を過ごしている中で、あの時の感性はもう失われてしまったのかもしれないと考えるときがあります。
初夏のまぶしい新緑の時期のように、駆け足で去っていく。
だからせめて、経験を共にしたニットは自分の手の届く場所に置いておきたい…そう考えているのかもしれません。
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そんな私は先日久しぶりに、心ときめく服に出会いました。
リネン100%の今まで買ったことのない生地の服。
リネン独特の香りをかぎながら、この服と8年、10年…と過ごした先に、どんなことを考えているのだろう。
執着はよくないけれど、そこまで思えるものがひとつやふたつあった方が、きっと過ごす日々をかけがえのないものに思える。
いままで考えもつかなかった思いや気づきが、この服と過ごす日々に待っていると信じて。
大切に着ていこうと思います。