いつか咲く花へ
波がよせてまた返すように
返してはまた寄せるように
去りゆく人と
巡り合う人と
そうして織り成されるこの世に
永久に続くものなど何処にもなく
ひとつが終り
ひとつが始まり
そうして繰り返される
今日も明日も
私たちがここからいなくなったら
その後この場所に 何が残るだろう
私たちがこの場所に背を向け
それぞれの道を歩き始めた時
この場所は どんなふうに朽ちてゆくだろう
朽ち果てゆく中でそれでも
ひとつくらい花は 咲くだろうか
できるなら
そんな日が来るなどと一片も思い煩うことなく、そう
見えない明日を手探りで探すより
今この場所にふたり いる そのことを
信じていたいのに
変わりゆくものはどう止めようと変わりゆく
変わらないものがどう手を尽くそうと変わり得ないように
丸い月が照らす道は
細く長く何処までも
明かりの消えた幾つもの屋根を伝い
静まり返った通りを横切り、真っ直ぐに
明日が眠る地平線まで
あぁ今
あの地平線を引き裂いて
覗きこむことができたなら
いやそれでも
拭えない埋まらないそんな
空洞を抱いて
私は歩いてゆくのだろう
昨日から今日へ 今日から明日へ
今を重ね 重ね重ねて
歩いてゆくのだろう ただひたすらに
悲しみも喜びも切なさも憎しみも
あらゆるものたちを縒り合わせた糸でもって
編んでゆくだろう
私というひとつの織物を
いつか咲く 花へ思いを馳せながら
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