そのぬくもりを
ひとりぼっちだったとき、かじかんだわたしの手を温めてくれたのは小さなマグカップだった。
わたしの手のひらより少し小さな、白いマグカップ。
心が冷え切ったときはいつも、ゆらゆらと湯気を立たせながらわたしの手のひらを温めてくれた。
その熱いくらいの温度が、“きみはひとりぼっちじゃないんだよ”と言ってくれているみたいで、無機質な冷たさになるまでずっとずっとカップを握りしめていた。
◇
それから長い月日が経って。
いまわたしの手を温めてくれるのは、あなたの少し大きな手。
じんわりと広がっていく彼の体温がわたしの心と体を伝っていく感覚が心地よくて、わたしもそっと握り返す。
ああ。ひとの体温はやけどをしないくらいこんなにもちょうどよくできてるんだな、と思いながら、今日もお互いの手を温め合っていく。
最後までお読みいただきありがとうございます✽ふと思い出したときにまた立ち寄っていただけるとうれしいです。