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ちいさな詩たち🌜

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詩をつらつらと投稿しています💭※写真は「Pixabay」さんというサイトから使わせていただいています。
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2023年8月の記事一覧

味方なんていない。世界にわたしの居場所なんてない。そう思うときがある。 でもね。たくさんの時間うつむいたあと一歩外に出てすこし歩いてみたら、ほら。どこかのお店の隅っこの隅っこで、あなたのことをずっとずっと待っていてくれてたものがそこにはあるから。 そっと、手を伸ばしてみよう。

ずっと引き出しの奥にしまってあった香水。そっと蓋をあけると彼との思い出が思い浮かんだ。笑顔も、会話も、手触りも、一緒にみた景色も、すべて。わたしから彼へその香りがうつるその瞬間が、なによりも幸せな時間だった。いまはもう存在しない時間。 優しく瓶を撫で、また引き出しの奥にしまった。

いまわたしの瞳にうつっている風景。わたしの耳に入ってくる優しい声に言葉。その人からほのかに香る甘い匂い。そのどれもが遠い遠い未来にはもう感じられなくなってしまっているかもしれない。わたしのそばから離れてしまうかもしれない。そうならないように、いまそばにいてくれることに感謝しよう。

もし暗闇のなかに放り込まれたような感覚になったとしても。 だれかの存在や言葉、温かい眼差しが私をそこから救いあげてくれることがある。暗闇はもしかしたら幻想だったのかもしれない、そう思わせてくれることがある。世界の見方を変えてくれることだって。 いつかわたしもそんな人間になりたい。

とても細い細い、針の先。そこにささやかな気持ちや思いをのせながら、自分だけの大切な宝物を作っていく。その細くてちいさな針先が自分の手や目にしか触れていないとしても、その価値や、わたしを助けてくれた事実はなにも変わらない。だから今日もわたしは、ちいさな針にたくさんの力を込めていく。

大切な日記帳。新しいページをそっとひらいて、真っ白な海の上に文字をつづっていく。その日一日のことを思い浮かべながら、気持ちを文字にのせていく。それはまるで、現在と未来の自分、そしてその日関わってくれたひとやものに宛てたラブレターのように。 毎日すこしずつ、思いが積み上がっていく。

たとえひとりぼっちだと感じたとしても。たとえ自分のことが好きになれなくても。そんなわたしのことを懸命に守ってくれているものはたくさんある。 たとえば日々を支えてくれているわたしの身体、自分だけのちいさな宝物、そしてただ静かに流れゆく時間。 そんなかけがえのないものに守られている。

時計の針が刻一刻と進んでいても、おなじように進む必要はなくて。それに反抗するように後ろに数歩引いたっていい。その場に座りこんだっていい。 気がついたら眠っていて、目が覚めたら真夜中になっていて、時計の針が何周も何周もしていたって、それでもいい。 時間は時として優しいものだから。

わたしなりの宝物を作っている時間。 そのときの時間の流れはとても穏やかで、優しくて。触れているものも、時間も、空間も、空気も、すべてがやわらかくて。その時間が今と未来のわたしをぎゅっと抱きしめ、慰めてくれる。 だから今日もわたしは、わたしのために大切な宝物を作っていく。