短編小説『チョコレートと赤い家』
今日は遠回りして帰ろう。高校生のとき、そんな気分になる日がときどきあった。理由は特にないけれど、ただなんとなく、時間を無駄にしたくなることがたまにあったのだ。
だからその日も授業を終え学校を出ると、いつもは右へ曲がる道に背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
途中足元に転がっているちいさな石を蹴りながら、「小学生のときはよく友だちとこうして遊んでたな」と思い出に浸ることも楽しみのひとつだった。一種の現実逃避なのかもしれないけれど、構わずにゆっくりと道なりを進んでいく。
それか