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さざ波ヴェール

太陽の王子様は海がめに言いました

「三日後の流星群が降る夜に、必ず迎えに来るよ
 その時一緒にこの海を越えて、新しい街に行こうね」

海亀は言葉を知りませんでしたので
大きく一回パチリと瞬きをしてみせました


「僕は太陽だから、夜はこの姿ではいられないのだけれど
 君と一緒なら、きっと新しい姿になれるね」

海亀はどきり、どきりと
感じたことのないトキメキと
不安が入り混じるような不思議な感情に戸惑いました

だけれど
王子様の笑顔がピカピカと眩しかったので
もう一度大きくパチリと瞬きをしました


海の波に身体をまかせながら
海亀は思います

この大きなヒレが手と足に変わったなら
硬い甲羅が美しいドレスに変わったなら
ゴツゴツした皮膚がしなやかな長い髪に変わったなら

太陽の王子様の夜の姿は知らないけれど
ふたりで見る流星群はきっと綺麗なのだろうと


そんな海亀を祝福するように
さざなみは波のヴェールを海亀に被せてあげました

ザザーンと波が引くと
海亀の身体は見たこともない「新しい姿」になっておりました


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こやまさおり

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