【連載小説】「すまいる屋」①
「今回のご応募に関しては厳正なる選考の結果・・」
最後まで読まずに私は、その封筒を大きく4つに破いた。雑巾絞りのようにしてゴミ箱に投げいれたが、あわてて履歴書の写真だけ剥がす。
みみっちいが、仕方ない。証明写真だってバカにならないんだから。
「せっかく奮発して、美白モードにしたのになあ」
私はちょっと折り目がついてしまった写真を眺める。真っ黒で硬い髪の一本結び、メイク薄め、ぎこちない笑顔。
「こんなん、どこにでもいる顔やもんなあ」
私はベッドにひっくり返る。
「正社員は厳しいなあ・・でもバイトで変に人間関係出来たら辞めにくいしねえ」
ついつい、ジャンクなお菓子に手が出る。うん、わかってる。こういうときにニキビ増えちゃうんだよね。
LINEの通知音が鳴った。
「おつかれー」姉のシノからだ。
「あれから次の仕事決まったー?」
この人の予知能力はすごいのだ。
だって落ちたその日に連絡がくるのだから。
「まだです」
生理前というのもあり、イライラしてしまう。普通こういうときって、家族はそっとしとくもんじゃないの?
「あんたさー、一回話し方教室とか通ったら?」
姉の言葉がイチイチ癪にさわる。
「あたしの友達でさ、すまいる屋っていうのがいるのよ。なんだっけ、なんとかコンサルタントとかいうやつ。けっこう繁盛してるみたいよ」
ご丁寧に、リンク先まで張り付けてある。
なんとかコンサルタントっていうやつほど、怪しい職業はない。だいたい姉の友人はみんな変わってるんだから。
マヤ歴、アートセラピー、箱庭療法、アニマルセラピー、いろんな種類のセラピストたちが姉の部屋によく遊びに来ていた。
なんというか、そういう人たちと繋がるのがうまいのだ、この姉は。
「どうせお試しは安くても月に何万もするんでしょ。無職なんだからそんなことにお金使えないよ」
私はNO.というスタンプを二つ連続で送った。
「あらそう、残念ねえ。あたしの友達、けっこう口コミいいのに。まあ、あんたがその気じゃないならいいんだけどさ。ま、気が向いたらここに連絡してみたら」
ヒュン、と通知音がなり、個人の連絡先が送られてくる。
「すまいる屋 ピリカ」
と書かれたLINEの連絡先。そして、なんか本から星がキラキラ出てきたアイコン。
「・・外国人?この人」
姉の友人なら頷ける。
まあ、一応Google先生で検索だけしてみるか。
「すまいる屋へようこそ。このお店は、自分に自信を失くした方を、勇気づけ結果に近づけるお手伝いをします」
でたよ、「結果に近づける」!
結果を出す、とか書かないとこがまた責任のがれっぽいよね。
「あーあ、時間の無駄」
私は一気に興味を失くし、LINEを閉じ・・れない。
何回タップしても反応無し。
もう、なにも無職になってからスマホまで壊れなくてもいいじゃないのよ!
スマホを強制終了して、ベッドのうえにスマホを放り投げる。機種変しなきゃね。
まあ、明日また面接だし、早く寝よう。
疲れていたのか、私は電気を消したらすぐに眠りに落ちた。
<続く>
第二回はこちらから
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この小説は、音声配信「すまいるスパイス」の仲間たちが出演する小説です。
ショートショートしか書けないピリカが、連載に初チャレンジします!
さわきゆり姉さんの連載に(気持ちだけ)伴走します!
さてさて、どうなることやら!