よう、そこの若いの
先日、32歳の若き同僚と同行した。
基本うちの会社は、ペアで回ることを推奨していない。ひとりのお客様をふたりで、となると同じ時間を使って売上は半分ずつであるから、非効率だという考え方だ。
しかし、現場にでてみるとお客様にとってはわりと安心感のあるものだと思う。
機動力がある若者は、休日でも夜間でも電話しやすい。話していて元気をもらえるから好まれるだろう。うちの会社の主力は、この年齢の男性たちだ。
なんとなく、社内では彼らの若さと勢いの脇で、私たち中堅はすこし中心から外れたような感覚を味わうのも少なくない。
それはそれでしかたないのだが、正直面白くない時もある。
逆に私のような中年女性の武器は、人生経験による包容力、共感力である。
「なんかよく分からんけど、この人なら安心」という数値化できない能力だ。
違うタイプの担当がふたりつくと用途に分けて相談できるので、お客様にとってはいいのではないだろうかと、私はずっと思っているのだが、会社の考えとはなかなか折り合わない。
話がずれるが、すまスパメンバーMarmaladeさんがもし営業職なら、一年に一度、とんでもない額の売上をあげるタイプだと私は思う。
「電車でとなりの席にいた人がたまたま大会社の会長さんでね~、なんか話が決まっちゃったの」みたいな。
(Marmaladeさん、これ全力で褒めてますからね!!)
話を戻す。
その日若い同僚と向かったのは、女性のお客様。私より10くらい上のはつらつとした明るい方だ。
運用商品を提案したのだが、正直迷っておられた。今さらやっても老後に間に合わないんじゃない?とか、
もっと若いときにやればよかったわ、などマイナスの感情が前に出て、同僚の商品説明がすんなり入っていかないようだった。
横を見ると、いままで流暢に話していた若き彼も少々焦れたような顔をしている。
ふむ。
「○○さん、これからの人生、今日がいちばん若い日なんです。いくらから始めるかより、いつから始めるか、だと思いますよ」
私はお客さまに話しかけた。
お客さまはきょとんとしていたが、
「今日がいちばん若い日」
と繰り返して、
「決めました。今日手続きしてください」とおっしゃった。とてもいい表情をされていた。
「ピリカさん、名言でましたね。さすがでした。あれは僕みたいなペーペーには言えません」
帰りの車で、同僚くんが感服したように言ってくれた。
この若い同僚は、別のお客さまに響く言葉をもっているはずだ。
今日は私と、お客さまの相性が良かっただけだろう。
いやいや、たまたまですよ。
○○くんの説明が良かったからですよ。
なんて口では言ったが、
彼の横顔を見ながら私は心の中で思ったのだ。
「ふふん、おばちゃん営業なめんなよ」
それくらい心で思ったっていいよね。
だっておばちゃんだもん。