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ピリカ、補整下着を試着する

その日私は、困ったシチュエーションのなかにいた。

前には、メジャーを持った女性。素材にナニか素晴らしい成分が練り込んであるとか、色が今年の流行色だとか、リンパがどうとかを矢継ぎ早に説明している。

「試着だけでいいから」

知人の誘いを断りきれなかったのがまずい。

試着だけですまないであろうことはわかっていた。

いたのだが。

「はい、鏡見てください」

なるほど。たしかに、おっぱいの位置はこぶしひとつくらい上の位置にある。

これだけで、見た目はかなり違う。

おしりもちょっとあがり、なんとなくしゅっとして見える。

ビスチェタイプのブラは、おなかもひっこむから一挙両得。

「これとこれで・・26万ですね」

メジャーの女性は笑顔で言いはなった。

「26万!」

「はい、26万。でもこれで人生変わりますよ。そしたら安いものですよ」

たしかに、スタイルよく見えると印象がよい。仕事もイメージUPでたくさんいただけるかもしれない。

だけど、ヘロヘロになって帰ってきて、下着を手洗いする自分をどうも想像できない。

洗いがえを・・と思うと26万×2倍だ。

26万プラスやさしく手洗いのプランは、私にはない。

私は電話がかかったふりをして、申し訳なかったが急いでその場を離れた。

ごめん、おっぱいを下げながら私は生きていくよ。

価値観はそれぞれだ。

私の美意識は26万以下だった、てことだろう。

それだけは間違いない事実であった。



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